24日、法務省は国会に対し、名古屋入管の施設で収容中に亡くなり、いまだに死因が特定されないスリランカ人女性、ウィシュマさんの監視ビデオ映像を開示しました。この映像は、亡くなる直前の2週間の様子を部屋に据え付けたカメラで撮影したものです。
彼女が亡くなったのは、先の通常国会で政府が「入管難民法改正案」を提出した後の3月6日です。不祥事をうやむやにしたまま法案を通して入管の権限や裁量を広げれば、また悲劇が起きると野党が主張し、政府は法案成立を断念。しかし、真相解明に不可欠なビデオ映像の開示には応じないため、法務委員会の野党筆頭理事である私が政府与党と半年以上交渉を続け、ご遺族への開示のタイミングに合わせてようやく実現の運びとなりました。
今回、私を含む与野党の法務委員会のメンバーに開示されたのは、ご遺族の求めがあった部分と、私から開示を求めた部分とを足し合わせた6時間26分にわたる映像です。映像を見る上で私が注目したのは、①ウィシュマさんを死に至らしめた入管職員の対応と、②この問題に関して8月に法務省が公表した最終報告書との整合性、の二つです。
①について、ベッドで寝たきりとなって自力で起き上がることもできないウィシュマさんに対し、入管職員らは表面上は親しげに話しかけ、寄り添う姿勢を見せます。しかし、ウィシュマさんが「トイレに行けない」と言っても無理やり連れて行こうとし、「点滴お願い」と言っても無視し、「死にそうだ」と言っても放置し、「食べられない」と言っているのに、無理やり飲食物を口の中に流し込むなど、やっていることは「拷問」に等しいものでした。
亡くなる10日以上前の2月24日には、深夜に断末魔のような叫び声を上げて苦しがっているウィシュマさんに医療を受けさせるでもなく、ベッドに座らせて「4時間ぐらい我慢して」と突き放したのには愕然としました。職員らは人間的に問題があるようには見えませんでした。入管の常識を守って行動すると、人道的には許されない「悪意なき拷問」となるところに問題の本質があり、入管組織を抜本的に変えなくてはならないと強く感じました。
②について、最終報告書上、上記の2月24日深夜のやり取りは、「日中以外では、午前4時台にも体調不良を訴えた。」という括弧書きの一文しかありません。他にもビデオ映像の深刻さをごまかすため、簡略にしたり穏便にしたりした表現がいくつもありました。これは、入管への責任追及を免れるための「悪意ある隠蔽」だと言わざるを得ません。
同じ日に、岸田政権は中国の人権侵害等を理由に政府高官の五輪ボイコットを決めました。そうであるならば、我が国の入管による人権侵害の問題には一層真剣に取り組むべきです。