議員の交通費もクーポンで払え – 毒蝮三太夫

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共同通信社

今年の世相を現す漢字は「金」――。五輪の金もそうだろうけど、金という字で今一番思うのは10万円の給付「金」だよな。政府の方針は二転三転。当初打ち出した「現金5万円+クーポン5万円」が、クーポンを配布する際の事務経費が967億円もかかるって話を突かれて、次から次に軌道修正してる。

これが岸田総理の「人の話を聞く」スタンスなのかもしれないけど、人の話を聞く前に、最初に打ち出した給付の仕組みが愚策だったってことだな・・・。それによって多くの自治体が振り回されて、かけなくていい手間が増えてしまった。「まいったね、政府から手間を給付されたよ」ってな話だ(笑)。

国会議員の文書交通費もクーポン給付にすればいい

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ちょっと思い出してほしいんだけど、去年アベノマスクが配布された時、賛否が渦巻いたよね。賛否というか否否が渦巻いたんだっけ?(苦笑)。あの時は税金をいくら使ったんだ?

編集部)アベノマスクは配布時に約460億円かかると言われていましたが、最終的には約260億円という話になっています。あと、調達したマスクの3割が配布されず、その保管料が半年間(昨年8月~今年3月)で約6億円かかっていると最近ニュースになりまして、批判がぶり返していました。

ということは、アベノマスクに費やされた税金は約270億円って話だな。で、今回の10万円給付でやり玉にあがったクーポンの事務経費が967億円。アベノマスクの「3.5倍」だぞ。おいおい、なんだかアベノマスクが可愛く見えてくるな(苦笑)。

今回のクーポン券配布も最終的にいくらかかるのかをきちんと知りたいね。そうそう、このクーポン券だけどね、色々あったってことを忘れないよう、製造責任者の顔をお札の肖像画みたいに印刷しといたらどうかな。クーポンの話を取りまとめたのは自公の両幹事長だろ? 自民が茂木敏充さんで、公明が石井啓一さんか。このふたりと、あと自公のトップである岸田さんと山口さんも入れて、「このクーポンは私たちがつくりました」ってね(苦笑)。

そうそう、国会議員の文書交通費が実働1日でも月100万円支払われることが問題になって、改善しようじゃないかって話になってるよね。ええと、今後は日割りで渡すことにしようって改案は与野党で一致してるけど、使い道の領収証を出すか出さないかでモメてるんだよな。

だったらさ、今後は文書交通費をクーポンで渡そうよ。そうすれば大体の使い道もわかるし、あやしい使われ方がグッと減ると思うよ。文書交通費はクーポンでいいよ(笑)。

国会議員が率先してクーポンを使う・・・。これ、ホンネを訊いたら「クーポンじゃなく、全額現金がいいんだけど」って絶対言いそうだな(笑)。

現金以外の給付は必ず不満が出る

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いやあ、国が国民に何かを配るってムズカシイね。あのね、伊豆湯ヶ島に船原ホテルって有名なホテルがあって、80年代に火災を起こして廃業しちゃったんだけど、そこの名物が「純金風呂」だった。金の風呂に入れるって話題になって人気だった。そこでみんな考えることは一緒なのかな、風呂に入って少しでも金が取れないかって爪で引っ搔いたりしたのか、その湯舟、ずいぶんと傷だらけだったって(苦笑)。

給付金の代わりに自治体に「純金風呂」配って、みんな代わる代わるそこに入って引っ搔いてってもらうってのはどう? 入浴時間はひとり1分。持ち込みはスプーン1本までOKとかね。

まあでも結局、みんなに何か配るってことになると、現金以外は必ず不満が出るよな。やっぱり現金が一番いいんだよ。現金は使い道が自由だからね。

この自由がカタチで見えたいい例が80年代の終わりに竹下登総理がやった「ふるさと創生1億円」事業だよな。国が市町村に対し1億円ずつ配って、地域振興のために自由に使えって。あれはバブルの頃だったし浮かれた自治体も多かった。その結果、1億円の使い道ってホントに玉石混交だった。

日本一大きい〇〇とか、日本一長い〇〇とか、オブジェとか銅像とか、出来上がった時の落成イベントが一番盛り上がって、あとは段々とただのお荷物になっていく。しばらくすると「どうしてこんなもの、つくっちゃったんだろ・・・」って、見るたびに溜息が出るようなムダの象徴になったりしてね。あと、後先考えずにハコモノを建てて、年々その維持費ばっかり食うようになって、結局赤字を生み出すものをつくったりね。

その一方で、地域に本当に必要だった施設をつくったり、子どもに投資したり、文化事業を起こして定着させたり、結局、金の使い道って個性でバラバラだから、十人十色になるんだよ。

若い世代を支援?給付金の目的は

話戻って今回の給付金。18歳以下が対象だ。いやいや高齢者だって生活が大変なんだ、こっちにも給付金ほしいよっていう年寄りがいたな・・・、まあ今回は対象を絞っての政策だからね。何しろ子どもは国の宝だ。若い世代を国が支援していくのは重要課題だよ。

でもね、政府が、「貯金に回すな、入学シーズンに向けて何か買え、消費に回せ、各地方の経済効果につなげろ」、なんてことをチラつかせるのは余計なお世話だよな。子どもや若者を支援することと、地方の経済を支援することを、無理くり合わせようとして、ねじれちゃってんだ。

あと、今回の10万円給付についてあらためて思うのは、長岡藩の米百俵だな。戊辰戦争に敗れて焦土になった(新潟の)長岡藩に、支藩である三根山藩からお見舞いで送られてきたのが米百俵。戦に敗れてその日の食いぶちにも困る藩士たちが皆「その米を分けろ!」となったが、長岡藩の上に立つ小林虎三郎は「どんな苦境にあっても教育をおろそかに出来ない」と、この米を藩士に分配せず、学校を開く資金に充てた。のちのち長い目で見るとそれが長岡という地域にとって大きな益をもたらすことになった・・・。

だからね、個人個人への10万円給付には意義もあるけど、それはあくまで一時的な効果って感じだよな。

もしものおとぎ話で聞いたことあるけど、地球の人口って今は78億人? その地球上の人間全員がいっせいに飛び上がって地面に降りると、地球が割れるエネルギーになるって。まあ、真偽のほどは不明だけど、とにかく大きな力になるらしい。

小分けのものをひとつに集めると、とてつもなく大きな力になる。そういう大きな力を上手く使う国であってほしいな。それが米百俵の精神だよ。

小中学校の義務教育に加えて、今は高校の無償化もかなり進んでるんだろ。これをさらに進めて大学や専門学校など、若い世代が学ぶ機会に対して、国が大胆に支えて、金がかからないようにしてほしいね。

優秀な人材を育てることは国家百年の計

BLOGOS編集部

大学行くのに、経済力のない若者が奨学金を借りて借金つくって、バイトしながら大学通って、社会人になったら奨学金の返済に追われて、働き盛りの20代30代でろくろく貯金がたまらない・・・、そういう人って多いんだって? なんだか変な話だよな。大学に行くのは社会でより多く稼ぐためなのに、大学に行ったら借金背負うって・・・。

若者が社会に出て、労働に見合った賃金をもらって、経済的な余裕が出来て、旅行したり、車買ったり、ファッションにお金かけたり、結婚して家を持って、子どもを産んで育てて・・・、そういう日本にするためには若い世代の経済環境を少しでも良くしないといけないわけだ。

子どもが余裕ある環境で教育を受けて、優秀な人材になっていくことは、まさに国家百年の計だ。

でも、今の日本はそれが充分とは言えない。

今回の10万円給付問題で生じた二転三転のムダが起きないような、そんな日本にするためには、優秀な人材がおおいに育つ教育環境があって、そこから優秀な政治家が出てくるのを待つしかないのかな・・・。 

いやいや、そんな悠長なことは言ってられないぞ。世界から「日本はなんていう愚策をやってるんだろうね」って鼻で笑われるのではなく、「日本のあの政策は見事だよ、見習いたいね」って羨まれるような、そういう政治を見たい。岸田さん、頼むよホント。

<追伸>

あのね、クリスマスに向けて絵本を出したんだ。タイトルが「こなくてよかったサンタクロース」(ニコモ刊)。これ、俺が考えた物語なの。毎年クリスマスになるとラジオでしゃべってた自作の童話なんだ。

母と子の話でね、クリスマスプレゼントも人それぞれに色んな考え方があるよって。それを俺のファンの阿久津くんってお節介なヤツがさ(笑)、絵本作家の塚本やすしさんに話をつなげてくれて、長いことかけて出版に相成ったと、こういうわけだ。出来上がりを見たら実にステキな挿画でね、ウルッとしちゃったよ。子どもにも大人にもどっちにも沁みる話だから、良かったら読んでみてくださいな。

こなくてよかったサンタクロース 単行本 – 2021/11/1

(取材構成:松田健次)

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