石破氏 予算委の野党は迫力ない – 石破茂

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 石破 茂 です。

 衆議院予算委員会は淡々と進み、補正予算案は大きな波乱も無く可決、その後の本会議でも可決され、本日の参議院本会議で成立の見込みです。

 野党時代を含めて長く予算委員会に籍を置いていますが、政府側が安全運転に徹するのは当然のこととして、今国会では野党の質問が以前にもまして迫力に欠けた聞き応えのないものとなってしまい、総選挙に敗北して野党が受けたダメージの大きさを見る思いでした。

 10万円給付の具体策についての議論も重要なこととは思いますが、折角のテレビ中継入りの予算委員会なのですから、外交や安全保障、「新しい資本主義」などについての議論がもっとあってもよかったと残念に思いました。

 米ソ(東西)冷戦と、緊迫が伝えられる今の米中関係との本質的な差異は何処にあるのか。米ソ間には相互確証破壊(MAD)が成立し、強大なソ連(およびワルシャワ条約機構)にNATOが対峙していたからこそ「恐怖の均衡による冷戦」が続いたわけですが、今の米中間にはそのどちらもありません。オバマ大統領の「関与政策」を副大統領として間近に見ていたバイデン大統領は、この転換を明言していますが、どのように転換しようとしているのかは未だ明らかではありません。中国の軍事力拡大を支えているのは当然ながらその経済力ですが、中国も今後、順風満帆という状況ではありません。日本よりも急激な人口減少、超高齢化、格差の拡大、医療・年金・介護など社会福祉政策の困難性に、どのように対応し、持続可能性を確保しようとするのでしょうか。

 我々として注意すべき兆候はいくつか考えられます。今挙げたような困難な未来を予測し、中国共産党指導部が「今が最盛期」との判断をした場合。国民世論が高揚しすぎ、党中央がこれをコントロールできなくなった場合。中国で10月10日の国慶節に合わせる形で公開された、朝鮮戦争での人民解放軍の勝利を題材とした「長津湖」が空前の大ヒットを記録しているとのことで、もちろんこの映画の製作に党中央の意思が働いていないはずはないのですが、国威発揚は常に危うさをはらむものです。

 「脅威」とは「能力と意図の積」。安全保障を論じるときは、この両者について冷静かつ詳細な分析を行うことが大前提です。現実を見ないままの脳内平和主義も、勇ましい精神論も、国家を破滅に導きかねない危険な方向です。

 新しい資本主義の議論も「分配と成長の好循環」というワーディングが妥当すぎるせいか、あまり深まることがありませんでしたが、「公益資本主義」的な議論を展開した吉良州司議員の質問は、小会派であるため短時間だったものの、本質を突いた相当に聞き応えのあるものでした。来年の通常国会では是非このような議論が盛り上がることを期待したいものです。私自身、当選期数がかなり上となったためか、希望しても質問の機会がなかなか与えられないのは残念なことですが、自分ならどう質問するか、そしてどう答えるかを考えるのは、随分と勉強や鍛錬になると思っています。

 森友事件の民事裁判は、国が全面的に非を認めて損害賠償の支払いを「認諾」したことにより、突然の決着を見ることになりました。

 ご遺族はお金が欲しくて裁判を起こしたのではなく、だれが、いかなる理由で、どのような指示を出してこのような改竄行為が行われるに至ったのかを知りたかったのですが、裁判の過程でこれが明らかになることはありませんでした。今後、本事件に関する他の裁判でこの点が解明されることを望みますが、国がその非を認め、国民の税金から損害賠償金が支払われる以上、今度は行政の内部においてご遺族と納税者が得心する説明をする努力が行われなければなりません。

 いつまでこの件に拘っているのか、というような意見があるのは驚きです。この件は、国家と国家公務員との関係を根本的に問うているはずです。そこには「国家公務員の雇用者は国民だ、その国民に対して常に誠実であらねばならない」という信条を何よりも大切にし、これを裏切ることを断固として拒否した故・赤木俊夫氏の思いがあります。これを踏みにじるようなこととなれば、公務員制度自体がやがて決定的な崩壊を見ることとなり、国家の存亡に繋がるといっても過言ではありません。だからこそ、司法による決着とは別に、政治的・道義的な解決も求められるのです。

 先日、堀潤氏、倉持麟太郎氏のYouTube番組に出演し、「日本の若者は保守化したのか」というテーマについて随分と考えさせられました。若者に限らず、全体的な国民世論の保守化、権威依存的な志向などには一定の相関関係があるのかもしれません。

 この世界ランキング調査についてはよく吟味と考察が必要ですが、「暮らしに余裕がある人は経済的に苦しい友人を助けるべきか」という問いに対して「そう思う」と回答した日本人は調査対象30か国中で最下位、「そうは思わない」と回答したのは第1位、という結果には強い衝撃を受けました。その他の質問項目でも一見、日本人の「他人に対する無関心や冷淡さ」が際立っており、意外に思うべきなのか、納得すべきなのか、きちんと原典に当たってみる必要性を感じています。この項は引き続き機会を見て書かせて頂きたいと思います。

 週末は寒波が襲来し、地元・鳥取でも風雪が予想されています。自民党県連の選挙対策委員会や各種会合が予定されており、飛行機欠航の事態も予想されますため、用心のため本日最終の新幹線で岡山まで行き、明日始発の在来線特急で鳥取まで帰ります。

 本年もあと僅か、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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