テレワークの実施に伴い、テキストベースで仕事を進めている人も少なくないでしょう。
そんなサイボウズですが、中にはテキストでのコミュニケーションに悩んだり、負担を感じたりしている人もいます。
そこで今回は、「テキストコミュニケーション」に悩みを抱えるサイボウズ社員3名で、普段の困り事や苦手な理由、対処法などを考えました。
議論をするうちに見えてきたのは、「苦手」をひとつの個性として捉え、働きやすい環境をチームで模索することの大切さでした。
鈴木 瑛里加(すずき・えりか)。2021年の新卒としてサイボウズに入社。ビジネスマーケティング本部に所属。入社後いきなりのリモートワークに戸惑うこともあった
けっこう思い詰めてるね……! どうして、そう考えるようになったの?
大畑 拓己(おおはた・たくみ)。2021年の新卒としてサイボウズに入社。開発本部に所属し、Garoon開発チームの仕事を行なっている。入社してすぐにサイボウズ社員の発信量の多さに驚いた
林田 恵美(はやしだ・めぐみ)。2018年、大手食品企業からサイボウズに転職し、関西営業を経て事業戦略室に所属。現在は大阪を拠点にしながらも、東京オフィスをはじめ各地各部署のメンバーとの仕事を行なっている。テキストコミュニケーションは3年経ってもまだ慣れない
同じ悩みを共有できる先輩がいるのは、新人としては本当にありがたいです。
林田
わたしは、テキストの裏にある相手の心情を深読みし過ぎる性格で。いろいろ気にするうちに、ちょっとしたメッセージを作成するのにも時間がかかってしまうんですよ。
鈴木
わたしも深読みして、ひどいときは数日悩むこともあります……。
大畑
進捗報告や確認・承認の依頼みたいに、ルーティン的な連絡はそこまで悩むことはないんですけどね。純粋な業務連絡だから、心理的負荷が小さいというか。
鈴木
それこそ、テキストだとコミュニケーションにタイムラグが発生するので、相手の返信がなかなか来ないと、「この言い方でよかったかな?」「考えが浅かったかな?」とか気にしてしまって。
大畑
うん、うん。すごくわかります。
サイボウズのオープン過ぎる社風がプレッシャーに
林田
前職では、メールでやりとりしていたので、そこまでスピード感を求められることはなかったんです。でも、kintoneを使っているサイボウズでは、スレッド上で分単位の議論が進むことがよくある。
そこで、自分みたいにじっくり考えがちな人間だと、どうしても発言が遅れてしまうんです。そうして発言量が減っていくと、劣等感を覚えることも……。
鈴木
劣等感、すごくわかります! サイボウズならではのオープンな風土がプレッシャーになるときがあるんですよね。
林田
だから、「自分のささいな発言も、誰かに見られているんじゃないか」と気構えてしまう。
大畑
実際、僕もあまり馴染みのないスレッドをのぞきに行くことがあるんですよ。たまに、意見の衝突が起きている場面を見ることもあります。
当人たちはフランクに議論しているだけで、別に仲が悪いわけじゃないと思うんです。でも、自分が一度も話したことのない方同士の意見の衝突を見て、ちょっと萎縮してしまったこともあります。
林田
もちろん、そんなふうに情報がオープンになっていることには大きなメリットもあって。たとえば、 いろんなメンバーから意見をもらえるから、アイディアが独りよがりになりづらいこと。
鈴木
そうなんですよね。わたしのチームメンバーも企画を立てる際に、スレッドに寄せられた意見から着想を得ることが多々あります。
kintone上で独り言のようにつぶやいたコメントに、さまざまなメンバーから意見が寄せられる様子。サイボウズでは、こうしたやりとりが活発に行われている
林田
特にわたしは拠点を大阪にしながら、全社プロジェクトのような業務をしているので、実務上はその恩恵を大きく受けています。
経営層の考えや会社の方向性までオープンになっているのは、他社にはなかなかないよさだなと思います。
大畑
そうしたオープンなカルチャーのいい面も悪い面もわかるからこそ、悩ましいところですよね。
テキストだけでは、相手の人柄や雰囲気を掴めない
鈴木
ネット上では「リモートワーク時のテキストコミュニケーション術」に関する情報はたくさんあって。わたしも以前、そういう記事を見たことがあるんです。
林田
そうなんだ!何か参考になる解決策はあったのかな?
鈴木
「そんなんで解決したら苦労しないよ!」って思っちゃいました(笑)。
大畑
僕が思うのは、相手をよく知っているかどうかがカギなのかな、と。親しい方であれば、多少味気ないテキストでも「問題なく受け取ってくれるだろう」と想像がつくから、意外と大丈夫だと思えることも多いです。
その点、僕と鈴木さんは新卒なので、そもそも知っているメンバーのほうが少ない。だから、緊張しやすいのかもしれない、と思いました。
鈴木
なるほど、それはあるかもしれない……!
大畑
先輩方としては、「手が空いている人がすぐ対応できるように」と配慮してくれたのだと思います。
ただ、僕個人としては、一気にチーム全員の時間を奪ってしまう感覚があって、ちょっと気が引けたんです。実際に、複数人の先輩が同時に答えてもらったこともありましたし。
鈴木
そもそもリアル・リモートに関わらず、仕事の進め方が理解できていないと、「こんなこと聞いていいのかな?」という葛藤があるよね。
大畑
もちろん、実際に質問してみると、ものすごく優しく教えてくださります。ただ、やっぱりテキストだけでやりとりしていると、心理的な負荷を感じることが多いです。
幸いにも、研修後に配属されたチームでは、主に業務連絡はテキスト、相談や決定事項が伴う議題はZoomと、使い分けされています。そのためいまは状況がいい方向に変わって、心理的に安全なテキストのやりとりができています。
林田
たしかに、わたしも新人メンバーに対して、個別にメッセージを送ることがあります。
対面なら表情などで「話の内容が伝わっている」と察せるんですけど、リモートだとそのあたりの微妙な雰囲気が掴みづらいので。
大畑
一度でも話したことがあると、そこがつかめてくるので、同じ文章でも印象が変わってくるのですが。
「弱さ」をひっくるめて、チームでよりよい働き方を模索していく
鈴木
たとえば、最初だけでもZoomや対面で話す機会を設けたり、テキストで伝えにくいことはZoomに切り分けたり。そうした工夫が、安心して話せる場所をつくり出しているのかなと。
大畑
うんうん。
鈴木
「この人はテキストにやりづらさを感じているんだ」と知ってもらうだけでも、いい方向に向かうかもしれません。
林田
わたしを含めて発信がしんどい人って「発信がしんどいです!」となかなか言わないんです(笑)。だから、うっかりすると気づくのが遅れてしまう。
その意味では、「実はみんな悩んでいるのかも?」くらいの慎重さで対応するほうが、結果的に配慮が行き届くのかも。
大畑
もちろん、いつまでも手厚くケアを求めて、先輩に甘えたままではいけないと思っています。ただ、少なくとも入社したての頃だけは、顔を合わせて話せる場があったほうがいいな、と。
鈴木
それから、ある意味でサイボウズのオープンなカルチャーと矛盾するかもしれませんが、業務以外では“クローズド”な場があると安心できますね。
大畑
もちろん、社内グループだからオープンなんですが、内容が雑談ベースなため、ほかのメンバーから見られる機会がめったにないんです。
そんなふうに「開かれつつも、包まれている場」だと、いつもより安心して話せている気はしますね。
鈴木
「アイデアを出すのは得意だけど、まとめるのは苦手」「資料づくりは好きだけど、プレゼンは負担に感じる」など、人それぞれ個性があるよね、と。
もちろん、仕事なので最低限のスキルや努力は欠かせません。ただ、「チーム」で取り組んでいるのだから、そうした「弱さ」をひっくるめて補い合っていくことも大事なんじゃないか、と。
だから、テキストコミュニケーションに限らず、多様なメンバーが働きやすい環境づくりのために、これからもチーム全体で考えていきたいなと思います。
企画:鈴木瑛里加(サイボウズ)執筆:夏野かおる 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト)