Amazonレジなし店舗は防犯に穴? – 後藤文俊

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■アマゾンのレジなしシステム「ジャスト・ウォークアウト(Just Walk Out)」はレジをなくすことでコスト削減につながる。

キャッシャーフリーもしくはキャッシャーレスとも呼ばれるアマゾンのジャスト・ウォークアウトは、人工知能(AI)やコンピューターヴィジョンを駆使することで、レジでの精算なしで商品を買うことができる革新的な決済システム。

お客は商品を手にとって出ていくだけで、代金は自動的に口座に請求される仕組みだ。レジ不要でレジ待ちの時間がなくなり、ストレスフリーで買い物ができる。

昨今では新型コロナウイルス感染症の拡大でコンタクトレスへのニーズが高まっており、レジなしのジャスト・ウォークアウトを導入することでお客とスタッフ、双方の安全性確保が可能となる。

ジュスト・ウォークアウトでは入店と同時に天井に設置されたカメラやセンサーによって利用者の行動が追跡される。

棚にも重量センサーが装備され、商品を手に取る行動もトラッキングするようにもなっている。

店から持ち出した商品は利用者のアマゾン・アカウントにあるクレジットカードに自動的に課金される。

カメラやセンサーで得たデータから商品の動きを把握し、人工知能(AI)のディープラーニングを駆使して正確に決済するのだ。つまり万引きのように買い物ができるのだ。

ジャスト・ウォークアウトは本当に万引きに対抗した防犯になるのだろうか?

 筆者は先週と今週、ジャスト・ウォークアウトを導入したアマゾンの食品スーパー「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」で買い物を行った。

実験の目的はコンピュータービジョンやAIが本当に防犯に役立っているのかということを検証するためだ。

結果から先にいえば、アマゾン・フレッシュのハイブリッド店では万引きせずとも、持って出た商品をアカウントにチャージされることはなかった。

ここで強調しておくが、入店時のチェックインも退店時のチェックアウトも行い、普通に買い物を行っただけだ。

そもそもチェックインとチェックアウトのゲートには買い物客にジャスト・ウォークアウトの説明をしたりアシストするために常にスタッフがいる。

ゲートを飛び越えるなどできないのだ。また他のお店でやっても不審だと思われるような、怪しい行動などは店内で何一つしていない。

もう一度、確認するが筆者の買い物中に仮につきっきりでスタッフが横にいても注意されるようなおかしな行動は全く行っていない。

 アマゾン・フレッシュで筆者が先週買ったものはブドウにバナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、りんご、トマト、ネギ、レタス、ブロッコリー、むきニンニク、じゃがいも、豆腐、ほうれん草、卵、ヨーグルト、ホットココア、そして単3乾電池で個数でいえば27個に上った。

しかし、買い物から数時間して送られてきたレシートで確認すると、電池しかチャージされていなかった。

実際には30ドル以上となる買い物が、3ドルちょっとしか課金されなかったのだ。

すぐにアマゾンに連絡したものの担当者は「極めてまれ(estremely rare)」と話すものの、最後までシステムのエラーは認めなかった。同時に筆者が不正をして買い物したとも追求されることはなかった。

翌週もアマゾン・フレッシュのジャスト・ウォークアウトで鳥のもも肉やニンジン、ピーマン、マッシュルームなど23個の買い物を行った。

2時間後に自分のアカウントにある履歴を確認すると16個で合計金額は30ドル強。

一緒に買ったことになっているはずのブラックベリーにブルーベリー、バナナ5本はレシートに載っていなかった。予想通り、10ドル近くの買い物が反映(チャージ)されていなかったことになる。

 何度も強調するが、疑わしい行動は何もしていない。悪用を避けるため、ここでは詳細を共有できないが、筆者がある意図を持って実験を行ったのは確かだ。

 いまのところジャスト・ウォークアウトは防犯に完全とは言えないシステムということになる。

トップ画像:ハイブリッド型のアマゾン・フレッシュでは、売り場へのエントランスゲートが2種類ある。フルサービスのレジを通って従来どおりの買い物を行う「トラディショナル・ショッピング(Traditional Shoppingu)」用と「スキャンして入店(Scan to Enter)」と掲げられたジャスト・ウォークアウト用だ。ゲートにはアシスト用にスタッフが常駐する。

ジュスト・ウォークアウトでは入店と同時に天井に設置されたカメラやセンサーによって利用者の行動が追跡される。後藤が行った実験は、コンピュータービジョンをあざむくことが可能だった?

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ペンシルベニア大学ウォートンスクールで組織心理学を専門とするアダム・グラント教授の新著「Think Again」を読みました。「もう一度考える」「考え直す」を意味する「Think Again」は日本でまだ未翻訳となっていますが、日本でもベストセラーとなった「Give and Take『与える人』こそ成功する時代 」や「Originals 誰もが『人と違うこと』ができる時代 」に続く良書です。

そこに書かれているのは経営者などビジネスに携わる人は、仮設を立てて検証を繰り返すように「科学者たれ」とあります。自分の偏った思いに惑わされず「考え直す」ことができるようにファクトベースで実験を繰り返せと。巷でよく言われる「常識を疑え」もそういった意味になりますね。「コンサルタントは科学者たれ」とするのが後藤の主張。仮設を立てて実際に行動して(実験して)、その仮設を検証し真実を追求せよと。インターネット上にある情報があれば、誰もが評論家になれる時代。しかし本当に大切なのは、一次情報をもてる行動ができるかどうか。

 当社のオンライン・コンサルティングでは、ジャスト・ウォークアウトを導入したハイブリッド型アマゾン・フレッシュの真実を明らかにしたいと思います。当ブログでは共有できない数多くのケーススタディもあるのでお楽しみに♪

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