大阪万博巡る左派メディアに苦言 – 木曽崇

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左派系論壇メディアであるリテラが以下のような記事を掲載しています。

万博でも維新がインチキ!「税金使わない」はずが周辺整備にまたぞろ30億円、医療や保健所削減の一方でカジノの隠れ蓑に多額の税金
https://lite-ra.com/2021/12/post-6093.html

 文書通信交通滞在費(文通費)問題をめぐり、またぞろ吉村洋文・大阪府知事や松井一郎・大阪市長がしゃしゃり出て「こんなの国民の税金に群がるシロアリだよ」「札束で小遣い認める国会」などとがなり立てている。

 だが、こうして吉村・松井両氏が「税金の無駄遣いだ!」とパフォーマンスに勤しむ一方、当の大阪で、絶句するような「税金の無駄遣い」が判明した。というのも、2025年大阪・関西万博の会場となる大阪市の人工島・夢洲に新設される夢洲駅(仮称)の改札前広場やエレベーターの設置といった周辺整備について、大阪市は今月2日、市が負担する総工費が約30億円にのぼると公表したからだ。

 上記記事記載の地下鉄・夢洲新駅の駅前開発入札が不調に終わり、2025年万博開催に向けた時間的な制約もあってそこに公金投入がなされることとなったというのは事実ですが、一方でそこに至る経緯部分に関してはリテラ側に事実誤認があるようです。上記記事には以下のような記述があります。

 大阪万博を夢洲で開催するというのは事実上、松井氏によるトップダウンの決定だったわけだが、松井氏が夢洲にこだわった理由、そして当時の菅官房長官にわざわざ報告をおこなったのは、夢洲がカジノ候補地だったからだ。ようするに、大阪万博はカジノありきで進められてきたものであり、カジノだけでは税金投入に反対意見が出るため、万博という大義名分を使ってインフラ整備を図ろうという計画なのだ。

 松井氏は「IR、カジノには一切税金は使わない」と断言していたが、それは大嘘で、万博を大義名分にして税金を投入しているにすぎない。

 この辺は全く過去の経緯が違いますね。そもそも大阪府市の夢洲開発構想は「カジノ単独で全域開発が出来る」という前提で始まったもの。これは2017年に行われた関西経済同友会による大阪カジノ誘致提言に基づくもので、当時描かれたパース図を見て頂ければ一目瞭然の通り、当時の開発案には万博の「ば」の字もありません。以下、関西経済同友会からの転載。

 要は、そもそも大阪府市はカジノ単独で夢洲のインフラ開発を進めようとしていたワケで、万博という大義名分を隠れ蓑なんぞにする気すら全くなく、文字通り「カジノで一本推し」していたのが実態。その点は完全にリテラ側の事実誤認であると言えましょう。

 一方で、そもそもは他所の場所で計画されてきた万博が急転直下、松井知事(当時)の鶴の一声で夢洲開催となったのは、寧ろそもそも関西経済同友会側が起案していた夢洲カジノの想定市場規模や開発規模が全く見当違いであり、実態は想定よりもかなり小さいものであった事が原因。

 そもそもは上記のパース図の様にカジノ一本推しで行けると考えていた夢洲開発に対して実態が伴わないということが徐々に判明してきた結果、急転直下、その空きロット分を万博で埋めるという決断が行われたということであります。この辺の経緯に関しては、当ブログ上で過去に何度も解説してきているのでそちらをご覧下さい。

大阪夢洲カジノ構想の悲劇
http://www.takashikiso.com/archives/9191881.html

一方でリテラが認知していないというか、おそらく意図して無視しているのが夢洲IRから取得される収益に関して。夢洲を含む大阪市の大阪湾埋立事業会計は現時点で慢性的な赤字状態にあり、平成4年度時点で1220億円を擁していた基金残高は62億円にまで減退し危機的状況にあります。

一方で、大阪湾埋立事業は夢洲へのIR誘致によって2022年度からは本体開発分の49.3haの用地の借地権料(428円/㎡・月)、2028年度からはこれに加えてIR区域拡張予定地7.2haの借地権料(428円/㎡・月)を永続的に得ることを予定しているわけで、「地下鉄駅前を民間が開発してくれるハズ」という大阪府市の思惑は違えど、当たり前の事なのですが今のように「ただの野っ原」として夢洲を放置しておくよりは、当然のように全体収支上はプラスとなるわけです。

という事で、冒頭にご紹介したリテラの記事は事実誤認に事実誤認を重ねながら、一方で現在維新の会側から猛烈な突き上げを受けている文書交通滞在費問題に対する「当てこすり」をしている様にしか見えないわけであります。

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