【Hothotレビュー】「Xperia PRO-I」のカメラ性能、機能、使い勝手を徹底検証

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ソニー「Xperia PRO-I」

 ソニーは、Xperia PROシリーズフリースマートフォン新モデル「Xperoa PRO-I」を発表した。フラッグシップスマートフォン「Xperia 1 III」をベースとしつつ、1.0型イメージセンサーを採用するカメラを搭載することで、カメラ機能を大きく強化している点が最大の特徴だ。

 今回、実機を試用する機会を得たので、特にカメラ回りを中心に見ていこうと思う。なお、試用機は開発中の評価機だったため、仕様や動作など製品版と異なる可能性がある点はご了承願いたい。発売は12月15日を予定しており、直販価格は19万8,000円。

重厚感のあるデザインだが、Xperia 1 IIIと比べてわずかに大きく重い

 すでにXperia PRO-Iのニュース記事でも紹介しているので、ここでは簡単にXperia PRO-Iの仕様や外観を紹介する。

 Xperia PRO-Iは、後ほど紹介するように背面カメラが大きく変更されているものの、それ以外の部分については、XperiaシリーズのフラッグシップモデルであるXperia 1 IIIのSIMフリーモデルとほぼ同等となっている。

Xperia PRO-I正面

 Xperia PRO-Iの主な仕様は表1にまとめたとおりで、ほとんどがXperia 1 IIIのSIMフリーモデルと同等となっている。SoCがSnapdragon 888 5G、RAMが12GB、内蔵ストレージが512GB。5G通信はsub 6のみの対応となるが、nano SIM×2のデュアルSIM対応で、DSDS/DSDVをサポート。ディスプレイの仕様や内蔵バッテリ容量、IP6/8、IP6X準拠の防水防塵仕様をサポートする点などもXperia 1 III SIMフリーモデルと同じ。おサイフケータイにも対応している。

【表1】Xperia PRO-Iの主な仕様
SoC Snaodragon 888 5G
メモリ 12GB
内蔵ストレージ 512GB
外部ストレージ microSD
OS Android 11
ディスプレイ 6.5型有機EL、4K(1,640×3,840ドット)、アスペクト比21:9
HDR、リフレッシュレート最大120Hz
背面カメラ 超広角:16mm/F2.2、1/2.6型1,220万画素、デュアルPDAF
広角:24mm/F2.0,F4.0 ZEISS Tessar、光学手ブレ補正、1.0型1,220万画素、デュアルPDAF
標準:50mm/F2.4、光学手ブレ補正、1/2.9型1,220万画素、デュアルPDAF
3D iToF
前面カメラ 800万画素
5Gネットワーク Sub-6
対応バンド 5G:n3/n28/n77/n78/n79
4G:1/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/21/26/28/38/39/40/41/42
3G:1/5/6/8/19
GSM:850MHz/900MHz/1.8GHz/1.9GHz
対応SIM nano SIM×2(うち1つはmicroSDと排他)
オーディオ フロントステレオスピーカー「フルステージステレオスピーカー」、3.5mmオーディオジャック
Dolby Atmos対応、ハイレゾ音源/DSEE Ultimate対応/360 Reality Audioスピーカー再生/360 Spatial Sound
防水・防塵 IP6/8、IP6X
生体認証機能 電源ボタン一体型指紋センサー
おサイフケータイ 対応
ワイヤレス充電 非対応
外部ポート USB Type-C、3.5mmオーディオジャック
バッテリ容量 4,500mAh
サイズ(幅×奥行き×高さ) 72×166×8.9mm
重量 211g

 ただし、Xperoa PRO-Iではワイヤレス充電機能が省かれている点。これは背面カメラの仕様変更に伴って非搭載となったそうだ。

 物理ボタンは、右側面に集約。上部からボリュームボタン、指紋認証センサー一体型電源ボタン、ショートカットキー、シャッターボタンが並ぶ。このうちショートカットキーは、ユーザーが指定した任意のアプリを起動するためのボタンだ。標準では、後ほど紹介する動画撮影アプリ「Videography Pro」が割り当てられており、その他の任意アプリを指定できる。

ショートカットキーには任意のアプリを割り当てられる

 仕様についてはXperia 1 III SIMフリーモデルとほぼ同等で、側面にメタルフレーム、背面にガラスを採用する点も変わっていないが、外観デザインは大きく変更されている。

 特に大きく変わっているのが側面のデザインで、Xperia 1 IIIでは側面がほぼフラットだったのに対し、Xperia PRO-Iは細かな溝が掘られ、波形のようなデザインとなっている。これは、本体をしっかりグリップできるよう考慮してのものとのことだ。また、当然ながら背面カメラの仕様が大きく変わり、カメラの搭載位置も本体中央部に変更されていることから、背面の印象も大きく変わっている。

 これは個人的な印象だが、特に側面のデザイン変更によってXperia PRO-Iのほうが重厚な印象が強い。Xperia PROシリーズのターゲット層を考えても、このデザインはマッチしていると感じる。

 カラーは、フロストブラックのみとなる。側面のメタルフレーム、背面ガラスともに光沢感を抑えたすりガラス調のフロスト加工となっており、これも重厚感を高める要因となっているはずだ。

 また、左側面にストラップホールが用意されている点も、Xperia 1 IIIにはない特徴だ。近年のスマートフォンでは本体にストラップホールを備えるものはほぼなく、ストラップを使いたい場合にはストラップホールを備えるケースを活用するしかない。しかしXperia PRO-Iは本体にストラップを装着して利用できるため、非常に安心感がある。合わせて、ネックストラップなどを活用することで本体をしっかりホールドできることにもなるため、より安定して撮影できることにも繋がる。

 サイズは72×166×8.9mm(幅×奥行き×高さ)。Xperoa 1 IIIのサイズが71×165×8.2mm(同)なので、Xperia PRO-Iのほうがわずかに大きくなっている。実際に双方を持ち比べても違いを感じるほどではないが、横に並べるとその違いがはっきりわかる。とはいえ、残念に感じるほど大きくなっているわけではないため、それほど気にはならないはずだ。

 それに対し重量は約211gと200gを大きく超えている。Xperoa 1 IIIから約25gの重量増となっており、実際に手にしてもかなりずっしり重く感じる。重量増は、カメラの大型化や筐体の大型化などが要因だが、できれば200g未満で抑えてもらいたかったようにも思う。なお実測の重量は210.2g(SIM非装着時)だった。

カラーはつや消し調のフロストブラックで、側面にメタルフレーム、背面にガラスを採用している点はXperia 1 IIIと同じだが、側面に溝を掘った波形のデザインを採用しており、重厚なイメージだ

右側面下部にストラップホールを用意

本体にストラップを装着できるため、安心感があるのはもちろん、ネックストラップを利用すれば撮影時のブレ防止にもなる

Xperia 1 III(左)と並べると、Xperia PRO-I(右)のほうがやや大きいことがわかる

重量は公称211g、実測では210.2gだった。手にするとずっしり重く感じる

1.0型イメージセンサー採用の広角カメラを加えた4眼仕様のカメラを搭載

 では、Xperia PRO-I最大の特徴となる、背面カメラを見ていこう。

 Xperia PRO-Iの背面カメラは、超広角、広角、標準、3D iToFセンサーで構成される4眼仕様となっている。4眼仕様という点はXperia 1 IIIと同じだが、その中身は大きく変更されている。

 大きく変わっているのが、その見た目と搭載位置だ。Xperia 1 IIIの背面カメラは背面の左上角に搭載しているのに対し、Xperia PRO-Iは本体中央上部に搭載。また、4眼のレンズを縦に並べて搭載している点はどちらも同じだが、Xperia PRO-Iは上から2番目の広角レンズ部がかなり大きく、カメラユニットから横だけでなく上にも大きく飛び出している。

Xperia PRO-Iの背面カメラ。背面の本体中央部に、上から超広角、広角、3D iToF、標準と4眼のレンズを縦に並べて搭載。1.0型イメージセンサーを採用する上から2番目の広角レンズが特に大きく、強い存在感を放っている。カメラ左に見える穴はマイクだ

 このように広角レンズ部が大型化しているのは、1.0型と大型のイメージセンサーを採用しているからだ。イメージセンサーが大きくなると、必然的にレンズも大きくする必要があり、そのため広角レンズ部が大型化しているわけだ。これによって、カメラの存在感も大きく変わっている。

 各レンズおよび撮像素子の仕様は次のとおり。いちばん上のレンズは16mm/F2.2超広角レンズで1/2.6型センサーとの組み合わせ。2番目は24mm広角レンズで1.0型センサーとの組み合わせ。3番目は3D iToFセンサー。4番目は50mm/F2.4標準レンズで1/2.9型センサーとの組み合わせとなる。各レンズのセンサーはいずれも有効画素数が約1,220万画素で統一されており、像面位相差AFに対応する点も同様だ。

 ところで、一般的なスマートフォンカメラのレンズは樹脂レンズを採用しているのに対し、Xperia PRO-Iの広角レンズはガラスモールド非球面レンズ「ZEISS Tessar」を採用。加えて、通常は搭載されない物理的な絞り機構も搭載しており、F2.0とF4.0の2段階に絞りを切り替えられるようになっている。過去に同様の可変絞り機構を備えるカメラを搭載するスマートフォンは存在していたが、Xperiaシリーズとしてはこれが初だ。このような、ガラスモールド非球面レンズの採用や可変絞り機構といった、カメラに近い仕様を実現しているのは、もちろん1.0型イメージセンサーの性能を最大限活用するためだ。

 搭載している1.0型イメージセンサーの画素ピッチは2.4μmと、一般的なスマートフォンに搭載されるセンサーに比べてかなり大きく、それぞれの画素がより多くの光を取り込める。より多くの光を取り込めることで、暗い場所でも明るく、ノイズが少なく、ダイナミックレンジの広い撮影が行なえることになる。その1.0型イメージセンサーを最大限活用するために、高品質なレンズや可変絞り機構を採用しているわけだ。

 さらに、ソニーのデジタルカメラ「α」や「サイバーショット」に搭載される、画像処理用のフロントエンドLSIもXperiaとして初めて搭載している。

 このように、1.0型イメージセンサーとガラスモールド非球面レンズ、可変絞り機構の採用、フロントエンドLSIの搭載などによって、これまでのスマートフォンカメラとは一線を画す高感度・低ノイズ性能、高ダイナミックレンジ、自然なボケ味などを実現している。

1.0型イメージセンサーを採用することもあり、広角レンズ部が本体から大きく飛び出している

全レンズともZEISS T*コーティングが施され、広角レンズにはガラスモールド非球面レンズ「ZEISS Tessar」を採用。横には大きくZEISSのロゴも印刷されている

広角レンズにはF2.0とF4.0の可変絞り機構を搭載。こちらはF2.0の状態

こちらはF4.0の状態。絞りはカメラアプリのPhotography Proや動画撮影アプリのVideography Proから切り替えられる

 また、カメラ性能も高められている。

 人や動物などの瞳を認識してピントを合わせる「リアルタイム瞳AF」と、動いている物体にピントを合わせ続ける「リアルタイムトラッキング」は、静止画だけでなく動画撮影時にも対応。合わせて、広角レンズ利用時には撮像エリアの約90%をカバーする総数315点の像面位相差検出AFセンサーが配置されることで、ほぼ画面全体でAFが動作する。

 連写性能は、最大秒間60回のAF/AE演算によるAF/AE追従の最大秒間20コマ高速連写に対応。さらに、1.0型イメージセンサーからの高速読み出しが可能となったことで、高速に動く被写体を撮影する場合などに発生する「ローリングシャッター歪み」も抑えられている。

 このほか、明暗差の大きなシーンで10枚以上の画像を自動で連続撮影して重ね合わせノイズを低減する「マルチショットNR」や、12bit RAW撮影などにも対応している。

撮影には1.0型イメージセンサーの約60%の領域を利用

 Xperia PRO-Iの背面広角レンズに採用されている1.0型イメージセンサーは、ソニーのデジタルカメラ「サイバーショット RX100VII」に採用されてるものとほぼ同等のものだ。このイメージセンサー採用の最大の理由は、もちろんカメラ性能を高めるためだ。

 近年のXperiaでは、ソニーのデジタルカメラ「α」や「サイバーショット」の開発陣がXperiaのカメラ開発にも携わっており、カメラの品質や機能が大きく高められている。そういった中、よりαやサイバーショットに近いカメラ品質や機能を実現するために、1.0型イメージセンサーの採用に踏み切ったという。

 ただ、Xperia PRO-Iのニュース記事でも紹介しているように、総画素数約2,100万画素の1.0型イメージセンサーを搭載してはいるが、静止画撮影時で約1,220万画素の領域のみの活用となっている。実際には、手ブレ補正などでより広い領域が利用されてはいるものの、静止画撮影で利用されるのはセンサー全体の約60%程度の領域。つまり、1.0型イメージセンサーの全体を活用する設計とはなっていないのだ。

 この点についてソニーは、カメラとしての品質を高めるだけでなく、スマートフォンのカメラに求められるスピードなども両立するためと説明している。例えば、有効画素数を1,220万画素とすることでデータ量が減り、高速な処理が可能になっているという。これによって、先ほど紹介した静止画および動画でのリアルタイム瞳AFやリアルタイムトラッキングの実現、毎秒60回の演算でAF/AE追従の秒間20コマ高速連写といった機能を実現している。合わせて、広角レンズで撮影領域の約90%がAFエリアとなっているのも、1.0型イメージセンサーの約60%のみを利用するからこそ実現できているそうだ。

 このほかにも、1.0型イメージセンサーの全領域を活用し、画質にもこだわった場合には、レンズやカメラユニット、ひいてはスマートフォン自体のサイズがより大きくなってしまう。そのため、カメラとしての品質やスピード、サイズなどのバランスを考慮してこういった仕様にしたのだと説明している。

 確かに、1.0型イメージセンサーの全体を使わないことによって、様々なメリットがあるのは理解できる。また、搭載するイメージセンサーの全体を利用してないデジタルカメラも多く存在しており、こういったイメージセンサーの使い方が特殊というわけでもない。とはいえ、1.0型イメージセンサー搭載を強くアピールしていることを考えると、センサー全体を使ってないという点が引っかかるのも事実だ。1.0型イメージセンサーを搭載しているのは間違いないとしても、領域全体を使っていないなら、そのことをもっとしっかり説明すべきだと感じる。

PCとの直結ではデータ転送速度があまり速くない?

 Xperia PRO-IのUSB Type-Cは、Xperiaシリーズ初のUSB 3.2 Gen2対応となっている。データ転送速度は10Gbpsで、高速なデータ転送が可能としている。そこで、USB 3.2 Gen2対応のPCのUSB端子と直結して、どれだけデータ転送速度が速いかチェックしてみた。

 利用したPCは、富士通クライアントコンピューティングの「LIFEBOOK WU2/E3 5Gモデル」で、USB 3.2 Gen2対応のUSB Type-Cケーブルを利用し、LIFEBOOK WU2/E3 5GモデルのUSB 3.2 Gen2準拠USB Type-Cポート(Thunderbolt 4ポート)に接続。その状態でXperia PRO-IからLIFEBOOK WU2/E3 5Gモデルの内蔵SSDに、31個の動画ファイル、総容量約39.4GBのデータを一括転送する時間を計測した。

 結果は、約4分52秒と、かなりの時間がかかってしまった。転送速度は約139MB/s程度で、USB 3.2 Gen2の速度が全く発揮されていない。これは、Thunderbolt 4との相性が悪いのかと思い、USB 3.2 Gen2対応USBポートを備える他のPCでも試してみたが、速度はほとんど変わらなかった。

 そこで、試しにとSanDiskのUSB 3.2 Gen2対応ポータブルSSD「Extreme Portable SSD V2 2TB」を用意してXperia PRO-Iに直結し、同じデータを転送してみた。すると、約59秒で転送が完了した。転送速度は約687MB/sに達しており、これならUSB 3.2 Gen2の効果がしっかり発揮できていると言える。

 PC直結時になぜ速度が遅くなるのか、理由は不明だ。ただ、USB 3.2 Gen2対応ポータブルSSDにはかなり高速にデータ転送できるため、撮影データを高速に転送したいなら、PC直結ではなく、USB 3.2 Gen2対応のポータブルSSDなどを用意し、そちらに転送したほうが良さそうだ。

Xperia PRO-IのUSB Type-CはUSB 3.2 Gen2対応。ただ、PCとUSB Type-Cケーブルで直結しても、転送速度はそれほど高速ではなかった

価格をどう考えるかで魅力が変わってくる

 今回、Xperia PRO-Iの試用機で、特にカメラ回りを中心にチェックしたが、カメラの完成度はほかのスマートフォンを圧倒するほどに優れている。Xperia PRO-Iのカメラ機能に注目している人も多いと思うが、その期待を裏切らないクオリティを実現していると十分に感じられた。

 また、スマートフォンとして見ても、現役フラッグシップモデルであるXperia 1 IIIと同等の機能やスペックが備わっており、こちらも全く不満を感じることはないだろう。

 ただ、気になる点があるのも事実だ。その1つが、1.0型イメージセンサーの全領域を利用していないという点だ。確かに、ソニーが説明するように全領域を利用しないことによるメリットが多くあることは理解できる。また、実際に撮影される写真や動画のクオリティも十分に優れている。それでも、1.0型イメージセンサー搭載を強調するだけでなく、センサーをどう使っているのかユーザーにわかりやすく説明すべきだろう。

 19万8,000円という価格については、Xperia PRO-Iをどう捉えるかによって印象が大きく変わるだろう。例えば、Xperia PRO-Iのカメラに特に魅力を感じず、純粋なスマートフォンとして見る人からは、かなり割高と感じるだろう。ただ、Xperia PRO-Iのカメラに大いに注目する人からすると、Xperia PROシリーズ初代のXperia PROが24万9,800円だったことや、カメラ以外のスペックがほぼ同等のXperia 1 III SIMフリーモデルの価格が15万9,500円ということと合わせ、思ったほど高くないと感じるはずだ。

 Xperia PRO-Iは、非常にニッチな製品であり、万人向けのスマートフォンではないことは確かだ。ただ、こういったニッチな製品を実際に作り上げ、発売するという姿勢からは、ソニーらしさが強く感じられる。そして、ニッチな製品を期待している人にとっては、間違いなく満足できる製品と言っていいだろう。

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