ほのぼの農耕スローライフ体験ゲーム「スターデューバレー」のボードゲーム版はどのように制作されたのかをデザイナーが語る

GIGAZINE
2021年11月29日 23時00分
メモ



祖父から譲り受けた古い農場と使い古された道具とわずかなお金を元手に、田舎でスローライフを送るシミュレーションRPG「スターデューバレー」はPCやPlayStation 4、Nintendo Switchなどで遊べるデジタルゲームですが、アナログゲーム作家のCole Medeiros氏によって制作されたボードゲーム版も存在します。ボードゲーム情報サイト「BoardGameGeek」で、Medeiros氏がこのボードゲーム版スターデューバレーの制作について語っています。

Designer Diary: The Seeds of Stardew Valley: The Board Game | BoardGameGeek News | BoardGameGeek
https://boardgamegeek.com/blogpost/124539/designer-diary-seeds-stardew-valley-board-game

スターデューバレーがどんなゲームなのかは、以下の記事を読むとよくわかります。

田舎で農業&釣りや住人と触れ合うスローライフが楽しめる「スターデューバレー」、新たに追加されたマルチプレイシステムレビュー – GIGAZINE


このスターデューバレーのボードゲーム版が2021年2月23日に発表されました。このボードゲーム版は、スターデューバレーの制作者であるConcernedApeことEric Barone氏とMedeiros氏が2年半以上という歳月をかけて作成したもの。以下がボードゲーム版の紹介ムービーです。

Stardew Valley: The Board Game – YouTube
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ボードゲーム版スターデューバレーは、対象年齢13歳以上、プレイ時間45分、プレイヤー人数1~4人を想定。プレイヤー同士で協力して、祖父から受け継いだ土地・スターデューバレーから悪い企業を追い出して発展させることが目的となっています。街を発展させるため、プレイヤーは変化する天気やさまざまなイベントを通じて、畑を耕したり動物の世話をしたり、職業スキルの習得や資材の収集を行います。そのため、ルール自体はそこまで複雑ではないものの、ゲーム自体は決して短くてカジュアルなものではない、とBarone氏は述べています。


Medeiros氏がボードゲーム版を制作するきっかけは、オンラインマルチプレイで友人と一緒にスターデューバレーを遊んでいたところ、たまたまその友人がBarone氏と知り合いだったことで、一緒にオンラインマルチプレイをしたことだそうです。

スターデューバレーにはさまざまな資源やアイテム、キャラクターなどが用意されていることから、Medeiros氏はその場で「スターデューバレーをボードゲームにしたら面白いのでは?」とBarone氏に提案したところ、Barone氏もこの提案に賛同して非常に盛り上がったとのこと。ただし、この段階では細かいシステムやルールについては全く思いつかなかったそうです。

実際にボードゲーム版の制作が始まってすぐに、Medeiros氏はBarone氏に「このボードゲーム版スターデューバレーは誰に向けたものなのでしょうか?いわゆる『ターゲット層』はどこなのでしょうか?」と尋ねたそうですが、Barone氏は「そういう点には興味がないので、自分たちが好きなゲームを作りましょう」と述べたとのこと。Barone氏の答えを聞いて、Medeiros氏は「これは彼の姿勢そのものです。直感と多くの努力で、自分が楽しいと思うものに向かって進めばいいのです。反復して探究し、何がいいのか悪いのかについて、自分自身に正直になる。シンプルなようでとても奥が深いあり方です」と述べています。

制作の打ち合わせは基本的にオンラインで行われ、物理エンジンでボードゲームをオンライン上でプレイできる「Tabletop Simulator」を介してテスト版を試遊しました。Medeiros氏は「Tabletop Simulatorはボードゲームの試遊版の作成やプレイテストを行うには素晴らしいツールです。Tabletop Simulatorがなければ、これほど多くの作業を迅速に行うことはできませんでした」と語っています。


なお、実際のボードゲームと、Tabletop Simulator上のデジタル化したゲームボードやカードはプレイ感覚が異なるため、Medeiros氏はTabletop Simulatorの試遊と並行して現実でも試作品を作ったそうです。


初期のテスト版をプレイした結果、Barone氏が「もっとアイテムや壮大な戦利品が欲しい」とコメントしたそうです。Medeiros氏はデジタルゲーム版のスターデューバレーをプレイしている時、登場する道具にアイテムや戦利品という認識を持っていなかったそうですが、実際にスターデューバレーで使われるアイテムのほとんどはRPGのアイテムのように「1回限りの使い捨て」か「アップグレードしながら使い続けられるもの」の2種類だったことに気づいたとのこと。そのため、ボードゲーム版では技術ツリーを進めたり資源コストを支払ったりすることで、人によってさまざまな道具の使い方と極め方ができるようになっているそうです。

また、最初の試作品はゲームとして遊べるものというよりは、単にシンプルなボードにコマとカードを並べるだけでした。しかし、スターデューバレーにおいて重要なのは時間や季節の変化であることから、時間や季節の経過を示すトラックが後から追加されました。


さらに農業だけではなく釣りや採掘が楽しめるのもスターデューバレーの魅力の1つ。ボードゲーム版でも釣りや採掘を体験できますが、釣りと採掘のプレイ感覚が決して同じにならないように調整が行われたとのこと。また、落ちているものを集めたり樹木を伐採したりする採取については、フィールドを移動する途中で実行するフリーアクションに定められました。

Medeiros氏は「スターデューバレーのボードゲーム版は、もともとプレイヤー同士の協力を重視したゲームにしたいと考えていたので、みんなが目的や意図を話し合って実行に移せるようにする必要がありました。スターデューバレーは、人や場所とのつながりを楽しむゲームです。それを毎ターン実現したかったのです」と述べています。


Medeiros氏やBarone氏はテストプレイを何度も重ねましたが、一発でゲームをクリアできることが多く、Barone氏は「少し簡単過ぎるのではないか?」と心配していたそうです。Medeiros氏も、協力型ボードゲームの理想的な難度は「1回目や2回目は失敗してしまうが、3回目以降はクリアできるようになる程度」と述べています。制作から1年以上かけて難度調整を行った結果、ようやくテストプレイで負けるようになったため、Medeiros氏やBarone氏は大喜びしたと語っています。

ボードゲームにおいては、ゲームシステムだけではなく、アートワークやグラフィックデザインも重要。ボードゲーム版スターデューバレーでは、村人たちがデジタルゲーム版とはかなりデザインが変更されました。これは、Barone氏がキャラクターデザインを特に重要視していたからだとのこと。また、アイコンは遠目で見ても区別が付くように、シルエットに重点を置いてデザインされました。


こうして完成したボードゲーム版スターデューバレーの初版はわずか1日弱で完売したそうです。Medeiros氏はすぐに再版をかけたいと考えましたが、Barone氏は「フィードバックを集めて、さらに改善できるかどうかを考えましょう」と判断しました。その結果、実際に初版の感想を受けて、第2版以降にはゲーム中に使うトークンやパネルを保管するトレイを追加するなど、ユーザーエクスペリエンスを向上させる改善が加えられているとのこと。

スターデューバレーのボードゲーム版はShopifyで55ドル(約6100円)で販売されており、記事作成時点でアメリカ・イギリス・EU諸国・オーストラリア・ニュージーランド・カナダでは店舗販売も行われる予定だとのこと。日本向けのローカライゼーション並びに販売予定は不明です。

Stardew Valley: The Board Game – Stardew Valley Shop
https://shop.stardewvalley.net/products/stardew-valley-the-board-game

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