Microsoftが9月23日(米国時間)に開催したイベントで発表した2画面スマートフォンの「Surface Duo 2」。米国では10月21日に発売され、日本でも2022年前半の発売が予定されている。
筆者はLGエレクトロニクス(LG)の2画面スマホ「G8X ThinQ」で2画面スマホの魅力を知り、現在も同じLGの「VELVET」を愛用している2画面スマホ愛好家だ。Surface Duo 2も日本での発売を楽しみにしていたのだが、米国で販売されたモデルがすでに技適を受けていることを知り、国内発売を待ちきれずに米国モデルを購入することにした。
今後発売が予定されている国内モデルでは仕様が変更となる可能性もあるが、今回は米国モデルをベースにSurface Duo 2の性能や2画面の使い勝手、便利に使うためのカスタマイズ方法などを紹介したい。
高性能CPUや5G対応、3眼カメラなどハイエンド並みのスペック
スペックはCPUがQualcomm Snapdragon 888、メモリが8GB、ストレージが128BG/256GB/512GBの3種類で、外部ストレージには非対応。OSはAndroid 11を搭載する。
ディスプレイは有機ELを採用し、サイズと解像度は1画面時が5.8型1,344×1,892ドットで、2画面時は8.3型2,688×1,892ドット。カバーガラスはCorning Gorilla Glass Victusを採用し、リフレッシュレートは90Hz。
カメラは背面が1,200万画素の広角、1,200万画素の望遠、1,600万画素の超広角の3眼構成で、前面が1,200万画素。背面カメラは物理的に飛び出る形状となっている。
接続インターフェイスはUSB 3.1 Type-C(10Gbps)で、充電やデータ転送に加えて4Kのビデオ出力が可能。通信面ではWi-Fi 6、Bluetooth 5.1、NFCを搭載し、GPSや指紋認証にもサポートする。海外モデルのためFeliCaは非対応なほか、防水についてはWebサイトでは記載がないものの、米MicrosoftのTwitter投稿によればIPX1相当だという。
バンドの対応状況は、LTEが1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/19/20/25/26/28/29/30/38/39/40/41/42/46/48/66/71で、国内キャリアのプラチナバンドもサポートしているほか、5GはSub6のn2/n3/n5/n7/n20/n25/n28/n38/n41/n66/n71/n77/n78/n79、さらに海外版はミリ波のn257/n260/n261もサポート。SIMはNano SIMに加えてeSIMに対応している。
本体サイズは閉じた状態が145.2×92.1×11mm(幅×高さ×厚さ)、開いた状態が145.2×184.5×5.5mm(同)。一般的なスマホが縦長デザインなのに対してSurface Duo 2は横幅が長く、文庫本のようなサイズ感だ。
重量は284g。スマホとしては大型クラスであるiPhone 13 Pro Maxが238gだが、それよりも50g弱重い。一方で折りたたみかつ大画面の「Galaxy Z Fold3 5G」が271g、VELVETがデュアルスクリーン装着時で約309gなので、このサイズのスマホとしては相応な重量と言えるだろう。
2画面でアプリを自由に切り替え。2画面を1画面で表示することも可能
ホーム画面はMicrosoftのランチャーアプリ「Microsoft Launcher」が適用されている。Surface Duo 2用にカスタマイズされているのか設定できる機能は少なく、1画面に表示できるアプリも4×5で固定されており、Microsoft Launcherならではの細かなカスタマイズはほとんど利用できない。
2画面は1つのホーム画面として繋がっており、片方のホーム画面を操作すると、もう片方のホーム画面も合わせて動く。片方の画面でアプリを開くと、ドックに表示されたアプリがもう片方の画面に移動し、異なるアプリを同時に起動できる。2画面スマホならではの「2つの画面で別々のアプリが同時に動く」は期待通りの動作だ。
アプリの画面入れ替えは、マルチタスクボタンで起動中のアプリを一覧表示してから、移動したい方向にフリックすると画面が移動、反対側にフリックするとアプリを終了できる。アプリ下部のホームボタンを押したまま反対側にドラッグしても画面の切り替えが可能だ。
また、ホームボタンをタッチしたままアプリを両画面に表示した状態で指を離すと、1つのアプリを2画面に表示できる。基本的には2画面を1画面として表示するだけだが、OneNoteなど一部のアプリは1画面表示に合わせたモードが用意されている。
[embedded content]
[embedded content]
ディスプレイを外側にして30度ほど曲げると画面表示が右画面のみとなり、左画面には「ダブルタップして画面を切り替えます」と表示される。この状態で数秒待つと左画面はオフになり、時間内に指示通りダブルタップすると表示画面を左に切り替えることが可能だ。
背面はカメラが飛び出ているため、ディスプレイを外側にして完全に折りたたむことはできず、少し隙間が空く構造になっている。
1画面の横幅は92.1mmあるため、1画面操作時であっても反対側まで指が届かず片手操作は難しい。基本的には両手で操作するのが前提の構造だ。
ただし、ディスプレイを外側に閉じて1画面操作する場合は、本体で指をクリップのように挟むことで、片手持ちでもある程度安定して本体をホールドできる。画面をスクロールする程度の操作であれば片手での操作も十分可能だろう。
筆者の場合、反対側に折りたたんだ時の隙間を利用して背面に薄型のリングを装着することにした。横幅が広いので片手ですべての操作を行なうのは難しいが、リングを使うことで片手のWebブラウジングやカメラ操作はだいぶ安定した。
本体を折りたたむと、画面の端が外から見えるようになっており、このエリアで時間や着信、SMS、音量、充電状況などを確認できる。ただし面積は非常に小さく、時間もよく見なければ確認できない上に表示時間が短いため、あまり有効に活用できていない。
なお、電話については留守番電話機能が標準で搭載されていない。留守番電話機能が必要な場合は、留守番電話サービスを提供している携帯電話キャリアやMVNOを契約する必要がある点は注意しておこう。
2画面で同時に別のアプリを起動できる快適さ
LGで2画面のスマホには慣れている筆者だが、Surface Duo 2を体験して改めて「2画面スマホは便利だ」という思いを新たにした。
2画面スマホの肝は、繰り返しとなるが「2画面で別のアプリが同時に動く」ことにある。もう少し利用シーンを具体的に説明するなら「これまでマルチタスクでこまめに切り替えていた煩わしい作業から解放される」ということだ。
予定を立てるのであればカレンダーを見ながらメールでやり取りできるし、飲み会に行くときであれば地図アプリでナビしながらメッセンジャーで知人と連絡できる。最近増えてきた2要素認証も、メールや認証アプリを別画面で表示できるだけで驚くほど操作のストレスが軽減される。
個人的に好きな使い方は、左画面に音楽アプリで歌詞を表示しておきながら、右画面でWebブラウジングする使い方。好きな音楽の気になる歌詞だけをさっと確認しつつ、それ以外の時はWebブラウジングを楽しむといった使い方が気軽にできる。
また、2つのアプリをセットにして同時に起動できる機能も用意されており、同時表示したいアプリを重ねると登録が可能だ。電子書籍とメモアプリをセットにして気になるテキストを書き起こす、定例のミーティングを見ながら議事録を確認する、といった利用スタイルが決まっている時には便利そうだ。
一部のアプリは異なる画面間の連携機能も搭載。例えば、OneDriveの「写真」に表示された画像を、ドラッグしてもう1つの画面にあるWordに挿入できる。こうした連携機能も2画面ならではなので、Microsoft以外のアプリでも対応を期待したい。
なお、Surface Duo 2ではWord、Excel、PowerPointが「Office」アプリに集約されており、個別にインストールすることはできない。Google Playからも単体アプリでインストールすることはできず、新規作成時にはOfficeアプリから呼び出す必要がある。
2画面を1アプリでの利用時は中央のベゼル部分が課題
Surface Duo 2の5.8型という1画面のサイズは、電子書籍端末「Kindle」の6型とほぼ同じで、体感としてはKindle Paperwhiteの画面サイズとも遜色ない。そのため感覚としても「Kindleを2画面で読んでいる」ような体験で読書できる。これは予想外のメリットだった。
2画面の利便性はある程度予想できていたものの、気になっていたのは2画面を1アプリで利用する時の挙動だ。これについては予想より良い点も悪い点もあった。
良い点については電子書籍アプリの挙動、特にコミックの表示だ。手持ちの電子書籍アプリで試したところ、KindleやBookLive!、Kobo、ジャンプ+では、最初の1ページだけ中央に表示されてしまったり、マンガ一覧が横画面で表示されてしまったりといった挙動はあるものの、その後のページは2画面それぞれに表示でき、紙のコミックを開いて読むような感覚で閲覧できる。雑誌アプリの楽天マガジンも問題なく見開きでの閲覧が可能だった。
一方、同じ電子書籍でもテキストについては視認性が大幅に下がる。というのもSurface Duo 2は仕様上、画面中央のベゼルの部分も画面扱いになっているからだ。
具体的には文章を開いた場合、中央の1行がベゼルに隠れてしまって読むことができない。また、マンガについても見開きの絵が繋がっている、左右ページの間が少ないという作品については、やはりベゼルに隠れてしまう部分は存在する。
1行近く丸々表示されないのはさすがに困るため、対策として画面の表示形式をスライドに設定することで、ベゼルで見えない部分をスライドして動かすことで対応している。
このため文章を読むにはやや不便もあるのだが、2画面で見開きで読める視認性の高さは、個人的には不便さを上回る体験だと感じている。
なお、Koboは見開き表示の時に左右それぞれ1ページずつ表示する機能がアプリ側に用意されており、ベゼルに文字が隠れることなく読書できる。縦書き文化のない米国では気にされないUIの課題だとは思うが、日本版が発売されるまでにはKoboのような縦書きに即した機能が搭載されることを期待したい。
動画については画面中央がベゼルで隠れてしまうため基本的には不向きだが、画面を折りたたむとスタンドを使うように好きな角度で視聴できる点では便利だ。ディスプレイの縦横比率が13:9のため、16:9の動画は余白ができてしまうが、画面の大きさはそれを補って余りある迫力を感じる。
一方で、スピーカーは左画面上部と右画面下部の斜めの位置に配置されている。左右どちらの画面を利用した際も音が聞こえるための配慮かもしれないが、1画面時は主に片側からしか音が聞こえず、2画面時も前述の通りベゼルの邪魔が入るので、この点では動画視聴にはあまり向かないかもしれない。
また、Webブラウジングの場合は縦横表示を入れ替えることで、ベゼル部分はさほど気にならずWebサイトを閲覧できる。ただし、ディスプレイの横幅が広いこともあり、一部ではスマホ表示ではなくタブレット表示されてしまい、操作や閲覧に難がある場合もあった。この部分も日本版が発売される際には対応が進むことを期待したい。
ベンチマークは良好。操作も快適ながら動作はまだまだ不安定
ベンチマークは「AnTuTu Benchmark」v9.2.1、「3DMark」v2.2.4786、「GeekBench 5」5.4.3で測定。Snapdragon 888を搭載していることもあり、ハイスペックモデルとして十分な結果になった。
【表】Surface Duo 2のベンチマーク結果 | |
---|---|
AnTuTu Benchmark | 611,921 |
GeekBench Single-Core Score | 874 |
GeekBench Multi-Core Score | 3,028 |
3Dmark Wild Life Extreme | 1,521 |
実際の使い勝手もスペック通りサクサクと動作して使いやすい。ただし、2画面対応がまだこなれていないのか、ホーム画面が落ちる、日本語入力が表示されない、といった細かなバグは毎日のように発生する。
本体再起動までせずとも、ディスプレイを閉じて再度開けば復帰する程度なのでさほど困ってはいないが、今後のアップデートで改善を望みたいところだ。
タッチの感度は今までに利用していたスマホと比べて今ひとつで、フリックの文字入力は誤入力が頻発。フリック時に指をできるだけ離さずにスライドして動かすことで対策している。
IMEは標準で「Microsoft SwiftKey」がインストールされており、フリック操作にも対応している。ATOKも利用可能だが、端末がタブレットとして認識されてしまい、数字と分離したキーボードになってしまう。そのため片手操作が厳しく、ATOKのせっかくのキーボードサイズ変更機能が生かせないのが残念だ。
スクリーンショットは電源ボタンと音量下ボタンの同時押しで2画面が、マルチタスクのアプリ一覧を表示している際に表示される「スクリーンショット」ボタンからは1画面のスクリーンショットが保存できる。1画面のつもりが間違って左右両方のスクリーンショットを人に送ってしまわないよう気を付けたい。
バッテリ容量は4,449mAhで、駆動時間は公称で最大15.5時間のローカルビデオ再生となっている。ディスプレイの輝度を半分にして2画面表示した状態で、YouTubeの動画を繰り返し再生したところ、約9時間でバッテリが空になった。
大容量ながら2画面表示だとさすがに消費が激しいが、1画面での利用などを織り交ぜると実利用時間はもっと長いだろう。
カメラの動作もやや不安定ながら写真は高品質
背面カメラは広角、超広角、望遠の3カメラ構成で、静止画と動画のほかにポートレート、パノラマ、スローモーション撮影が可能。静止画の画面比率は4:3、16:9、1:1から選択でき、動画は1080pと4Kでそれぞれ30fpsと60fpsに対応している。
前面カメラと背面カメラはアプリのボタンから切り替えられるほか、ディスプレイを外側に折り曲げると前面カメラに自動で切り替わる仕組み。2画面を使ってスタンド的にディスプレイを立てることもできるので、Web会議なども使いやすい。
一方、背面カメラの撮影時は2画面を開いた状態にする必要があるため、片手でのホールドが難しい。ディスプレイを操作する場合は前述の通り本体背面で指を挟み込むようにすることでホールドできたが、カメラの場合は背面が映り込んでしまうため使えない。筆者は前述の背面リングでホールドしているが、撮影は基本的に両手操作が前提になるだろう。
カメラ機能はカスタマイズする要素は少なく、UIもシンプルで操作しやすい。ただし、起動直後はシャッターボタンが反応しなかったり、しばらく起動しているとカメラアプリだけでなくホームボタンやマルチタスクボタンも反応しなくなるなど、アプリ本体はまだまだ不安定だ。この点は今後のアップデートで安定性が高まることに期待したい。
なお、筆者の確認した環境においては、着信音をサイレントにした状態でシャッターボタンを押すとカメラが必ず落ちるという挙動が発生している。これは日本語環境のみで発生しており、言語をEnglishにすると問題はなかった。ちなみに言語や着信音設定に関わらず、カメラのシャッター音はオフにはできない。
本体を何度か初期化しても同じ挙動が見受けられたので、ほかの端末も同様ではないかと思われる。まだ日本発売されていないこともあり仕方のない部分ではあるものの、それまでには改善されていることを期待している。
このように動作に不安定さはあるものの、写真自体はとても高品質で不満はない。望遠や超広角があるため場所を移動せずに期待通りの写真が撮影できる。動作が安定すれば高い満足度が得られるだろう。
ペンは別売の本体カバーが事実上必須。操作感はメモ書き程度
ペン操作はSurfaceペン、Surfaceスリム ペン、Surface Hub 2ペンに加えて、国内でも販売されている最新のSurfaceスリム ペン2にも対応。ただし、Surfaceスリム ペン2の新機能であるハプティックによる触覚信号機能はWindows 11向けの機能のため、Surface Duo 2では利用できない。
また、Surfaceスリム ペン2は初回のペアリング時に充電が必要なのだが、充電器は別売。Surfaceスリム ペン2の充電機能を備えたSurface Duo 2の本体カバーは、日本では当然ながら未発売で、米国でも当初の予定より発売が遅れており、本体と同時に入手することができなかった(現在は販売を開始している)。
Surface Duo 2の背面もマグネットが搭載されているため、ペンを装着することはできるのだが、軽く触ると外れてしまう程度のホールド感なので持ち歩きには難しい。Surface Duo 2の本体カバーはペンの充電機能も備えており、前述の初回ペアリングについても解決できるため、ペンを使う場合は本体カバーの併用が事実上必須と言えるだろう。
肝心の書き心地は「メモが取れれば十分」という程度。直線を書こうとしても線がゆがんでしまい、きれいな文字を書くのは難しい。充電の環境も整っていないため判断は時期尚早ではあるものの、iPadのようなペン操作は期待しない方がよさそうだ。
動作が不安定なものの魅力的な2画面スマホ。日本発売までの安定度向上に期待
前モデルのSurface Duo 2と比べてCPUが最新のSnapdragon 888となり、3眼の背面カメラを搭載するほか、5Gに対応し、ディスプレイも大型化するなど順当な進化を遂げたSurface Duo 2。まだ動作に不安定な部分はあるものの、2画面スマホならではの魅力を持った1台だと感じた。
海外モデルは送料も含めて20万近い価格となってしまい、気軽に手を出せる金額ではないが、国内モデルかつキャリアから販売されればもう少し廉価に入手できるかもしれない。また、現在発生している不安定な動作も、日本版発売までには解消されているだろう。
なお、不安定な動作という点では、Googleマップのタイムライン機能が筆者の環境では正しく動作しない現象も起きている。個体差の可能性もあるものの、初期化しても元には戻らず、一方でほかのAndroid端末では問題なく動作している。個人的には愛用している機能だけに、不具合であれば対応をお願いしたいところだ。
動作の不安定さを除けば海外モデルで大きな不満はないが、あえて挙げるなら前述した留守番電話機能が標準搭載されていない点。また、日本発売まで半年以上の期間があるだけに、国内モデルではFeliCaへの対応も期待したい。
2画面スマホの魅力は実際に目の前で動作を見なければなかなか伝わりにくい、というのが2画面スマホを使い続けてきた筆者の感想だ。LGの撤退で失速しかけたところに現れたSurface Duo 2が、国内でどのように2画面の魅力を広めていけるのか、筆者も1ユーザーとして応援しながらその動向を見守っていきたい。
コメント