世界初の自律型電動貨物船「Yara Birkeland」進水

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世界的に温室効果ガスの排出量を削減する取り組みが行われている中、海運業界の排出量は増加傾向にあります。この傾向への歯止めの一歩として、ノルウェーで、世界初となる自律航行する電動の貨物船が進水しました。

Yara to start operating the world’s first fully emission-free container ship | Yara International
https://www.yara.com/corporate-releases/yara-to-start-operating-the-worlds-first-fully-emission-free-container-ship/

Yara Birkeland Drone Film: Voyage from Horten to Oslo – YouTube
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First electric autonomous cargo ship launched in Norway
https://techxplore.com/news/2021-11-electric-autonomous-cargo-ship-norway.html

海運業界では、バッテリーを搭載した電気動力式の船への置き換えが試行されています。一例として、オランダの運送会社Port-Linerは電動のコンテナ船を運用しています。

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また、ノルウェーは石油・ガスの産出国であることから電気輸送の先進国となっていて、多くの電動フェリーが導入されています。

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ノルウェーの肥料メーカー・Yaraは、この取り組みをさらに一歩進めて、電動で自律航行する貨物船「Yara Birkeland」を建造し、現地時間2021年11月19日、進水式を行いました。

Yara Birkelandは今後、ノルウェー南東部の町・ポルスグルンの工場からブレヴィック港まで、肥料入りのコンテナ最大120個の輸送に従事します。

Yaraはアンモニアを利用して肥料を製造しています。アンモニア生産は世界の化石エネルギー消費の約2%を占めていて、温室効果ガス総排出量でいうと約1.2%に相当することから、Yara Clean AmmoniaのCEO・Magnus Krogh Ankarstrand氏は「世界最大のアンモニア生産者として、Yaraは温室効果ガスの排出量を削減し、新しいクリーンなアンモニア生産をするため、国際規模の積極的な取り組みを始めました」と述べています。

Yara Birkelandには従来の機械室の代わりに8つのバッテリーコンパートメントがあり、再生可能な水力発電によって6.8Whの電力が供給されています。これはテスラの電気自動車100台分に相当するとのこと。

電動自律型貨物船プロジェクトを担当するJostein Braaten氏によれば、船舶事故の多くは船員の疲労などが原因のヒューマンエラーによるもので、自律航行は安全な航海を可能にしてくれるとのこと。

ただし、Yara Birkelandの航路はわずか7.5海里(14km)ほどながら、狭いフィヨルドを通り、2つの橋をくぐって、商船やプレジャーボート、カヤックなどを避けつつ、ノルウェーで最も出入りが多い港の1つに接岸しなければならず、かなり難しい船旅だそうです。

Yara Birkelandは当面は実働試験として自律航行に向けての調整が行われることになっています。実用化されると、ディーゼル燃料を使用している年間約4万台のトラックによる輸送をなくすことで、年間678トンの温室効果ガスが削減できます。

今後、さらに海運業界の電動化は進んでいくことになるとみられますが、海運専門家のカミーユ・エグロフ氏は、長距離航行を行うには各地の港に充電設備が必要となるため、技術的にもインフラ的にも課題があるという点を指摘しています。

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