東芝分割 実質「解体ショー」か – 川北英隆

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4/16に「東芝の解体ショーか放生会か」を書いた。それから半年少し、3社分割案が会社側から公表された(11/12)。電力設備やエレベータなどのインフラ事業を担当する新会社と、半導体やHDDなどのデバイス事業を担当する新会社とを東芝からスピンオフさせる。

スプンオフとは、会社の一部分を切り離し、それを新たな会社とする方法である。一般的に、切り離される前の企業の株主に対して新会社の株式が割り当てられる。ということで、スピンオフ後の状態を示すと、今の東芝の株主は、インフラ会社、デバイス会社、そしてこの2社が抜けた後の東芝の3社の株主となる。なお今回、新たに設立される2社は「2023年度下期の上場完了」を目指すとされた。

3社の資本関係はなくし、株式を持ち合わないらしい。この方針が実現すると、3社は独立した企業になる。ただし新会社2社の従業員は今の東芝からの転籍しよう。つまり人材もスピンオフとなり、繋がりが残る。

では今の東芝はどうなるのか。半導体メモリーの子会社であるキオクシア、上場子会社である東芝テックの株式、および東芝というブランドを管理する会社になるらしい。要するに財産管理会社であり、事業活動としてはもぬけの殻となるようだ。

狙いは企業価値の向上にあるとか。東芝のようにいろんな事業を営んでいると、株主としてはその事業の価値の評価が難しくなる。それに企業の力(人材、資本、研究開発など)が分散されてしまう。このため、そのような企業の株価は本来の価値よりも安く評価されがちだと言われている。コングロマリットディスカウントと称される現象である。

2017年、東芝は上場維持のために第三者割当増資を実施した。今回の3分割案は、実質的にこの第三者割当増資に応じた投資ファンド推薦の社外取締役を中心に練られたという。投資ファンドとしても、図体のでかい今の東芝よりも、3分割した新しい企業の方が小粒になる分だけ扱いやすいはずである。

インフラ会社とデバイス会社の中に、具体的にどのような技術が入るのか不明な点が残っている(確定していない)ものの、政府にとって戦略的に重要だと位置づけられる技術の相互移転の可能性が高まる分だけ、海外企業との提携なども容易化しよう。

加えて、財産管理会社となる現東芝の財産をすべて売り尽くすことで、投資ファンドとして投資資金の回収が簡単になる。実際、東芝の発表資料によれば、東芝は保有しているキオクシアの株式について、「実務上可能な限り速やかに現金化し、手取り金純額についてはスピンオフの円滑な遂行を妨げない範囲で、全額株主還元に充当します」と書いている。

以上を総合し、評価すれば、今回の3社に分割する案は実質的に「東芝の解体ショー」だろう。2社をスピンオフ後の東芝には、東芝というブランドは残るものの、公表された内容を読むかぎり、東芝として上場を続ける意味があるのかどうか、きわめて疑わしい。松下電器産業という名が消えたように、東芝(さらに遡れば東京芝浦電気)という名が「歴史的遺産」になろうと思えてならない。