電車内の殺傷 背景の考察が必須 – PRESIDENT Online

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「停車駅の間隔が長く、逃げ場がない特急を選んだ」

10月31日の夜に京王線の電車内で無差別刺傷事件が起きた。警視庁に殺人未遂容疑で逮捕された職業不詳・服部恭太容疑者(24)はこんな供述が報じられている。

走行中の電車内で乗客が刺傷されるなどした事件で、大勢の消防隊員や救急隊員らで騒然とする京王線国領駅前=2021年10月31日、東京都調布市
走行中の電車内で乗客が刺傷されるなどした事件で、大勢の消防隊員や救急隊員らで騒然とする京王線国領駅前=2021年10月31日、東京都調布市 – 時事通信フォト

「仕事に失敗した。退職に追い込まれ、友人関係も薄れた。死にたかった。だれでもいいから2人くらい殺して死刑になろうと思った」
「人の多く集まるハロウィーンの夜を狙った。電車内の方が街中よりも確実に人を殺せると思った。停車駅の間隔が長く、逃げ場がない特急を選んだ」
「8月に小田急線の快速急行で起きた事件が参考になった」

着ていた派手な紫色のスーツと緑色のシャツは、犯行のために買った「勝負服」で、映画『バットマン』の悪役のジョーカーの扮装だという。

オイルをまいて火を点け、可燃性の殺虫剤を噴霧

服部容疑者は10月31日午後8時ごろ、東京都調布市の京王線布田駅付近を走行中の上り特急電車で、72歳の会社員の男性の顔に殺虫剤を噴射し、右胸をナイフ(刃渡り30センチ)で刺した。男性は傷が肺まで達し、意識不明の重体に陥っていたが、9日までに意識を取り戻したと共同通信などが報じている。

さらに服部容疑者は電車内にライター用のオイルをまいて火を点け、可燃性の殺虫剤を噴霧した。火は燃え広がり、乗客16人が煙を吸い込んで病院に運ばれた。電車は調布市の国領駅に緊急停車し、乗客は窓を開けて脱出した。

これまでの報道によると、服部容疑者は犯行前、福岡市の携帯電話会社の関連会社で通信機材の営業販売の仕事をしていた。しかし、5月ごろに顧客のクレームで会社から配置転換を指示され、仕事が嫌になって退職した。福岡県出身で、県立高校から専門学校に進み、卒業後は介護ヘルパーの職に就いていた。

今年7月に福岡市から神戸市、名古屋市と移り、9月末から東京都八王子市のビジネスホテルに滞在していた。事件を起こした10月31日は京王八王子駅を午後5時ごろに出て、渋谷駅に到着。渋谷の街を30分ほど歩いてハロウィーンで仮装する人たちを見物した。その後、京王線で調布駅に行って上りの特急電車に乗り換えて犯行に及んだ。

服部容疑者は「小田急線の事件を参考にした」

服部容疑者は「小田急線の事件を参考にした」と供述しているそうだ。

今年8月6日、東京都世田谷区の登戸―祖師ケ谷大蔵間を走行中の快速急行内で、36歳の無職男が座席に座っていた女子大生らを刃物で切り付け、10人が重軽傷を負った。男は最初に女子大生を襲ったことについて「服装などから勝ち組っぽいと思った。以前から勝ち組で幸せそうな女性を見ると殺したいと思っていた」と供述していると報じられた。

日本の地下鉄
※写真はイメージです – iStock.com/RichLegg

2018年6月9日には東海道新幹線で男(当時22歳)が3人を殺傷する事件も起きている。この男は裁判で「男だろうと女だろうと、子どもだろうと老人だろうと、殺すつもりだった。刑務所に入りたかった。無期懲役を狙った」と語っている。

無差別殺傷事件は繰り返し起きている。特に衝撃的だったのは、2008年の東京・秋葉原の事件だろう。当時25歳の男が秋葉原電気街(東京都千代田区外神田)の歩行者天国にトラックで突っ込み、通行人をはねたうえダガーナイフで次々と刺し、7人が殺害され、10人が重軽傷を負った。

男は手記に「ネット上の成りすましに対するトラブルが動機のすべてだ」などと書いていたが、裁判では社会への強い不満をもっていたことが明らかになっている。

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