シャープ、最終利益は前年比1.8倍に–白物家電が高い利益率、ディスプレイも大幅回復へ

CNET Japan

 シャープは、2022年3月期上期(4~9月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比6.5%増の1兆2182億円、営業利益は31.6%増の390億円、経常利益は70.2%増の508億円、当期純利益は78.9%増の425億円となった。


2021年度上期連結業績概要

セグメント別売上高(上期)

セグメント別営業利益(上期)

 シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏は、「上期の売上高と各利益は、いずれも前年同期を上回り、経常利益は1.7倍、最終利益は1.8倍と大幅な増益になった。第2四半期は、新型コロナウイルス再拡大の影響や、サプライチェーンの混乱などもあり、売上高は前年同期を下回ったものの、着実に収益力の向上を進めてきたことから、各利益ともに伸長を遂げ、最終利益は前年同期比1.3倍となった。白物家電は、引き続き10%を超える高い利益率を継続しており、ディスプレイデバイスは、利益が大きく回復した」と総括した。


シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏

 第2四半期(7~9月)の売上高は前年同期比3.6%減の6066億円、営業利益は4.4%増の206億円、経常利益は35.6%増の252億円、当期純利益は33.9%増の208億円となった。


セグメント別売上高(第2四半期)

セグメント別営業利益(第2四半期)

 「第2四半期は8KエコシステムとICTが増収となり、8Kエコシステムとディスプレイデバイスが増益になった。だが、スマホはモデルミックスの影響もあり、売価ダウンが減益に影響した」という。半導体不足、部材の高騰、物流長期化などのマイナス影響は、営業利益ベースで、第1四半期は約80億円、第2四半期には150億円。「下期は、半導体の価格の落ち着きや調達環境の改善がみられ、上期ほどの影響はでないだろう。だが、部材価格の高騰はしばらく続きそうだ」との見通しを示した。

 上期のブランド事業の売上高が前年同期比9.9%増の6621億円、営業利益は2.5%増の391億円。そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比5.6%増の2239億円、営業利益は3.9%増の244億円。「第2四半期は、欧米でビルトイン調理器などの調理家電の販売が増加したが、アジアの新型コロナ再拡大の影響で白物家電事業が減速した。エネルギーソリューション事業は国内のEPC事業の売上げが増加したが、部材隘路(あいろ)の影響があった」としたほか、「部材価格の高騰の影響はあったものの、収益力は着実に向上しており、厳しい事業環境となった第2四半期においても10.5%の高い利益率を維持している」と述べた。

 8Kエコシステムの売上高は前年同期比21.1%増の2760億円、営業利益は57.4%増の115億円。「コンテナ不足や輸送期間の長期化、新型コロナウイルス再拡大の影響があったが、シャープNECディスプレイソリューションズ(SNDS)の連結効果や、COCOROオフィスサービスなどのテレワーク関連によるスマートオフィス事業が伸長した。また、部材価格の高騰や物流コストの増加といった影響のなかでも、原価力の向上によって増益になった」とした。

 また、欧米などでは出社が増えたことでプリントボリュームが増加し、MFP事業の拡販効果が見られたほか、国内のMFP事業でもプリントボリュームが回復したことを指摘。「コロナ前までは戻っていないが、今後も経済活動の回復は続くと期待している。第3四半期、第4四半期も回復するだろう。国内では、コンビニ向けや行政サービス向けの需要もある」とした。

 テレビ事業については、「国内は、先ごろ発表した『XLED』による次世代テレビに加えて、有機EL、8K液晶、テレビ、4K液晶テレビを、しっかりとラインアップしていきたい。北米市場では、BtoB向けのテレビを販売してきたが、2022年度からはBtoC向けテレビ市場にも再参入する。RokuやAndroidを搭載したコスト力がある大型テレビを投入し、販売を伸ばしていきたい。大型化や超大型化に加えて、高画質、高品質といった特徴を生かして、AQUOSブランドのイメージを取り戻し、プレミアムブランドとしての地位を確立したい」と語った。

 ICTは、売上高が前年同期比0.3%減の1621億円、営業利益が57.1%減の31億円。「PC事業では国内法人向けの売上高が増加。通信事業ではホームルーターなど新規商材が好調だった。だが、半導体を含めた部材価格の高騰により減益になっている。それでも、通信事業、PC事業ともに黒字を確保した」と振り返った。

 一方、デバイス事業の売上高は前年同期比1.6%増の6068億円、営業利益は前年同期か84億円増の96億円。そのうち、ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比8.3%増の4367億円、営業利益が前年同期の35億円の赤字から、93億円の黒字に転換。「スマホ向けの小型パネルが減収となったが、PCやタブレット向け、車載向けなどの中型パネルの販売が増加した。中型パネルの増加により、モデルミックスが改善し、これが増益につながった」という。

 エレクトロニックデバイスは、売上高が前年同期比12.4%減の1700億円、営業利益が92.2%減の3億円となった。「第2四半期は、新型コロナウイルスの再拡大による生産影響により減収となったが、現時点では正常化している。10月単月ではフルには戻らなかったが、第3四半期は回復に向かっている。根強い需要もある。しっかりと取り組んでいきたい」と語った。

 2021年度(2021年4月~2022年3月)通期業績見通しは据え置き、売上高は前年比5.1%増の2兆5500億円、営業利益は21.5%増の1010億円、経常利益は44.0%増の910億円、当期純利益は42.7%増の760億円を見込む。


2021年度連結業績予想

 「業績が期初の想定通りに進捗していることから、2021年度の通期予想は前回予想を据え置いた」とし、「新型コロナウイルスの先行きは不透明であり、サプライチェーンの混乱は当面続くと想定しているが、経済活動は正常化していくと見ている。だが、上期業績は期初の想定に沿ったものとなり、下期についても、期初の想定に沿った業績を達成することができる見込みである」とした。

 さらに今後の見通しについては、「下期には各国で、経済活動が正常化していくと見ているが、新型コロナウイルスの拡大に伴う新たな社会課題も顕在化している。シャープは、8K+5G機器、AIoT機器、サービス、ソリューションの創出に取り組むことで、ウィズコロナの動きに対応した新規事業領域への展開も進めていく」とコメント。「10月にオンラインで開催されたCEATEC 2021 ONLINEでは、ニューノーマルを加速するシャープのソリューションをテーマに、シャープの取り組みをニユーノーマルソリューション、ニューノーマル社会を支える要素技術やデバイス、ニューノーマル時代のデジタル街づくりの3つのカテゴリーで紹介した。このように、引き続き、シャープならではの製品やサービス、ソリューションを活用して、新規事業領域での展開を強化し、社会課題の解決と事業の変革、拡大を図る。それにより、強いブランド企業『シャープ』を、早期に確立していく」と述べた。

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