右翼政党への票が維新に流れたか – 猪野 亨

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 今回の衆議院議員選挙では自民党は議席を減らしたものの単独過半数を維持、公明党と併せて絶対安定多数を確保したこと、他方で野党立憲民主党と共産党が議席を減らしたという結果です。
 日本維新の会が4倍増の41議席にはたまげました。

 この結果から何を意味するのか。

 岸田文雄政権の誕生はある意味では右傾化した自民党の印象を変えるものでした。背後に安倍晋三、高市早苗氏らのような右翼議員が大きな顔をしていた反面、もともと右翼とは違った姿勢を持っていた岸田氏が新しい資本主義を言い出し、何となく構造改革路線を軌道修正するかのような印象を与えました。ここがポイントだったと思います。

 ヤフートピックスにあったのでこちらの論考を読みましたが、維新の会が中間ですか。
辻元清美氏までも敗北 維新が大阪を中心に4倍増の躍進を果たした背景は(大濱崎卓真)

 立憲民主党と共産党の選挙協力が立憲民主党を左翼と位置づけ、その中間にあった維新の会が躍進した、という分析ですが、それは違うでしょう。維新の会はどうみても中間ではありません。自民党よりも右です。

 立憲民主党と共産党の選挙協力がなければ立憲民主党はもっと議席を大きく減らしていました。

 右の自民党に左の立憲だから、その中間である維新を選んだ、ではなく、自民党が少々、左に寄ったために立憲との違いがなくなり(大分、極論していますが)、その結果、右側にいた右翼層の票が維新に流れ、維新の議席増に結びついたという状況です。

 右というのは改憲だけではなく、むしろ維新の会が構造改革を強く主張した点に大きな意味があります。岸田氏のいう新しい資本主義(といっても未だに具体的イメージはあいりませんが、構造改革から転換だそうです)ということと対極にあります。

 2017年と2021年の衆議院議員選挙比例区の比較です。

 自民党、立憲民主党は得票数自体は増えていますが、希望の党→国民民主党という分裂を経て、再び立憲民主党と国民民主党の一部が合流し、1つの立憲民主党となりました。

 そうした中で比例区の票を見る限り、合流の効果はなく、希望の党という右翼政党への票はそのまま維新の会に流れたかような投票傾向です。構造改革を渇望する層の受け皿が維新の会だっということです。

 もともと希望の党=旧同盟系は構造改革を推進する立場です。

 以前から維新の会は自民党の補完勢力というように言われていましたが、今回もまたそれを証明しました。自民党の右側から揺さぶる政党であり、それは以前の立ち位置と変わっているわけではありません(上記論考ですが、何故、維新の会が「中間」になるのか不思議で仕方ありません)。

 もっとも補完勢力というのは正確性を欠くかもしれません。自民党を右側から補完する勢力です。

 小選挙区でみるならば立憲民主党として共産党との選挙協力は不可欠です。地域にもよりますが、北海道の場合は特に選挙協力は有効な対抗策です。東京も同様です。

 全体としてマイナスになるところは多くはありません。

 他方で立憲民主党が振るわなかったもう1つの結果として大物議員の小選挙区での落選です。その象徴が小沢一郎氏と中村喜四郎氏です。

 恐らく立憲民主党からの立候補が影響したのではないかと思いました。無所属で立候補した方が小選挙区で当選したのではないかということです。もともと両氏ともゴリゴリの保守であり、保守層に支えられてきたのであり、そうした層からみれば立憲民主党は「左」に見えたのかもしれません。しかし、これは選挙協力の結果ではありません。

 立憲民主党において比例区が全体として伸び悩んだことの総括は必要でしょう。

 批判ばかりではダメだというのもその通りです。
立民「論客」相次ぎ落選 「批判だけでは支持されず」」(産経新聞2021年11月1日)

 しかし、責任論というのも違います。
枝野氏に責任論浮上 立共共闘で惨敗 連合は不快感」(産経新聞2021年11月1日)

 産経新聞らしい「分析」です。

 連合が構造改革を進めたいなら維新の会と連携したらいいんです。
 それに立憲民主党がとびつけば瞬く間に今の支持層が離反します。

 立憲民主党が手を伸ばす先はあくまで自民党の消極支持層です。それが保守政党としてのあるべき姿です。

立憲民主党枝野幸男代表たちの「お伊勢参り」と真正保守? これで保守層にウイングを伸ばせると思ったら大間違い

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 れいわの票は恐らく立憲と共産からの票が流れたものです。その意味では両党は目減りしています。れいわは決して自民党批判の受け皿にはなりません。

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