書き出し小説大賞第224回秀作発表

デイリーポータルZ

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

選挙です。ハロウィンでもあります。投票用紙にはコスプレしたキャラではなく、候補者を書きましょう。それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご案内します!

書き出し自由部門

カレーは全てを包んでくれる。

鯨谷いさな

いまの時期に漂うカレーの匂いが一番沁みるよね。

割れた唇に先輩の口紅が沁みた。

午前0時

先生も体育祭を抜け出してタバコを吸っていた。

みよおぶ

タバコを買いに出て意外な寒さに、ホットコーヒーを買い足す夜。

高田

盗んできた紙幣を撒き散らしながら、討ち取られた義賊の葬列はどこまでも続いていた。

さくさく

省略が妄想を広げる秀作。

誰も卒業パーティーに誘ってくれなくて、ひとりで歩いた式典からの帰り道。ソックタッチの匂い。

さくさく

「ソックタッチの匂い」にやられました。どの世代までの共通認識なんだろう。

それから、天気が悪くなった。飛行機は雲に飛び込んでいく。

七世

夕焼けが夕飯を追い越して、僕は帰り道を忘れる。

葱山紫蘇子

顔は無い。心も無い。目的はある。

正夢の3人目

雨、冷蔵庫、時計。この瞬間、俺は無力だ。

しんぶれ

コオロギが鳴く。脱皮しながら見た性夢を忘れられずに。

昼行灯

枯山水の底にある虚栄心は、決して流れることはなく滞っている。

アイク

今回の自由部門はほとんど規定の「かっこいい」でも通用するような秀作。

あわてた主人に取り残された影たちが集まった。

ウチボリ

シュールな寓話のようなはじまり。影たちの行動によってサスペンスにもなりそう。

右の尻が固い。

しっとりペンチ

缶コーヒーを買う。コーヒーは僕、缶はゴンザレスで分け合った。

prefab

奇跡は静かだ。

井沢

冥王星は冬の季語になった。

もんぜん

惑星から季語へ。冥王星と言えば『銀河鉄道999』の氷の下に人々が眠る墓場のイメージ。

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続いては規定部門。今回のテーマは『かっこいい』でした。かっこいいとは、こういうことさ(いや、違う)

書き出し規定部門・モチーフ『かっこいい』

時空を超えて、魔方陣の上で呪文を唱える俺の目には眼帯。かっけえ。

パチリパンダ

下からの風、翻るマント。コンパスみてえな足。

イーグルパットのカップインを背中で聴く。

人馬一体勘

指なしの革手袋、サイドカー、背後では地面が爆発している。

葱山紫蘇子

ハシビロコウが闇の中で目を光らせた。嵐が近い。降り始めの雨の中でも微動だにしない黒い影。

シロクマくん

じっとしてられるかどうか、結局かっこよさはとそこかもしれない。

見せてやるよ、足軽の意地ってやつを。

いずも

鐘が鳴った。もうお前は戻れない。

一色凛夏

狼煙、パープル。

寂寥

狼煙って字がもう……

ドラゴンを描いたステンドグラスが、尼僧の白い背中を染めている。

昼行灯

過剰にかっこいい描写はなんか笑える。

南を向く男の整った目鼻立ちが射し込む西日で強調される。

ろっさん

煮物に味が染みるまでの時間で世界を救ってきてしまった母は、やはりたくましいと思う。

遥夏

大切な友人を亡くした。その話をした時の君の顔を、ずっと、ずっと、覚えている。ありがとう。

桃とペンギン

豪雨に打たれながら職務を全うする、警備員。

八王寺義昭

白いワンピース。煙草缶から取り出したCherry。

午前0時

着ぐるみの中はもっとかっこいいんだぜ。

吉田髑髏

父が外したゴミ箱へのシュートを、母がリバウンドした。

ぴすとる

我が家の夫婦喧嘩は、母のサソリ固めで幕を閉じる。

ベル

店長はいつも、おにぎりの在庫を残弾と言った。

タクタクさん

パイオニアがあっさりと「今の連中の方が上」と言う。

モリダイ

でも内心はすげえ嫉妬してる。それはそれでかっこいいと思う。

何でも投げるが、全て入る。

タカタカコッタ

「一族の恥がくたばったぜ」喪主を務める少女が挨拶を始めた。

ベランダ

女子高生組長的な、おもしろい話になりそう。

冷蔵庫に貼ってあるマグネットが一気に落ちた。

ウチボリ

水道屋のヤツも。

紅葉のレッドカーペットを裸で歩く。

オメガ

ベルトコンベアーから流れてくる知恵の輪を瞬時に解いていく。

モリダイ

同情は借金だと思っていた。

ミミズグチュグチュ

同情すら仇とする。かっこいい。

側から見たら訳が分からないであろうコマンドを、キーボードを全く見ずにつらつらと入力しちゃう俺。

花惑

部下からの相談に尿意を我慢しながら耳を傾ける自分が窓に映る。

g-udon

冷蔵庫の麦茶ポットにはバーボンが冷えている。

ゆうちゃん

マネークリップを買ったが、挟むものがない。

南極行太郎

点数は25点だったが、98点のような顔で歩く。

七寒六温

あと75点なのに、2点っぽい顔(笑)

 それでは次回のモチーフを発表します。

次回モチーフ
『椅子』

椅子ほどある意味、人間に似た器物はないかもしれない。機能面では人を支え、場所を確保し、休息を与える。比喩としては権力や立場を表し、密室の椅子はトリックとしても、エロティックは道具にも使える。モノボケとしてこんなに多様な意味を持つモチーフもないのではないだろうか。椅子、もしくは椅子のある風景からはじまる物語を募集します。

締め切りは11月12日、発表は14日を予定しています。下記の投稿フォームよりご応募ください。力作待ってます!

最終選考通過者

鰹だし香る お皿が乾くの3時間  タカトウリョウ  日々愚痴の一応 たこフェリー morin もろみじょうゆ とこところ 週末餃子職人 いそうろう にら将軍ハルナ ウウタルレロ ぽるか 節度亜図夢 高橋きよてん 坂上田村麻呂の従兄弟 眉村 恥目 オーハタ 稲荷 八重花惑 とこところ

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