「与党内野党」の役割担う公明党 – WEB第三文明

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前回の衆院選をふりかえる

4年ぶりの衆議院選挙である。この4年間の各党のあり方をどう評価するのか。同時に、コロナ禍という未曽有の危機のなかにあって、この危機を脱し、傷つき疲弊した日本の社会と経済をどう再生していくのか。それができる政権の枠組みはどこなのか。それらが問われる選挙となる。まず前回、2017年の第48回衆議院選挙からふりかえっておこう。

当時の安倍首相は、ミサイル発射を繰り返す「北朝鮮の脅威」と、世界にも前例のない速さで進む「少子高齢化」の2つの〝国難〟を乗り越えるため、国民の信を問う選挙だと位置づけた。とりわけ、2019年10月に予定されていた消費税率引き上げにともなう税収増の使途を変更し、「幼児教育の無償化」と「高等教育の負担軽減」を実現して全世代型の社会保障制度を実現させるとした。連立を組む公明党は、主な公約として「教育負担の軽減」と、消費税率引き上げの逆進性を緩和するため「軽減税率」の導入を強く主張した。

公約を実現した政権与党

この4年間で、幼児教育から高等教育まで無償化は大きく進み、家庭の経済状況にかかわらず子どもたちが希望する教育を受けられる環境は格段に向上した。超党派の若者団体「日本若者協議会」の代表理事・室橋祐貴氏は、この4年間の自民党の評価すべき点として、

現役世代の負担を軽減する政策を実行してきたところです。
自民党はこれまで高齢者向けの政策を中心にやってきましたが、政権交代後、特に2015年ごろから若者をターゲットにした政策が多くなってきました。
高等教育と幼児教育の無償化もそうですし、待機児童数の削減にも力を入れてきました。働き方改革も現役世代を重視した政策です。(「withnews」10月18日

と述べている。また、公明党については、

給付型奨学金と大学の無償化をずっと訴えてきたのが公明党なので、実現したものばかりではないでしょうか。(同)

公明党は福祉政党を掲げて、大学無償化、幼児教育の無償化、私立高校の無償化などの議論をリードしてきているので、負担軽減に関するところが高く評価できます。最近ではコロナ禍で若手研究者に追加支援を進めました。(同)

と公約を実現してきた姿勢を高く評価した。

「満場一致の拍手」で了承

前回の衆議院選では、解散と同時に野党第一党だった民進党が崩壊するという異例の出来事が起きた。民主党から党名変更していた民進党は、9月1日の代表選で前原誠司氏を新代表に選出したばかりだった。だが、解散直前の9月25日に小池百合子・東京都知事が国政政党「希望の党」を結党。政策について小池氏は9月27日に出演したテレビ番組で、「憲法改正」と「リアルな安全保障」を明言した。

支持率の低迷にあえいでいた民進党は、水面下で「希望の党」との合流を協議。28日の常任幹事会で、①民進党の公認内定は取り消す、②民進党の立候補予定者は希望の党に公認申請する、③民進党は候補者を擁立せず希望の党を全力で支援する、と決定。同日午後の両院議員総会では、この「希望の党」への合流について、

特に強い異論や反対意見はなく、満場一致の拍手で提案が了承された。(「ロイター」2017年9月28日

前日までは日本共産党と一緒になって「改憲阻止」「安保法制反対」と訴えていた民進党議員たちは、〝満場一致の拍手〟で「憲法改正」「リアルな安全保障」を掲げる政党への合流を決定したのだ。ところが翌29日に小池都知事は、民進党の左派系の議員については「排除します」と宣言。「希望の党」入りの甘い夢を断ち切られた議員たちが急ごしらえで結党したのが立憲民主党なのだ。その後、結局「希望の党」は伸び悩んで空中分解。選挙目当てに「希望の党」に乗り移った者たちと、そこから排除された者たちは、根深い対立を続けた。

ついに共産党との一体化

忘れてならないのは、4年前の9月28日の民進党両院議員総会で、「憲法改正」「平和安全法制容認」の政党への合流を〝満場一致の拍手〟で了承していたことだ。そのなかには、枝野幸男氏はじめ立憲民主党の主要な議員たちも含まれている。自分たちの選挙の旗色が悪くなると、一夜にして政策も理念もかなぐり捨てる。そして、また旗色が悪くなると、なにごともなかったかのように主張を180度変える。政権交代を叫びながら地道に地方組織を育てることもしない。支持率の低迷が続くと、ついに今度は日本共産党との「閣外協力」を明言するに至った。

 議席数によっては、政権交代後、内閣が法案を提出した際、共産党が法案の成否の主導権を握ることになりかねない。閣内に入らないから影響力が小さいなどとは到底言えないはずだ。(『読売新聞』10月18日付「社説」

この4年間の彼らの経緯をたどると、あまりにも節操がなさ過ぎて言葉が出ない。本来なら、民主主義が健全に機能するためには、いつでも政権選択の受け皿になり得る強力な野党があった方がいい。民主党政権時代、野に下った自民党と公明党はその役割に徹して政権を奪還した。しかし、今の野党がやってきたことは内部抗争の繰り返しであり、ひたすら政権の逆張りとしての先鋭化だった。行き着いた先が共産党との一体化である。

日本の政治が世界的に見ても例外的に長期に安定し、このコロナ禍をなんとか乗り切ってこられたのには、自民党単独政権でなく、公明党が「与党内野党」の役割を担ってきたことが大きい。未曽有の危機から日本を再生していく第一歩となる選挙。自公連立政権の継続を認めたうえで、より国民目線に立った政治を要求するのか、立民・共産の政権に日本を渡すのか。冷静な判断を下したい。

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