iPhone 13シリーズに搭載されるSoC「A15 Bionic」の性能を示すベンチマークテストの結果が公表される

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2021年9月24日に登場したiPhone 13シリーズには、Apple製のSoCであるA15 Bionicチップが搭載されています。ハードウェア関連のニュースサイトであるAnandTechがA15のパフォーマンスレビューの結果を公表しました。

The Apple A15 SoC Performance Review: Faster & More Efficient
https://www.anandtech.com/show/16983/the-apple-a15-soc-performance-review-faster-more-efficient

A15は高性能CPUコア2つと高効率CPUコアが4つ、GPUがiPhone 13/13 miniでは4コア、iPhone 13 Pro/13 Pro Maxでは5コア、さらに16コアの高速なニューラルエンジンが搭載されています。AppleはCPUのパフォーマンスについて「競合他社のものより50%高速化した」と、GPUについても「4コアGPUのA15は競合他社のものよりも30%、5コアGPUのA15は50%高速化した」という曖昧な表現でアピールしていました。

◆CPUコアの動作周波数
AnandTechによれば、A15は、前世代のA14と比較して高性能コアのシングルコアのピーク周波数が8%向上したとのこと。A14では2998MHzだったのが、A15では3240MHzに達しました。また、高性能コア2つが動作しているときのピーク周波数はA14では2890MHzだったのに対してA15では3180MHzとなり、10%上昇しました。また、A15の高効率コアはA14のものと比較して10.5%増の2016MHzにまでクロックアップできるようになったとのこと。


A14はTSMCの「N5」ノードを、A15はTSMCの「N5P」ノードを採用しているといわれていますが、どちらも詳しい設計は明らかになっていません。TSMCは「N5PはN5と比べて動作周波数が約5%向上する」としていますが、Appleがプロセスノードだけではなく設計でも向上を図ったとすれば、A15の消費電力はA14よりも増加することになるとAnandTechは指摘しています。

◆キャッシュメモリ
Appleは「A15はA14と比較してキャッシュメモリが2倍になった」ことを明らかにしており、A14のSLCキャッシュはA13と同じく16MBでしたが、A15では倍の32MBに増加しました。さらにAnandTechは、高性能コアのL2キャッシュもA14では8MBだったのが、A15ではApple M1と同じ12MBに増加していると指摘。加えて、高効率コアのL2 TLBを2048エントリに増やしたことで、DRAMアクセスのレイテンシがA14よりも低くなったとのこと。

◆CPUコアの電力効率
整数演算と浮動小数点演算を行うSPECint2017のスコア(縦軸)と消費エネルギー(ジュール、横軸)をまとめたバブルチャートが以下。高性能コア(A15 P)はA14のものと比べてわずかに消費エネルギーが減ってスコアも向上。高効率コア(A15 E)は消費エネルギーが変わらずスコアが向上しており、全体的にエネルギー効率が上がっていることがわかります。


◆GPUベンチマーク
iPhone 13/13 miniには、A14搭載のiPhone 12シリーズと同様に4コアのGPUが搭載されています。しかし、iPhone13 Pro/13 Pro MaxにはGPUコア5つが搭載されたA15が採用されています。

3DMark Wild Lifeを使ったベンチマークテストの結果が以下。5コアGPUのiPhone13 Proは前世代から約30%、4コアGPUのiPhone 13は前世代から14%のスコア向上をみせています。


Basemark GPUでのベンチマークテストでは、iPhone 13 ProはiPhone 12 Proよりもスコアが28%向上しており、iPhone 13は13 Proよりも少し低い程度。


GFXBenchによるテスト結果(Aztec Ruins・High Tier)はこんな感じ。iPhone 13 Proは12 Proよりもスコアが46%向上。iPhone 13は19%のスコア向上を記録しています。


上記の表をパフォーマンス(fps)を縦軸、電力(W)を横軸にしたバブルチャートにまとめたものが以下。AnandTechはGFX Benchを3種類のモードで走らせてスコアを計測していますが、いずれの結果においても「A15のピーク性能は大幅に向上している一方で、A14と比べると消費電力がわずかに改善されているので、効率は大きく向上している」と論じています。


なお、AnandTechはSoCのベンチマークがユーザーエクスペリエンスに直結するとは限らないとしており、「実際のゲームプレイをSoCのベンチマークテストの結果として公開することに抵抗を覚える」と述べています。

例えば、以下はSnapdragon 888搭載のGalaxy S21 Ultra(上)とSnapdragon 888搭載のMi 11 Ultra(下)で「原神」をプレイしているところ。Galaxy S21 UltraとMi 11 Ultraは同じSoCを搭載していますが、Galaxy S21 Ultraは約3.5Wの電力消費を維持するのに対して、Mi 11 Ultraは5~6Wの電力を消費し、スマートフォン本体もかなり熱を持つとのこと。また、Galaxy S21 Ultraはパフォーマンスに応じて解像度を動的に調整する機能を搭載しており、同じゲーム設定にしているにもかかわらず、Mi 11 Ultraよりも解像度が低く見えてしまうこともあったそうです。


そして、A15搭載のiPhone 13 Pro Maxで「原神」をプレイしているところが以下の画像。AnandTechは「AndroidとiPhoneの比較はさらに複雑で、同じゲーム設定でもiPhoneの方がわずかに解像度が高く、Android版にはない視覚効果がある」と述べ、実際にゲームをプレイした上でのエクスペリエンスはベンチマーク結果と直結しないと論じています。


AnandTechは「今回の調査で示されたものはiPhone 13シリーズが持つ性能の氷山の一角に過ぎません。しかし、新しいA15が何を実現しているのか、パフォーマンス面で何が期待できるのかを垣間見ることができます」とコメント。A15のCPUについては純粋な性能よりも電力効率を重視する方向にシフトしており、A15のGPUについても性能と効率の両方が改善され、A15は目を見張るような高パフォーマンスを見せるようなSoCではないものの、A14に比べて格段に優れたSoCに進化したとAnandTechは評価しています。

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