かっぱ寿司騒動は米式DXで防げた – 後藤文俊

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■回転すしチェーンのかっぱ寿司は26日、この日限定で実施した「全皿半額キャンペーン」で混乱を招いたことを謝罪した。

同社初となる「全皿半額」は事前に「大変混雑が予想され、お寿司の提供が遅れたり、入店制限させていただく場合がございます」などとしていたが、キャンペーン当日が日曜日ということで混雑は想定以上になってしまった。

全国の店舗で長蛇の列ができ、入店するまでの待ち時間が10時間以上と表示されたり、駐車台数が不足し近隣に交通渋滞が発生する事態も招いたのだ。

入店できなかった人向けに一部店舗で配布された半額クーポン「いつでもどこでも50%オフ」(10月末まで有効)がメルカリなどフリマサイトで転売される騒ぎにもなった。

しかも転売して儲けたお金で、顧客が競合店のスシローやくら寿司に流れるというオチまでついているのだ。

全皿半額キャンペーンを「かっぱ寿司の歴史のなかでも前代未聞の挑戦」としていたものの、前代未聞の事態になってしまったようだ。

多くのメディアが取り上げたことでバズ・マーケティングとしては成功したが、リピート客を増やす施策にはなっていない。

むしろ前近代的なマーケティングであり、DXで防げたはずの問題を単に露呈するだけとなった。

では、アメリカではこういった半額キャンペーンをどのようにおこなうのだろうか?

 DXが進む米国では不特定多数に向けた値引きキャンペーンはむしろ少なくなってきている。アプリを使うことでキャンペーン対象者を絞れるからだ。

外食業界の巨人であるマクドナルドは6月、ポイント還元ロイヤリティ・プログラム「マイマクドナルド・リワード(MyMcDonald’s Rewards)」を開始した。

顧客はマクドナルドの専用アプリを介してマイマクドナルド・リワードに加入し、支払金額に応じたポイントを貯めていくと還元額に応じて商品が無料となるのだ。

ポイントを使った顧客の囲い込みだけでなく、ドライブスルーやレジ客も専用アプリを利用していくことになり同社のアプリ利用の促進になる。

マイマクドナルド・リワードはお客が1ドル支払う毎に100ポイントが加算される。ポイントを使った還元商品は4つの層に分けられており、全部で16種類のメニューとなる。

最初に1,500ポイント以上貯まるとハッシュポテト、ソフトクリーム、チーズバーガー、チキンバーガーの4種に無料交換できる。

なおプログラム加入直後では、支払い金額に関わらず自動的に1,500ポイント加算されるため、これらの商品は使用初回目で無料となる。

3,000ポイント以上ではマックフライポテトMサイズ、ソーセージブリトーなどが無料還元となる。4,500ポイントを超えるとフィレオフィッシュ、マックフライポテトLサイズ等が無料。

6,000ポイント以上になると、ビッグマックやクォーターパウンダー、ハッピーセット、ベーコンエッグ・チーズビスケットの4種類から交換できるのだ。

マイマクドナルド・リワードの利用の仕方は、マクドナルド・アプリから注文するモバイル・オーダー&ペイで自動的に金額が貯まる。

店内レジやセルフオーダー端末、ドライブスルーでもアプリを起動しQRコードを表示させて読み込ませるとポイントが貯まるようになっている。

47州に2,500店以上を展開するチックフィレでは1ドル支払い毎に10ポイントが加算されるポイントプログラムを行っている。

リワード商品は150ポイントでチョコレートクッキーやソフトクリーム等のデザートが無料となり、1,500ポイントではスパイシー・サウスウエスト・サラダの食事まで無料となる。

また獲得ポイントに応じて「レギュラー会員(Chick-fil-A One)」「シルバー会員(Chick-fil-A One Silver)」「レッド会員(Chick-fil-A One Red)」と3種類のランクに分けている。

1,000ポイントでシルバー会員になれ、レッド会員は5,000ポイント以上となっている。

また1ドル毎にレギュラー会員は10ポイント、シルバー会員は11ポイント、レッド会員は12ポイントと、ランクが上がるごとにポイントが貯まるスピードが早くなる。

これをかっぱ寿司の全皿半額キャンペーンで応用する場合、かっぱ寿司アプリをダウンロードし会員登録した顧客を対象に行えばいいのだ。

大胆な値引きにより、固定化しない浮動客を一気に集めても意味はない。固定客として囲い込みしやすいようアプリのダウンロードと会員登録を条件にしておくのだ。

また後日来店すると半額になる、お詫び目的のクーポンもペーパークーポンなら転売や偽造の問題を招いてしまう。これもアプリを介してクーポンを発行する。

アメリカの外食チェーンではアプリを使って競合店対策となるリベンジ・マーケティングの事例もある。

バーガーキングでは以前、GPSのジオフェンシング機能を使い競合のマクドナルドの店舗からモバイル注文するとハンバーガー1個が無料となるキャンペーンを行っていたのだ。

 価値提供には対象を絞ることが欠かせない。店アプリをダウンロードし使う頻度の高い顧客が価値を感じるようにマーケティングしなければならない。

新規客の獲得でも、ある程度の敷居を設けないと一見客ばかり来て、見込み客離れが起きてしまう。

飲食店チェーンもアメリカのDX事例を倣い、自社を愛してくれるお客様を大切にするキャンペーンをまずは行うのだ。

トップ画像:チックフィレのリワードポイント。1ドル支払い毎に10ポイントが加算されるプログラムだ。獲得ポイントに応じて「レギュラー会員(Chick-fil-A One)」「シルバー会員(Chick-fil-A One Silver)」「レッド会員(Chick-fil-A One Red)」と3種類のランクに分けている。ランクが上がるとポイントが貯まるスピードも早くなる仕組みだ。こういったアプリ施策を応用し、かっぱ寿司を本当に愛してくれるお客様に全皿半額キャンペーンを行うべきなのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。かっぱ寿司の騒動を聞いた後、かっぱ寿司アプリの専用サイトを確認してみたら合点がいきました。日本人にありがちな間違いを犯しているのです。かっぱ寿司の経営幹部らは、アプリをクーポンや値引きをつかう集客ツールだと勘違いしています。値引きは価値ではありません。外食チェーンの最大の価値は料理です。これが生かされていない。さらにストアアプリはお店とお客をつなぐコミュニケーションツールということがわかっていません。お客が店を利用するためのマネジメントツールにもなっていないのです。かっぱ寿司アプリのスクリーンショットみると文字ばっか。アプリのランディングページ・トップが、かっぱ寿司の文字が入った暖簾...外食店アプリを使って利用者の脳みそに残したいのは料理です。美味そうで人気の寿司の画像が一つもありません。店舗検索ページでも地図がないから、パッと見てなんのページかわかりません。使い勝手は利用者の一瞬の判断なのです。アプリ=値引きだからUIにまったく工夫ができないのです。
 なおアメリカの飲食チェーン店のアプリは、客単価を上げるために様々な施策を行っています。ちなみに半額キャンペーンのような値引きで客単価を下げるアプリ事例はありません。経営幹部は米国の最先端DXやマーケティング事例をもっと勉強すべきです。

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