「不覚だ……」
これまで、数々の大手カード会社や民間サービスを騙(かた)るフィッシング詐欺の潜入し、その防止策をお伝えしてきた自称「ネット詐欺撲滅隊長」の私(耕平)だが、この度とうとうヤラかしてしまった。
そう、ネットで初めて個人情報を抜かれてしまったのである。しかも今回はフィッシング詐欺ではなく、ECサイトを装った詐欺サイトだ。
幸いにして金銭を騙し取られる一歩手前で気づくことができたが、私のような被害者を出さないため、ニセ通販サイト詐欺の一部始終と防止策をお伝えしたいと思う。
・激安ECサイト
この詐欺に遭ってしまったきっかけは、部屋の模様替えを考えていて、新しい家具を探していた時だった。
その際に「ダイニングチェア」を買い換えようと思いネットで探していたところ、『JENNY』というメーカーのダイニングチェアーがオシャレ感満載で「これを買おう!」と一発決断。ちなみに価格は20000円くらいだった。
そこから「JENNY ダイニングチェアー」というキーワードを検索して、なるべく安いネットショップを探していたところ、ふと、あるページが目に止まった。
さっそくクリックしてみると……
激安やん。
ショップ名は「●屋モール」という聞いたことのないサイトだが、税込でも10000円切る安さ。事前に大手サイトでも調べたが、ここまでの割引は無かった。
そしてショップの情報を見る限り、特に怪しい感じは見受けられない。
その他の箇所を見ても、やはり普通のECサイトである。
ということで、購入手続きを進める。
フォームに個人情報を全て入力すると……
金額が表示される。ここまで気がつかなかったが、配送料無料なのね。ラッキー!
決済ボタンを押して、一通り、必要な手続きが完了……
???
なぜか右上に自分の名前が表示されるという、初めて見るパターンにちょっとした違和感を覚えたが、ログインしている状態で表示されるものと思って さほど気にはならなかった。
・購入後のメールの違和感
通常のサイトなら、ここで支払い手続きのためのクレジットカード情報の入力フォームに移動するパターンが多いのだが、なぜか今回の購入手続きはここで終了してしまった。
その後、購入完了メールが届く。
「●●フードビジネス株式会社にようこそ」???
「食品業者が副業的な事業部を立ち上げて運営してるのかな?」と、ちょっとした疑問が頭に残った。そして、このショップの店長名「高野 ●朗」という名前らしい。
その後、件名が「※重要※【銀行振り込みの件】【先払いです※】」という、銀行振込の案内メールが届く。
差出人は「加藤 ●也」という名前で、その前に届いた「●●フードビジネス株式会社にようこそ」という件名のメールに記載されていた、「高野 ●朗」とは別人らしい。
まぁ、この「加藤 ●也」はショップ担当の従業員かも? と思いつつも、メールの振込先の名義人を見てみると……
どういうこと???
「●屋モール」でも「高野 ●朗」でも「加藤 ●也」でも無い。しかも「カンカナム マナゲ ウダヤ トウシツツ クマラ」という、メチャクチャ長いうえに、国籍すら全く検討がつかない名前。
ここに来て、先程までのグレーだった疑いが、限りなくクロに近いグレーに変わった。
いや、問題はそもそもクレジットカードで決済したいのだが、なぜ銀行振込限定で案内してくるのかだ。そこで私は、クレジットカードで決済したい旨を返信した。
しかし、返ってきた返事は……
「恐れ入りますが、クレジットカードは5000円以内の商品のみご利用いただけます。」
なるほど。そうなんだ……じゃねぇぇぇ!!! サイトの支払い方法なども全て見直してたが、そんなことは一言も書いてない。
そこでさらに畳み掛けるべく、何とかクレジットカードの支払いができないかをメールしてみた。
しかしその後、返信が来ることはなかった。
・運営会社がなりすまし
それから、この「●屋モール」が本当に詐欺なのかどうかを検証すべく、店名でググってみたところ……
これは詐欺サイト確定か? そして消費者庁のインターネット通販トラブルのページを見ても、「極端に値引きされている」「銀行振込しか決済方法がない」など、詐欺サイトの特徴に当てはまっている。
実際、サイトを確認したところ、全商品が異常に値引きされている。
そして運営会社(?)となる「●●フードビジネス株式会社」いう会社は、検索したところ本当に実在したが、所在地や電話番号が全く異なっていたので、おそらく名前を使われただけだと予想される。
ちなみに、この記事の執筆時現在は「株式会社●●パール紙工」という会社に運営会社が変わっていた。
こちらも本当に実在している会社の名前だったが、前述同様、所在地や電話番号が異なるので、もしかしたら一定期間経つと自動に変わるような仕組みなのかもしれない。
ともあれ、これだけの不可解なことが積み重なっているのであれば、ほぼ現金を振り込んだら、そのまま商品が送られてこないといった詐欺サイトで確定だろう。
・被害に遭わないために
今回は幸いにして金額的な被害はギリギリのところで逃れることはできたものの、不覚にも登録した時点で個人情報を抜かれてしまった。
当初はクレジットカードで支払う予定だったので、登録フォームがあれば迷わず登録していたことを考えると、相当恐ろしい事態に発展した可能性が高いくらい、このECサイトを装う詐欺は巧妙だ。
しかも、見知らぬ発信元からメールが送られてくる比較的わかりやすいフィッシング詐欺とは違い、検索エンジンの表示結果の中に自然に紛れ込んでいるので、サイトの作りも違和感が無ければ、警戒心も薄れて自然に個人情報を打ち込んでしまう心理に陥ってしまうだろう。
そこで、このECサイトを装う詐欺を判断する材料は、以下の2つだ。
・サイトのTOPページに飛んで、表示されている全商品が半額以上の割引になっているか?
・会社概要で運営会社の名前に違和感がないか? また実在している会社でも、社名をググって住所などが異なっていないか?
今回の「●屋モール」の他に怪しい詐欺サイトと思われるものを数件調査したところ、この2つが共通していたので、今のところ見分ける手段としては現実的だろう。
その他にも「支払いが銀行振込しかない」や「銀行振込先と店名、もしくは代表者名が一致しない」などの見破る材料もあるが、サイト自体にはカード決済などはOKと出ていて、購入手続き後に発覚したため、個人情報を抜かれたあとで気づくことなので、参考程度に留めておいてほしい。
──以上が、私が体験したECサイトを装う詐欺の一部始終だ。この記事が被害防止の一助になれば幸いである。
参考リンク:消費者庁「インターネット通販トラブル」
Report:耕平
Photo:RocketNews24.