夫の得意な「皿洗い」妻は不満? – ふかぼりメメント

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9月19日は、育休を考える日です。由来は9月19日の9と19を入れ替えて「いく(19)きゅう(9)」(育休)と読む語呂合わせから、2019年に大手総合住宅メーカーの積水ハウスが制定しました。

育児休業法は30年前の1991年に成立しました。今年6月に関連する法律が改正され子どもの出生後8週間以内に4週間までの育休が取れるようになるなど、国をあげて育休取得を推奨しています。育休を取る男性も増えており、2020年度育休取得率は前年度の7.48%から増え12.65%になり「男性の家庭進出」も進んでいます。

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男性の「得意な家事・育児」女性目線では疑問も

一方、男性の育休取得促進に向けた課題はまだ多く残っています。そのひとつに女性から男性育休に関する否定的な声もあるようです。保育サービスを手掛ける認定NPO法人フローレンスの代表室長・前田晃平さんは、「女性からは『夫がいると育児の邪魔なので男性育休は取らなくてもいい』という悲しい声も寄せられることがあります」と話します。

今回、積水ハウスが全国47都道府県の小学生以下の子どもがいる20代〜50代の男女9400人に調査を行った「男性育休白書2021」でも、家事・育児に関する意識に対し男女間でギャップがあることが浮かび上がりました。

以下のグラフは、「得意だと思っている家事・育児」について、男性自身が得意だと自負している家事育児と、女性からみたパートナーの男性が得意な家事育児の差を表したものです。

BLOGOS編集部

たとえば子どもと遊んだりお風呂に入れたりすることに関しては男女で意識の差はほぼ見られませんでしたが、洗い物や掃除などの家事については大きく差が出る結果となりました。

具体的には「食事後の片付け・洗い物」に関しては、男性の30.8%が得意だと思っているのに対し、女性は15.2%。また「部屋の掃除」は男性の24.7%に対し女性は11.6%など倍以上の差があり、男性が「やっているつもり」でも、女性からすると「認めていない」という意識のギャップが生じています。

BLOGOS編集部

男性の育児参加には“オープニングスタッフ”の意識が必要か

自身も育休を2ヶ月取得し、『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』の著者でもある前田さんにこの理由について詳しく話を聞きました。

こうした「育児をやっているつもりの男性」と「認めていない女性」の男女間のギャップが生まれる理由について、前田さんは「女性の中で育児に対する世界観が出来上がってしまっており、そこに男性が入ってくると『壊された、邪魔をされたと感じてしまう』ことがある」と指摘します。

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「私は育児の始めを『オープニングスタッフ』と例えています。飲食店やカフェのオープニングスタッフは、効率的に顧客に接客できるようにお皿の位置や、誰がどのタイミングでお皿を洗うのか、お客様に声をかけるのは誰がやるのか、など全体最適の中でいろんな方法を決めていきます。それは、スタッフたちが試行錯誤し、話し合いながらひとつずつ決めていくものなんですね。

私見になりますが、私は家事育児についても同じことが言えると思っています。未曾有の子育てという事態が家庭の中で発生するわけですが、夫が育休を取っていない場合は、妻が子育てを主に切り盛りすることになります。そうすると、妻が産休育休を取っている間に育児や家事を仕組み化し、一通りのエコシステムを家庭の中に作り上げます。

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つまり、妻の中で合理的なロジスティクスが確立されるわけです。そこに、夫がたまの休日に『ちょっと手伝うよ』と言って何かをやろうとすると、妻にとっては組み上げられた合理性から外れたことをされたと感じ、『余計なことをするな!邪魔!』となってしまうんですね。今回の意識のギャップはこうしたことが原因で生まれているのではないかと思います」。

前田さんは、こうした意識のギャップが生まれることを未然に防ぐためにも夫が育休を取り、妻とともに育児・家事の仕組みを作っていくことが有効だと話します。

「また、女性としてもジェンダーロールを意識し『私が育児と家事を主体者となってやらなければいけない』という責任感を強く感じた結果として、パートナーが置き去りのまま仕組みが組み上がってしまうという一面もあります。育休中に話し合いながら決めていくことは、男性・女性の両方にとっても有意義なものだと思います」。

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「妻だから」「夫だから」と決めつけず話し合うことが重要

一方、前田さんは今回のグラフでわかった男女の家事育児への意識の差について、「こうした育児・家事の細かな項目についてのギャップについては、必ずしも埋める必要はないと思っています」とも指摘します。

「もちろん主体性が欠けてしまっているというのは論外ですが、一人暮らしをしていたことのある男性であれば、家事がまったくできないというのはあまり考えられません。このグラフに表れているのは、『妻が想定する手順での』家事を夫ができないということだと思います。

ただ、『妻だから』とか『夫だから』ではなく、その人の個性として苦手なことと得意なことはあり、そこには差ができて当然です。夫婦の協業の中でお互い得意なことをやっていけばいいし、そこで大切なのはパートナーの間で納得しあえることなのではないでしょうか」。

前田さん自身も、妻が育休復帰する前には家事・育児の負担について図式化して話し合ったそうです。その図を紹介するツイートはインターネット上で大きな反響を呼びました。

一方、前田さんは「育児・家事の役割分担については、正解があるわけではありません」と話します。

「我が家は、たまたま共働きで同じくらい働いているので『五分五分じゃないとおかしい』という理屈でしたが、パートナー同士で合意しているのであればその割合が真の意味で適切なのであって、それは夫婦ごとに違うだろうと思います。

また、たとえば賃金に関しても社会構造上、女性の方が賃金が低い傾向にありますし、低い方が育児を多く担うべきだと言い切るのも乱暴だと思います。本当はどうありたいのか、というところまで含めて夫婦でコミュニケーションを取ることが大切です」。

子育ては育児休暇後もずっと続いていくもの

「育休」は長い子育てからするととても短い期間のこと。子育てや家事は育休が明けた後も、ずっと続いていきます。

前田さんは育休の日について「夫婦で本当はどうありたいのかということを考える機会になればいいのでは」と話します。

「夫にしても、今は朝から晩まで働いているけれども本当はもっと家事育児をしたいと思っているかもしれないし、妻も現在はパートタイムで働いているけれどもゆくゆくはフルタイムで働きたいと思っているかもしれません。

夫婦にとってベストな形は何なのか、ということは時とともに移ろうものなので、その年その年でチューニングしていく必要があると思います。お互いのキャリアについて、そして夫婦としてどうありたいのかということについてじっくり話し合うというのは少し気恥ずかしさもありますが、育休の日がそんなふうに改めて問うてみる機会になればいいのではと思います」。

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