相当に食い潰された日本の地力 – 澤上篤人

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つくづく日本経済の地力には感心してしまう。 この31年間ずっと低迷と停滞を続けているというのにだ。

たしかに、日本各地で低所得に喘ぐ人々の置かれた状況はどんどん厳しくなっている。

しかし、国民全体の生活をみるに、まだなんとかなっている。 これが、地力というものなんだろう。

かつてイギリスが英国病とかいわれて苦しんでいた頃、人々の生活がみるみる落ち込んでいったのを見てきた。

その実体験からすると、現在までの日本は信じられないほどの余裕を感じられる。

とはいえ、それほど頑強だった日本経済の地力も、相当に食い潰してきたのは否定できない。

そのひとつが、先に書いたように、低所得層の増加ピッチがじわじわと上がってきている最近の傾向だろう。

非正規雇用が増えたからといった観点を越えて、かなりの数の人々が生活苦に喘いでいる。

コロナ禍で仕事やバイト先を失ったというケースもあるが、それ以外でも生活環境は厳しくなっている。

ということは、そろそろ日本でもかつての英国同様に、急激な生活水準の落ち込みが現実となるのだろうか?

そんな事態など考えたくもないが、このままズルズル堕ちていってしまう可能性は高い。

なぜなら、日本経済が3%とか5%の成長軌道に乗っていく期待は、ほとんど望めないのだから。

どうしたらいい? 毎度の繰り返しとなるが、自助の意思と行動あるのみだ。

自分も頑張って働くが、お金にも長期投資で働いてもらおう。 この両者の働きでもって、生活を守っていく。

日本全体はどうあれ、自分だけは堂々と生活を成り立たせていく。 それが、第1歩である。

第2は、自分の生活がなんとかなったのなら、周りに向けてどんどんお金をつかっていこう。

経済活動はすべて、お金をつかうところから始まる。 生活に余裕ができた人たちから順に、お金を意識してつかう。

芸術・文化・教養やスポーツなどの趣味でも、寄付や社会貢献でもなんでもいい。

つかわれたお金の分だけ雇用が生まれ、多くの人々の生活となっていく。 つまり、経済活動の活発化だ。

この循環が高まっていくことで、日本経済は自律的な成長軌道に乗っていく。

実は、英国や米国経済が立ち直ったのも、サッチャー首相やレーガン大統領の登場があったからだけではない。

動ける人から動きはじめて、そこから生じた余裕をどんどんつかい出した点も見逃せない。

自助自立で生活を成り立たせ、お金は抱え込まずにつかう、それが経済活動の原点である。

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