「同種の幼虫の体液を生きたまま吸う」チョウが確認される、メスを引きつけるフェロモンを作るための栄養補給か

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アメリカ大陸や太平洋諸島などに広く分布するオオカバマダラは、北アメリカでは1年のうちに北上と南下を行う渡りをする習性で知られています。そんなオオカバマダラで「幼虫の体液を生きたまま吸う」という恐ろしい行動が確認され、学術誌の「Ecology」に論文が掲載されました。

Kleptopharmacophagy? Milkweed butterflies scratch and imbibe from Apocynaceae‐feeding caterpillars – Tea – – Ecology – Wiley Online Library
https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecy.3532


Butterflies feed on live young to steal chemicals for ‘wedding gifts’ – Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/butterflies-feed-on-live-young-to-steal-chemicals-for-wedding-gifts

Milkweed butterflies tear open caterpillars and drink them alive | Live Science
https://www.livescience.com/butterflies-drink-their-babies.html

オオカバマダラの幼虫は、有害なアルカロイドを含むトウワタという植物の葉を食べることで体内に毒を蓄積し、天敵である鳥類などに食べられないようにしています。この毒は成虫になっても持続するため、さなぎや成虫は鮮やかな警戒色で外敵に毒を持っていることを知らせています。

また、成虫のオスはアルカロイドを利用してフェロモンを生成しており、作られたフェロモンは交尾の際にメスへ移されます。交尾に必要なフェロモンを生成するため、成虫のオスはトウワタの葉を小さな爪で引っかいて、中から出てきたアルカロイドを含む液を吸うという行動を取るそうです。

ところが2019年12月、シドニー大学生命環境学科の博士課程に在籍するYi-Kai Tea氏らの研究チームは北スラウェシ州のタンココ・バトゥアングス自然保護区で、複数のオオカバマダラが幼虫の体をひっかき、傷からにじみ出る体液を吸っている様子を観察したとのこと。実際に研究チームが撮影した以下の写真を見ると、オオカバマダラの成虫が幼虫を襲っているのがわかります。


また、1匹の幼虫に複数の成虫が群がるケースや……


既に死んでいる幼虫から体液を吸う個体も確認されました。オオカバマダラの成虫は数時間も体液を吸い続ける場合があったほか、研究者が手を触れて気をそらそうとしても、まだ体液を吸い続けていたとのこと。研究チームは一連の行動について、「kleptopharmacophagy(消費するための化学物質の盗難)」と名付けたと述べています。


以前にも、オオカバマダラが別種の死んだ昆虫の体液を吸うことは報告されていましたが、同じ種の幼虫から、それも生きたまま体液を吸うことが確認されたのは今回が初めてです。Tea氏は、「幼虫は本質的に『柔らかくなった葉が詰まった袋』であり、成虫のオオカバマダラが探しているのと同じ化学物質を持っています。成虫にとっては、単にエサとなる化学物質の代替的な供給源なのかもしれません」とコメントしています。

研究チームは、成虫が幼虫の体液を吸う行動が捕食・寄生・共生といった従来のモデルに当てはまらず、進化論に対する疑問を投げかけていると主張。一方で、「オオカバマダラの成虫がたまたま幼虫のいるトウワタの葉に引き寄せられ、偶然爪が幼虫を傷つけたところ、中からアルカロイドを含む体液が出てきたので吸っている」という可能性もあると述べました。

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2021年09月13日 16時00分00秒 in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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