国連は10日、アフガニスタンを掌握した武装勢力タリバンが、反対派に対して「ますます暴力的に対処している」と批判した。最近の抗議活動では、4人が殺害されたという。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は10日付の声明で、タリバンが暴力的にデモを解散させる中で、未成年1人を含む少なくとも4人が殺されたと明らかにした。
OHCHRのラヴィナ・シャムダサニ報道官によると、抗議参加者の数はタリバンが首都カブールを掌握した8月15日以来、増え続けている。しかし、タリバンは9月8日に無許可の集会を禁止。翌9日にはカブールのモバイル・インターネット接続を遮断するよう通信会社に命令した。
シャムダサニ報道官は、「先行きの見えないこの状況で」、タリバンはデモ参加者の声を聞くべきだと強調した。
8月15日にタリバンが首都カブールを制圧して以降、女性の権利の尊重や自由の拡大を求め、アフガニスタン各地で抗議デモが行われている。
国連によると、タリバンはこうした抗議に警棒やむち、実弾などで対応している。
<関連記事>
シャムダサニ報道官はまた、ジャーナリストへの暴力にも言及。「平和的な集会の権利を行使している人や抗議運動を取材しているジャーナリストに対する武力行使と任意拘束を直ちに止めるようタリバンに求める」と述べた。
現地の記者らはBBCに対し、抗議の様子を撮影しようとしたところ、タリバンに拘束されたり殴られたりしたと述べていた。
貧困や飢餓への懸念も
国連の世界食糧計画(WFP)はこの日、アフガニスタンの世帯の93%が、十分な食事ができていないと報告。旱魃(かんばつ)が食料供給に影響を及ぼしており、小麦の生産が40%ほど落ち込んでいると指摘した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、アフガニスタンの全国民が数カ月以内に貧困に陥るのではという、救援部隊の話を伝えた。
また、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、アフガニスタンでは20年にわたって教育、特に女の子の教育環境が進展したが、今後は「世代に影響を与える大惨事」が起こると警告した。
アメリカで9/11の追悼式典
タリバンは8月にアフガン各地に進攻を開始。2週間以内で数々の州都を制圧し、8月15日にはカブールに至った。
カブールの国際空港ではアメリカが退避支援作戦を主導し、12万人以上が8月31日までに出国した。
タリバンの権力掌握により、アメリカの20年にわたる駐留が終わった。アメリカをはじめとする連合部隊は、2001年9月11日に米世界貿易センタービルや国防総省を襲ったハイジャック攻撃を受けて、アフガニスタンに侵攻した。
タリバンは今週、暫定政府を発表した。未確認の報道によると、タリバンは11日に新政権の就任宣誓式を行う予定。
アメリカではこの日、9/11攻撃の20周年の追悼式典が行われる。
20年前の攻撃では、当日だけで3000人近くが亡くなった。攻撃を計画したイスラム原理主義の過激派組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者(2011年5月、米軍が殺害)は当時、アフガニスタンでタリバンの保護を受けていた。
ジョー・バイデン米大統領は当初、9月11日をアフガニスタンからの撤退期限としていたが、タリバンが急進撃が続いたため、駐留部隊の撤退を早めた経緯がある。