自民党総裁選、誰が勝利するか?

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9月3日、菅義偉首相は、自民党総裁選挙に出馬しないことを電撃的に表明した。これによって、後継者レースが俄かに活発化し、名乗りをあげる政治家が出てきた。それ以前に名乗りをあげていた人としては、岸田文雄元外相、元総務大臣の高市早苗氏がいるが、菅首相辞任表明を受けて、河野太郎ワクチン担当大臣も出馬の意向を固めたという。石破茂元幹事長も出馬するかと思われたが、不出馬で調整中という(9月6日午後報道)。野田聖子氏も出馬したいようだが、20名の議員の推薦人を確保できるかさえ疑問視されているので、出馬できる可能性は低そうだ。小泉進次郎環境大臣も出馬するとの話もあるが、経験値等含めて、まだ早いように思うし、今回はまだ出ないように私は感じる。次の次くらいを狙うのが、ちょうど良いのではないか。

そうした事を考えると、総裁選は、岸田氏、高市氏、河野氏の3人で戦われる可能性が高い。では、この3人のなかで、誰が勝利するだろうか?政界は一瞬先は闇なので予想は極めて難しいが、検討してみたい。総裁選挙の投票には、党所属の国会議員による投票(議員投票)と、全国の自民党員などによる投票(党員投票)がある。9月4・5日に共同通信社が実施した世論調査(次の首相に誰がふさわしいか)によると河野氏が31.9%でトップ、石破氏26.6%、岸田氏18.8%、高市氏4.0%だったという。世論調査された人々と党員の想いはまた別の可能性もあるが、大体は重なっているのではないかと思う。

そうした事を考えた時、党員票は河野氏に多く入ることになろう。ちなみに、党員投票は、計300票を基礎票(各県3票、計141票)と配当票(159票を選挙人数に応じて最大余剰方式で配分)に分け、それぞれを各都道府県に分配する形となる。党員投票から見たら、河野氏が有利だが、総裁はそれだけで決まるものではない。議員投票も重要な役割を果たす。議員投票に大きな影響を与えるのが、派閥である。

岸田氏の派閥は宏池会、名門だ。構成は、衆議院議員34名、参議院議員12名、計46名。一方、河野氏が属する派閥は、志公会(麻生派)、衆議院議員43名、参議院議員13名、計56名。石破氏の派閥は、自身が創設した水月会で、構成は衆議院議員15名、参議院議員1名、計16名。高市氏は無派閥であるが、安倍晋三元首相が支援を表明している。安倍氏が属する派閥は、清和政策研究会(細田派)だ。その構成は、衆議院議員61名、参議院議員35名、計96名だ。

これまで、派閥の構成人数を書き連ねてきたが、派閥に属する全ての議員が、同じ派閥の候補者に投票するというわけではない。「裏切り者」は必ずいるわけだ。高市氏の場合は、安倍元首相が支援したとしても無派閥であるので、議員票がどこまで多く伸ばせるか覚束ない。高市氏は女性議員のなかでは、主張もはっきりしているし、堂々としているので期待は持てるのだが、派閥の論理等を考えると今回は当選は難しいと思う。石破氏は河野氏を支援する方向とのことなので、同氏の派閥に属する議員は河野氏に投票する可能性が高い。

以上のことを踏まえると、岸田氏と河野氏が競り合う形になるのであろうが、党員票はこの2人にも少なくない数が配分されるであろう。派閥の数から考えると、河野氏が優勢ということになる(また、菅首相も河野氏を支援するという)。党員票も議員票も河野氏が多く獲得できるであろう。そうしたことから、私は今回の総裁選は、河野太郎氏が勝利すると予想する。

しかし、私は河野氏を高く評価はしていない。ツイッターで気に入らない人はすぐにブロックする偏狭さ、官僚を怒鳴りあげるパワハラ気質、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の唐突な停止表明から見える根回し不足・調整力の無さ、どちらかと言えば、女系天皇容認論というところが私が河野氏を不安に思う要因である。もちろん「君子は豹変す」で、河野氏は自らの欠点と思うところは改め、良いほうに変わってくれたらと願わずにはいられない。

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