YouTubeがDaiGoを垢BANしない謎 – 渡邉裕二

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自身の発信する動画サイトでの無神経な発言がになったメンタリストDaiGo。生活困窮者に対しての〝差別的発言問題〟が各方面に波紋を巻き起こしている。

「ホームレスの命なんてどうでもいい」

問題視されているのは8月7日に公開された、YouTubeでの非常識とも言える差別的な発言だった。

「僕は生活保護の人にお金を払うために税金を納めているんじゃないからね。生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救って欲しいと僕は思うんで」

「猫が道端で伸びていたら可愛いもんだけど、ホームレスのおっさんが伸びていたら『何でコイツが我が物顔で段ボール敷いて寝てんだろうな』って」

「自分にとって必要のない命は軽いんで。ホームレスの命なんてどうでもいい」

さらには、

「いない方がいいじゃん。猫はでも可愛いじゃん。犯罪者殺すのだって同じですよ。群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きているんですよ。犯罪者が社会にいるのは問題だし、皆んなに害があるでしょ。だから殺すんですよ。同じです」

などと平然とした表情で持論を繰り返した。

人の命と猫の命を天秤にかけた、前代未聞の差別的発言に対してネットは大炎上。DaiGoには批判が相次いだ。そこでDaiGoも謝罪するかと思いきや、何と8月12日の深夜に更新したYouTubeの中で今度は開き直り、

「個人の感想に間違いもクソもない、はるかに税金を払っているので(生活保護の人やホームレスなどは)僕の方が助けている」

などと、まるで批判の声を挑発するかのような一言が飛び出した。

過激発言は再生回数狙いの炎上商法だったか

もはや、ここまで発言がエスカレートしてくると常軌を逸しているとしか言いようがない。さる芸能関係者はDaiGoについて「彼はメンタリストという肩書きで活動していますが、今やユーチューバーが本業のようなもの」とした上で、今回の差別的発言については、

「結局は過激な発言で登録者を増やし再生回数を伸ばすことが目的だったのでしょう。おそらくユーチューバーとしての負けん気が引き起こしたもので、間違いなく確信犯です。要するに目先の利益に目がくらんでいるだけ。まさに銭ゲバ、もはや守銭奴でしかありません。どっちにしても卑劣な炎上商法というしかありませんね。彼にとっては今回も狙い通りだったはずです」

DaiGoは現役で東京大学を受験したが不合格だったことから1年間の浪人生活を経て、慶應義塾大学理工学部物理情報工学科に入学した。その後、同大学大学院理工学研究科修士課程に進んだものの中退している。

「心理学を用いてカードゲームに勝つなどしたことで、メディアを通して注目を集めるようになった」(放送関係者)

企業の研修やコンサルティングも請け負っているとも言われ、著書は10年間で40冊を超える。その中でも力を入れているYouTubeの登録者は243万人を超え、総再生回数は6億1000万回にも及んでいる。前出の芸能関係者は、

「彼は1年前の9月から『Dラボ』と言うアプリの運営も開始しています。これは心理学や生活においての苦難を乗り越えるノウハウなど、さまざまなジャンルの動画が閲覧できるサービスのようですが、開始1ヶ月で8万人近くの会員が集まったと自慢する一方、自身の収入も公表していて、この『Dラボ』とYouTube、そしてニコニコ動画での収益を合わせると1ヶ月間で約9億円を稼ぎ出したと嘯いていました。まさに時代の寵児ですよ。

ここまで稼ぐわけですから、カン違いもするでしょうし、今回のように『俺の金(支払った税金)で食わせてやっている』などと思い上がったことを言い出し、ホームレスや生活保護受給者などの生活困窮者を見下すようになるのも当然でしょう」

ちなみに、女優の北川景子の夫で、「ウィッシュ」で知られるタレント、ミュージシャンのDAIGOとは全くの別人である。今回の〝事件〟後、Twitterでは一時、北川景子の名前がトレンド入りする事態まで起こったというのだからいい迷惑だ。

生活困窮者の支援団体が激怒 CM放送自粛も

そのDaiGoが、自らの発言の重大さに慌て始めたのは、騒動から1週間も経った8月14日になってからだった。

生活困窮者を支援する「生活保護問題対策全国会議」「一般社団法人つくろい東京ファンド」「新型コロナ災害緊急アクション」「一般社団法人反貧困ネットワーク」の4団体が「メンタリストDaiGo氏のYouTubeにおけるヘイト発言を受けた緊急声明」と題した緊急声明を発表したのだ。

4団体は、DaiGoに対して「謝罪は単なるポーズに過ぎない」と激怒。一連の発言に対して、

「人の命に優劣をつけ、価値のない命は抹殺してもかまわない、という『優生思想』そのものであり、断じて容認できるものではない」

「差別を煽動する明確な意図に基づいて行われたものであり、現に、路上生活者に対する差別に基づいた襲撃事件が後を絶たない中、さらなるヘイトクライムを誘発する危険のある、極めて悪質な発言」

と断罪。

DaiGoの謝罪ばかりではなく、厚生労働省に対しても制度利用を促す発信の徹底を求めた。さらに、メディアに対してはDaiGoを起用(出演)することを控えると同時に、今後、発言の問題点を報道するなど、放送倫理の明確化を要求した。

その上で、今回の差別的発言については、

「私たちの社会を守るため、DaiGo氏の一連の差別煽動を許さないという姿勢を、より明確に社会全体で示す必要がある」

と、発言した事実を曖昧に済ませないことを明言した。

それだけではない。この緊急声明を受けてなのか同日(14日)、DaiGoが出演していた「霧島天然水のむシリカ」CMの放送自粛もスポンサー側から発表された。

さすがに強気な発言をしてきたDaiGoも青ざめたに違いない。もっとも、事態は覆水盆にかえらずと言ったところ。周辺からは、

「誹謗中傷、さらには差別を繰り返す人物の動画サイトのアカウントをなぜ、凍結しないのか」

と言った批判が巻き起こり始めた。

アカウント停止しないYouTubeの運営方針に疑問

Getty Images

「昨今は、ネットを使った誹謗中傷が社会問題化しています。今回は自分の意見を述べただけだと言っても、DaiGoの場合はYouTubeやニコニコ動画を含め、登録者が多く、インフルエンサーとして大きな影響力を持っています。

彼の言葉に賛同した人も多いかもしれません。時折若者グループによるホームレス襲撃が問題になりますが、その動機がDaiGoの発言に近いものもあるわけで、今後、DaiGoの言葉に触発された人物によって、そうした事件が起こる可能性だって十分に考えられます」

と支援団体関係者の1人は憤りを語る。

だが問題なのは、「謝罪したからいいじゃん」と言ったいい加減さだ。

「差別的発言が全国各地で条例違反にもなりつつある中で、YouTubeがお咎めなしと言うのは時代に逆行しています。本来なら即刻、アカウント停止でしょう。YouTubeは非常に厳しいポリシーで運営されていると言われていますが…。結局は登録者が多いからでしょうか?

理由はともかく、動画サイトでは、生活保護受給者やホームレスへ差別的発言をしてもポリシー違反にならないということになります。だとしたら支援団体は、まず、そうした部分に対して目を向けるべきでしょう。正直言って感覚がズレているようにも思います」

社会問題を取材するフリーのライターは、そう言って首をひねるが、今回のDaiGoの差別的発言については、

「現時点としては単に馬脚を露わしたと言う程度に過ぎない。この問題をウヤムヤにして風化させてしまうようでしたら、日本は生活困窮者に対して冷たいと言うことになりかねません。それこそSDGs(持続可能な開発目標)などと社会全体で叫んでいても、もはや絵に描いた餅だってことですよ」

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