示された民意と反省見えぬ菅政権 – 階猛

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22日、有権者が310万人を超える横浜市の市長選挙が行われました。投票率は49%で前回を約12ポイントも上回りました。有権者の関心が高まったのは、①菅首相の地元での選挙であり現政権のコロナ対策が適切かどうか、②カジノを含む大規模な統合型リゾート(IR)を横浜港に誘致すべきかどうか、という二つの争点が明確だったためです。

選挙の結果は、立憲民主党が推薦する新人の山中竹春氏が次点候補に18万票の大差を付ける圧勝でした。与党系候補が分裂したとは言え、現職の市長や閣僚、元知事ら知名度の高い候補が多数出馬した中で、無名の野党系候補が圧勝するのは異例のことです。

山中氏は、選挙直前まで横浜市立大学でコロナの研究に従事した経験を踏まえ、楽観的観測ではなく科学的根拠に基づいたコロナ対策の実行を訴えると共に、IR誘致には厳しく反対し、カジノ抜きの「ハーバーリゾート構想」を打ち出していたことなどが、有権者の評価につながりました。

この厳しい選挙結果を受けて、菅政権のコロナ対策は見直されるかと思いきや、まったくその気配がありません。25日には、緊急事態宣言の対象に8道県を追加して21都道府県とし、まん延防止措置の対象は4県を追加して12県に拡大。相変わらず後手に回った対応です。期限となる9月12日以降の見通しもはっきりしません。

ところが、菅首相は「明かりははっきりと見え始めている」と記者会見で述べました。自民党の総裁選挙を同月17日告示とし、全国の党員参加で実施する旨を早々に決めています。いまだに科学的根拠の乏しい、政権にとって都合のいい楽観論に支配されています。

IRの方も、横浜市でIR反対の民意が示されただけではありません。菅首相自身がIR反対を表明する候補者を全面支援する意見広告を地域の情報誌に掲載していました。そうであるならば、なおのこと政府が掲げてきたIR推進方針は見直されるべきです。

にもかかわらず、当初予定通り10月1日から、各自治体が政府に対してIRの整備計画の認定を申請する運びになっています。しかも、政府の認定が公正になされるよう、整備計画については「審査委員会が評価を行うための項目ごとの配点は、国土交通大臣が別途定める」とされているのに、いまだに配点の方法が決まっていません。

これでは、IRの認定に絡む汚職事件が再び起こりかねません。示された民意を真剣に受け止めて反省する姿勢のない現政権には、民意の力で退場願うしかありません。

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