横浜市長選で見えた日本の問題点 – 赤松正雄

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。横浜市長選が終わって一週間。兵庫からは遠く離れた地域の市長選。この結果から何が読み取れるか。世に溢れる岡目八目風の解説もどきを、みんな立ち去った後の井戸端会議録のようだが、あえて付け加えてみたい。

切り口は余りにも多い。横浜市は、時の首相が政治家としての基盤を長年にわたり培ってきた地域。彼の政治家としての師匠筋の息子が閣僚の座を投げ打って挑戦した。しかも、その前大臣は、カジノを含む統合型リゾート(IR)に賛成していた立場をも捨てて、反対に転じた。これを自民党も、勿論現在のトップである首相もかつての立場もどこへやら、黙認した。それもこれも中央政治における対立軸が横浜市に持ち込まれることを恐れたからだろう。いい面の皮が、IR導入賛成の立場をとって4選目に臨んだ市長である

▲この市長選に挑んだ面子がまた多彩極まる顔ぶれだった。大学医学部教授データサイエンス科長の立場をかなぐり捨てた人。元小説家で、元県知事で、元代議士の人。元代議士で、元県知事で、参議院議員だった人。それぞれの選挙戦での語り口をも吟味せずに、勝手に論じるのは心苦しい限りだが、横浜市への愛着、思い入れよりも違う目的があったのでは、と勘繰ってしまう。物足りないのは、IR賛成の主張を声高にする候補者が現市長以外にいなかったこと。落選が決まった夜、同氏は市民からいかに嵐のような批判に晒されてきたかを語った。お気の毒に思うと同時に、哀れを催した

▲一方、落ちた前大臣は、これからは選挙には関わらないという意味の発言をした。ことそこに至った経緯を見れば、むべなるかなとの思いは禁じえないが、爽やかさはこの顛末で、唯一救いだった。首相とのやりとりを訊かれて「ありがとうございました」と述べたのに対して「お疲れさんでした」とだけ。言わぬが花とはいうものの、愚痴のひとつも聞きたいし、言わせたかった。二人の元県知事の敗戦の弁は、兵庫には聞こえてこないが、尼崎市選出の元代議士の顔すらテレビに映らなかったのは寂しい限りだった

▲ひとや明けて、一地方自治体の首長の選挙結果は国政に影響なしとか、影響は深く静かに甚大極まるとか、予想通りに喧しい。一番悔しいのは首相のほかにいないことは歴然としている。彼が首相になって、行われた選挙はことごとく負け続き。唯一勝ったとされるのが、自民党分裂騒ぎを経て、維新の支援を受けた候補の兵庫県知事選だけだったというのも哀れを通り越す。

これだけの惨状を前に、次期衆議院選での野党勢力との政権交代の声は起こってこない。横浜市長選が提起した日本の政治の問題点はあまりにも多すぎる。兵庫も横浜でも自主投票だった、IR賛成の公明党の立ち位置も含めて、岡目八目的解説が憚られるのは辛すぎる。(2021-8-27)

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