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はじめに
記事を書いた林です。こちらの記事は、世界でいちばんデイリーポータルZに優しい人たち、つまり、はげます会に入っている人に向けて書いた記事となっております。どのあたりがはげます会向けなのかを書くとネタバレになるので詳しくは申しませんが、その点を心のどこかに留めてお読みください。
では、どうぞ！
都心上空を通る飛行機から知ってる人を見つけられるか
羽田空港に着陸する飛行機が都心の上を通るようになった。
（15時から19時までのあいだ、南風が吹いているときという条件あり）
渋谷の上を通る飛行機から地上の僕は見えるのだろうか。
飛行機に手を降ったら、上空から見つけてもらえるのだろうか。
第１章 伊藤さんに撮ってもらう
数ヶ月前、そのチャンスが訪れた。
ライター伊藤さんが飛行機で沖縄から東京に帰ってくる。16時すぎに羽田に到着する便なので都心上空を通るのは間違いなさそうだ。
Flightradar24を見ると品川の東を通ることがわかった。YouTubeにあがっている機内からの映像を吟味して、新馬場近く、目黒川にかかる橋の上で待ち構えることにした。
映像を見る限り、機内からも橋の上は分かりやすそうだ。
ひと仕事終えた気持ちで帰宅して伊藤さんからの連絡を待つ。送られてきたのは動画だった。
翼の上かもしれませんと事前に教えてもらっていたのだ。だが、飛行機から見えたい欲がその情報を聞こえないふりをしてしまった。なんとかバイアスってやつできっと失敗の本質（意識高いやつが好きな本）とかに載ってるやつだ。（調べないで書いてます）
そして失意のまま数ヶ月がすぎた。
第２章 飛行機から安藤さんを探す
そしてふたたびチャンスが訪れる。今度は僕が大阪に行くことになった。帰りは不自然に関空から飛行機にした。
今回は編集部の安藤さんに地上で待ち構えてもらった。「おれが乗ってる飛行機を地上で撮ってくれ」。労基署には秘密にしたい業務命令である。
安藤さんにメッセンジャーでもうすぐ着陸であることを連絡する。ANAは機内でWifiが使えるのでこのプロジェクトにはぴったりだ。
時速800キロで近づく編集部
もうすぐだ。地上で手をふる安藤さんを飛行機から見つけたら泣いちゃうかもしれない。
はすっぱな人生とはおさらばだ。
飛行機はなぜか太平洋に出てしまう
しかし飛行機は右に旋回し、千葉を通り抜けて太平洋に出た。あれ？こんなルートあったっけ？機内からも僕はFlightradar24を見ている。
もしかしてこの飛行機成田行だった？というか迷走していませんか。
混乱しているところに安藤さんからメッセージが入った。「いま品川通りましたか？」とのこと。
いや、まだもうちょっとかかるみたい。それ別の飛行機ですと答える。変なところを飛びはじめたとはまだ書かなかった。
しかし僕の心配をよそに飛行機は再び房総半島を横切り、やや北向きに東京に向かいはじめた。なるほど。このまま北上して赤羽上空で南に旋回すれば予定通りだ。
よし、おれはANAを信じていたぞ。
たとえ肉眼で分からなくても4Kの映像から切り出して拡大したら写っているかもしれない。ビッグフットのように安藤さんが写っているというオチもいい。
だが、飛行機は意外にも左に旋回し始めた。
機内からFlightradar24を見ると、都心上空を通るルートではない。昔ながらの東京湾を横切るルートだ。
大きい地図だと見えそうな気がするが、拡大するとこのような位置関係になる。
たまに都心上空を通らないルートを使うこともあるのだが、まさかそれに当たるとは…。
この炎天下のなか、安藤さんを無駄に2時間拘束したことになる。
違うルートを通っていることを送ろうとしたときに安藤さんから「撮った」との連絡がはいった。
後でもらった写真のファイル名が「ANA来た、時間的にも確実に林さん.jpg」だ。
こんなに尻の下がじりじりするファイル名があるだろうか。
このほかにも
・こちらから乗客は見えず.jpg
・でもかなりクリアに見えたので林さんからは見えてたはず.jpg
一生懸命に傘を振りました.jpg
など、jpg圧縮でも圧縮できない感情あふれるファイルが入っていた。
それ違う。その飛行機には僕は乗ってない。お墓には僕はいません。秋川なんとかのような気分だ。
飛行機からは夕日が見えた。企画がうまくいかないときに限って天気がいい。
都心通らなかった、と伝える前にも安藤さんはANAをたくさん写っていた。ANAってよく飛んでるんですね。
ビデオ撮ったけどよく見えなかった、ってことにしようか。
実は伏線があった
なぜ都心上空のルートを通らなかったのか。実は飛行機の出発が1時間以上遅れたのだ。
関空で飛行機に乗ったあと、ブレーキに異常が見つかったので機材変更するとのアナウンスがあり、いちど降りて別の飛行機になったのだ。
新しい飛行機でも窓側席は変わらなかったので安心したが、羽田到着の時間が遅れたため都心上空を通るルートの時間からはみ出してしまったのだ。
Flightradar24でそのあとの羽田着陸便を見ても、都心上空のルートを通るものはなかった。そしてあんな変なルートを通った便もない。
ブレーキの異常が見つかってそのまま飛ばなかったANAはちゃんとしてるなと思ったが、安藤さんはそのせいで1時間炎天下で待つ羽目になった（そして目的は達成できず）。
飛行機は飛んでるあいだ、出発が遅れたことをお詫びしますとずっとアナウンスしていた。遅れるのは全然構わないが都心の上を飛んでほしかった。「下で、待ってる人がいるんですよ！」と北の国からの田中邦衛のように言いたかったが実は見たことがない。
いつかこの企画が成功したとき、デイリーポータルZに堂々と載るだろう。
記事終わってふたたび解説です
冒頭ではげます会向けと書いたのは、できてないからです。いやー、見えなかったね！
失敗もはげます会のみなさんなら楽しんでもらえるだろうと思って書きました。（でも、好評だと自動的に公開されるルールにしたのを忘れてました）。締めで「堂々と載るだろう」とか書いてるけど。
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