マスク と 手指消毒剤 、よりファッションアイテム化する:長期ブランド戦略に挑むメーカーたち

DIGIDAY

ここ数週間における米国のCovid-19発生件数の新たな急増から、消費者はマスクと手指消毒剤の買いだめに走っている。

インスタカート(Instacart)社は、手指消毒剤と医療用マスクの7月の売上が、6月と比べてそれぞれ24%と16%増加したことを報告している。さらに、8月初頭にはどちらの製品の売上も前週を上回っており、継続的な売上の増加が予測される。

しかし今回の売上増加は、パンデミックの初期に見られたものほど顕著ではない。従来の手指消毒剤やマスクはファッション性が求められるような製品ではなく、消費者は2020年の時点では、大量に購入できる製品であれば即座に購入していた。しかし現在では、よりお洒落で人目を引くような製品を求めている。各ブランドはこのような消費者の変化に対応すべく、よりファッション性があり、魅力的なメッセージを持つ製品を生み出すため投資を行っている。

これら2種類の製品への需要は再び増加しつつあるが、インスタカート社の7月における手指消毒剤の売上は依然として前年比で52%も低下しており、これらの製品では去年のような売上の急増は見込めないことが示唆されている。インスタカート社のトレンド専門家であるローレンシア・ロマニック氏は、対症療法に使用される製品は疫病の予防に使用される製品よりも年間の売上増加率が高いことをメールで言明している。7月にはインスタカート社の鎮痛剤、咳止め、および風邪やインフルエンザの薬の売上はそれぞれ前年比で19%、39%、85%増大している。

ロマニック氏は「消費者の購買の傾向は、パンデミックの初期から大きく変化していることが明らか。これは、パンデミックの発生から1年が経過し、消費者が予防用の製品を十分に備蓄したことや、新たな疫病が世界で発生し続けるため対症療法用の製品が強く必要とされていることに起因する可能性がある」と述べている。

マスクはよりスタイリッシュに

ニューヨーク市のファッションブランド、ローイングブレザーズ(Rowing Blazers)社の社長であるスコット・ゲフトマン氏は、最新のコロナウイルスの感染件数増加においては予防用の製品が不足していないため、各ブランドは必需品からファッションへの移行を自由に追求できると述べている。氏は「パンデミックの初期にはマスクが緊急に必要とされ、不足してた」と語っている。この理由から、ローイングブレザーズ社は去年の4月にマスクの販売を開始したとき、消費者がマスクを購入するごとにニューヨーク市の食料銀行に1枚のマスクを寄贈することを決定した。

ゲフトマン氏は、「もちろん今日では市でマスクの不足はないため、見栄えが良く、リサイクルでき、安価で、人々が実際に身に付けようたくなるようなマスクをニューヨークで製造することに注力している」と語っている。同社のマスク販売の売上は最近の3週間に、前の週と比較してそれぞれ170%、57%、503%の増大を記録している。ゲフトマン氏は、同社が去年マスクの販売を開始して以来、この分野で同社の売上がもっとも急激に増大したのがこの時期であると述べている。たとえばローイングブレザーズ社が先週販売したマスクの数は、去年の同時期と比較して200%以上も増加している。

同社のブランドは現在ファッション性を重視して、セーターのブランドであるワーム&ワンダフル(Warm & Wonderful)とともに、新しいスタイルのマスクを発売するための作業に取り組んでいる。このマスクは、ローイングブレザーズ社とワーム&ワンダフルによる、英元ダイアナ妃が着用していた有名なセーターのレプリカに合わせ、黒色の羊の模様が付けられている。

アクセサリーブランドのパシフィックメーソン(Pacific Mason)社の業務運営部長であるジョン・リン氏も同様に、同社の折り紙スタイルのマスクは同ブランドの標準のマスクと比べて総売上が3倍だったと語っている。

リン氏は、「折り紙のマスクはより多用途で、鼻から顎までをより的確に覆い、眼鏡が曇ることもほとんどない。そして言うまでもなく、ほとんどの人々にとってよりお洒落でトレンディだ」と述べている。

衛生対策はより魅力的でかっこよく

手指消毒剤のブランドのタッチランド(Touchland)社もこのようなファッション化を考慮していると、ブランド創設者でCEOのアンドレア・リズボナ氏は語っている。

同ブランドは先週、香料メーカーのジボダン(Givaudan)の協力を受け、ブルーサンダルウッド(Blue Sandalwood)、ベルベットピーチ(Velvet Peach)、アプリシャス(Applelicious)、レモンライム・スプリッツ・アンド・レインウォーター(Lemon Lime Spritz and Rainwater)という4つの新しい香りの消毒剤を発売した。同時に同ブランドは、パーティー好きの若者たちがパーティーに向かう前に消毒薬を使用し、友人とハイタッチして、初対面の人たちと親しくなる光景を描いた新しい広告キャンペーンを開始した。同ブランドは自社のソーシャルハンドルや、Facebook、YouTube、Googleの有料広告や屋外広告でこのコンテンツを使用している。

このキャンペーンは、衛生と楽しさとのバランスの一新を目指したものであるとリズボナ氏は述べている。「(今日)市場にある手指消毒剤の99%は、パンデミックに便乗して売上を伸ばすために発売されたものにすぎない。当社は人々が不安を抱かず、新しい形で情熱的に、ただし無謀な行為は行わず生活できるように願っている。結局のところ、健康を保つためには手をきれいにすることが一番簡単な方法だ」。

タッチランド社は昨年8月、新しいB to Bディスペンサーである「ハブ(The Hub)」を公表し、エキノックス(Equinox)やスイートグリーン(Sweet Green)など話題のブランドと提携して、同ブランドの噴霧消毒技術をジムやレストランに売り込むことを目指している。製品の上品な香りとフォーマットは現在のパンデミック拡大に対する解決策であると同時に、将来の健康に対する長期的な戦略でもあるのだという。

リズボナ氏はこう語る。「パンデミックの渦中で、各社はこれが一時的なものではなく、今後の世界の方向性であることを認識した。安価な手指消毒剤を選択することもできただろう。だが、各社は当社に信頼を寄せてくれた。『自社製品を使用する顧客には、Covidその他の不安材料を思い出してほしくない』という考えからだ」。

これによりローイングブレザーズ、パシフィックメーソン、タッチランドなどの各ブランドはすべて、予防的な製品への需要が今後も継続すると確信するに至った。

ローイングブレザーズ社のゲフトマン氏は、「好むと好まざるとにかかわらず、マスクは私たちの生活において何らかの役割を長期的に果たすことになると確信している。第2波が発生するかどうかにかかわらず、マスクの着用が要求されないようになっても、特に飛行機や列車での旅行ではマスクの着用を選ぶ人々が存在し続けるだろう」と語っている。

[原文:As sales rise again, mask and sanitizer companies focus on longer-term branding

Maile McCann (翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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