NHK「開戦 太平洋戦争」で語られなかった真実

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昨夜放送されたNHKスペシャル「開戦太平洋戦争〜日中米英知られざる攻防〜」は、蒋介石の膨大な日記を初めて解読し、蒋介石の立場からの日中戦争(1937~41年)を分析した労作だった。

NHKスペシャル「開戦 太平洋戦争 ~日中米英 知られざる攻防~」より

わたしがつねづね主張している太平洋戦争の敗戦とは中国との対米外交戦の敗北であるという私の歴史観を強化するものでだいたい公正だった。

ただ蒋介石と日本の和平を潰したのが近衛内閣に入り込んだコミンテルンの工作員たちだったという非常に重要なポイントに一切触れず。日本の歴史教育が正常化するリトマス試験紙は朝日新聞の尾崎秀実やゾルゲの名が教科書に載るかどうかだ。

南京攻略について取り上げたのに、日記に「虐殺」など書いてなかったことは言わないのもさすがNHK。

以下では、『365日でわかる日本史 時代・地域・文化、3つの視点で「読む年表」』の「10ページで分かる世界のなかの日本史」のなかから、「中国との外交戦争に負けたのが日米戦争の敗因」を少し短縮して提供する。

中国との外交戦争に負けたのが日米戦争の敗因

アメリカをめぐる外交戦は宋美齢などの活躍で中国側が勝利した。ゾルゲなどのコミンテルンのスパイ網は日本を対蒋介石、対米強硬策に導き、ソ連との対立を避けさせた。

「日露戦争で日本が勝ったのちアメリカが警戒し始めた」というが、大正時代になり、辛亥革命とアジア諸民族の覚醒、第一次世界大戦、アメリカの国力充実と日本移民排斥、日本での薩長閥の衰退と国粋主義的な傾向の進展といった動きが複合的に影響し合って、日米蜜月が継続することが難しくなった。

アメリカは、ペリー艦隊の圧力で開国し、アメリカに見習って文明開化を進めた日本は可愛い存在だった。ところが、中国が共和国になったので、けなげに頑張っているので助けてやりたいという気持ちが出てきた。

キリスト教が、中国で多くの信者を獲得したことも好感度を増し、中国のことをシスター・カントリーだという意識も生まれた。

第一次世界大戦後のアメリカは軍縮で財政再建をめざし、ワシントン会議で海軍軍備制限条約・九ヵ国条約・四ヵ国条約の三条約が成立した。中国の主権尊重・領土保全、太平洋の原状維持を決め、日英同盟は破棄されたが、多国間の安全保障は無力だった。

日本では幣原外相が対英米協調を貫き、中国にも柔軟だったが、中国は容赦なく日本の正当な権益も攻撃し、蒋介石が北伐で政権を取るとそれがエスカレートし、その結果起きたのが満州事変であり、満州国の建国である。

満州国の国づくりは大成功したが、石原完爾らは万里の長城以南への進出には消極的だった。しかし、命令違反をした軍人が英雄になったので後輩たちは同じことを夢見た。中国も日本人の虐殺などで挑発し、西安事件で共産党が蒋介石に対日強硬策を強制した。その結果起きたのが日華事変であって、どっちもどっちだったのである。

ドイツとの早期開戦を望むルーズベルト大統領は、日本を真珠湾攻撃に追い込んだ。しかし、最後に暴発したのが日本であることの言い訳にはならなかった。

日本は緒戦で勝利を収め、有利な講和を結ぶチャンスもあるかと思われたが、ミッドウェーやサイパンの敗戦で敗戦濃厚になった。だが、無理な戦争を続け、半数以上の戦死者と民間人死者のほとんどを最後の一年に出し、沖縄の地上戦、広島と長崎への原爆投下など主要都市の壊滅的被害、ソ連参戦による領土の喪失を招いた。