メスが多いほど子孫を増やせるのに「オスとメスの数が同じくらい」なのは一体なぜ?

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人間を含め、有性生殖を行う生き物の中にはオスとメスの比率がほとんど同じものが多く存在します。しかし、少数のオスがいれば多くのメスと繁殖が可能なため、オスはそれほどたくさん必要ないようにも思えます。突然変異がもたらす影響について遺伝子学的に調べた研究により、「子どもを産めないオスがメスと同じくらい生まれるのは一体なぜ?」という疑問の答えが示されました。

Selection in males purges the mutation load on female fitness – Grieshop – 2021 – Evolution Letters – Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/evl3.239

Males help keep populations genetically healthy – Uppsala University, Sweden
https://www.uu.se/en/news/article/?id=17182

Males, sexual selection help keep populations genetically healthy – UPI.com
https://www.upi.com/Science_News/2021/06/28/canada-beetles-males-sexual-selection-genetic-health/8611624886692/

ある生き物のメスの数が減ると、生まれる子どもの数も減り、個体数の激減や絶滅につながるおそれがあります。一方、少数のオスでメスを受精させようが、多数のオスでメスを受精させようが、メスが産む子孫の数はほとんど変わらないため、オスが子育てに関与する生物でもない限り、オスの数は子孫とはあまり関係ないはずです。

by Smithsonian’s National Zoo

この疑問に答える仮説の1つとして、「性淘汰(とうた)が重要な働きをしているのではないか」というものがありますが、その実証につながる研究はほとんどありません。そこで、カナダ・トロント大学の進化生物学者であるカール・グリショップ氏らの研究チームは、保存されている小豆などにわく虫として知られているヨツモンマメゾウムシを繰り返し掛け合わせる実験を行いました。

今回の研究では、ヨツモンマメゾウムシの近交系を16系統準備し、それらの系統同士をかけ合わせることで突然変異がオスとメスに与える影響を定量化しました。

by Charles Fox

この実験の結果、同じ系統同士で掛け合わせる同系交配を行うと、オスとメスの両方が突然変異の悪影響を受ける反面、自然界で発生するような異系交配では、オスのみが悪影響を強く受けることが分かりました。

研究チームによると、この研究結果は「オスの性淘汰により突然変異の悪影響が効率的に排除される」ことを意味しているとのこと。同様の現象は、人工的な操作により誘発された変異では確認されていましたが、交配の中で自然に生じた突然変異で確認されたのはこれが初めてとされています。


この結果について、グリショップ氏は「有害な突然変異は、オスとメスの繁殖に悪影響を及ぼす一方で、メスよりオスに強く働く選択作用によって集団から効果的に排除されることが分かりました」と話しました。

また、論文の共著者であるウプサラ大学のデビッド・バーガー氏は「オスはメスより子孫繁栄に貢献しないため、オスの生産は種の繁殖力を低下させます。そこで、なぜ生き物はメスだけの無性生殖ではなくオスによる有性生殖を選んだのかが問題でした。私たちの研究は、交尾の機会をめぐって激しい競争を繰り広げるオスの生産が、有害な突然変異の迅速な排除を可能とし、これによって無性生殖より高い繁殖力と健全な遺伝子が確保されていることを示しました」と述べました。

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