連載の使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説しているが、やはり自宅で過ごす時間が増え、ゲームはもとより自宅でできるエンタメ系が人気のようだ。本連載ではしばらくの間、ソニー「プレイステーション 5(PS5)」を自宅Wi-Fiへつなげて活用していこう。
PS5が発売されたのは2020年11月になるが、いまだに品薄状態が続いていて抽選販売が主だ。とはいえ以前よりは入手しやすくなってきているようで、ようやく当選して、わが家にもやってきた。
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「NATタイプ」が「タイプ3」で原因がルーター側のときは、DMZの設定を試してみよう
前回は外出先からPS5のリモートプレイを楽しんでみたが、自宅のPS5に接続する場合に、「NATタイプ」が「タイプ3」になっているケースでは、アクセスできないことがある。
これは、リモートプレイに限らず、PS5でオンライン対戦をプレイする場合にも起こることがある。その原因は、ルーター(NAT)だけではなく、PlayStation Networkの稼動状況や回線混雑なども要因となる場合がある。今回はルーター側が原因となる場合の解決方法を見ていこう。
今回の方法では、PS5を自宅のWi-Fiルーターを介さずにインターネットに直接つなぐもので、「DMZ(DeMilitarized Zone、非武装地帯という意味)」と呼ばれる機能を設定することで実現できる。通常はインターネットに情報を提供するサーバーを公開するときなどに使われる機能だ。
このDMZエリアにPS5を設定すると、インターネット経由の接続を全面的に許可することになる。PS5の「NATタイプ」でいうと「タイプ1」の状態になるはずだが、実際に設定してみると、必ずしも「タイプ1」に切り替わるわけではないようだ。とはいえ、ほぼ同じ状態にすることはできる。
また、自宅のLAN環境がいわゆる“二重ルーター”状態の場合には、ルーターが1段減った状態にできる。つまり、「NATタイプ」が「タイプ3」だった場合に、「タイプ2」とすることが期待できるわけだ。
DMZはPS5がネットに直接つながるのでセキュリティ面で要注意
ただ、DMZに設定することには、デメリットもあるので注意して欲しい。PS5が外部からアタックされる可能性がとても高くなるのだ(「タイプ3」から「タイプ2」になった場合には特に問題ない)。ルーターでは、簡易ファイアウォール機能によって外部からの悪意ある通信があらかじめ遮断されているが、これが全く効かない状態になってしまうのだ。
PS5は、ゲームコンソールとしてインターネットに直接接続しても問題ないように設計されているので、不正侵入されたり踏み台に使われたりする可能性は低いはずだが、可能性はゼロではないので、設定後は常に注意しておく必要はある。
つまり、PS5のアップデートは常に最新になるように気を付け、ログインパスワードは複雑な文字列にし、使わないときは電源をオフにする、といった基本を守るようにしておきたい。
こうしたDMZの設定は、ゲームコンソールだけでなくPCでも活用可能なものだが、PCゲームでの使用はあまりオススメしない。ゲーム以外にも使えるPCでは、脆弱性を突かれて不正侵入を許してしまう確率が高いからだ。
こうした場合はDMZを使わず、ルーターでポートを解放(ポートフォワーディング)する程度にとどめておくのがオススメだ。PS5でポート解放をする場合には、TCP 80、443、3478、3479、3480と、UDP 3478、3479の各ポートを設定することが推奨されているが、全てのゲームに当てはまるワケではない。
なお、万一、DMZとして設定したPS5が不正侵入されても、そこから自宅のLAN内にアクセスすることはできないので安心して欲しい。不安な場合は、DMZから通常の自宅LANへ接続し直すときに、PS5をいったん工場出荷状態に初期化して再設定しておこう。そうすれば全く問題は起きないはずだ。
ちなみに、ネット上には、DMZの設定を行えば、通信のラグが少なくなるとか高速化されるといった裏技のように指南されていることがあるが、これは誤った情報で、そのように速度が速くなることはない。
あくまでも、リモートプレイやオンライン対戦などのマルチプレイがうまくできないといった、外部からのアクセス不具合に対応するための設定で、少々ハッキングの危険を犯してでも使いたいというときに活用するものだ。DMZを設定しなくても使えるなら、しないに越したことはない。
DMZの設定には、IPアドレスの固定が必須
では最初に、PS5のIPアドレスをLAN内で固定する設定を行おう。自宅のWi-Fiルーターに接続している機器のIPアドレスは、自動で割り振られているため変動してしまうが、インターネットの外部から特定の機器に接続させるDMZを設定する場合には、IPアドレスを固定することが必須になる。
LAN内のIPアドレスを固定して使う知識については、この連載の第38回『自宅のLANでIPアドレスを固定すると便利な機器は?』~第41回『Wi-FiアクセスポイントでIPアドレスを固定して使うには?』で解説しているので、詳しくはそちらを参照して欲しい。
PS5のIPアドレスは、すでにインターネットに接続している場合、[設定]の[ネットワーク]で、[設定]―[インターネット接続を設定]を表示して行う。
[接続済み]と表示されているWi-Fiネットワークを選択した状態で、[×]を押すとメニューが表示されるので、[詳細設定]を選ぶ。[IPアドレス設定]は[自動]になっているはずなので、これを[手動]に切り替えよう。
ここに数字を入力すればIPアドレスが固定できる。[IPv4アドレス]に自宅のLAN環境に応じた固定したいIPアドレスの数字を「192.168.XXX.XXX」形式で入力する。[サブネットマスク]は「255.255.255.0」、[デフォルトゲートウェイ]はルーターのIPアドレスを入力する。また、[プライマリーDNS]と[セカンダリーDNS]には、Google Public DNSの「8.8.8.8」と「8.8.4.4」などを入力しておこう。
IPアドレスを固定にする設定は、DMZを使わなくても、リモートプレイ時に接続がしやすく(接続の検索時間が速く)なるのでおすすめの設定だ。固定するIPアドレスと自動で割り振るIPアドレスの範囲を絶対にかぶらないように指定するのがコツだ。
以前に、連載第39回で、IPアドレスの範囲を指定する際のルールの決め方を詳しく解説している。そして第40回で、実際にルーターでIPアドレスを自動で割り振る範囲を解説しているので参考して欲しい。
次回は、ルーター側でDMZの設定をしていこう。とは言っても設定自体は簡単で、チェックを入れて固定したPS5のIPアドレスを指定するだけだ。