表敬訪問要る? メダル噛みで物議 – BLOGOS しらべる部

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名古屋市の河村たかし市長が、東京五輪ソフトボールで金メダルに輝いた日本代表の後藤希友選手(20=トヨタ自動車)の表敬訪問を受けた際、金メダルをかじって問題となっている件に関連して、スポーツや文化などで功績を挙げた人が首長への敬意を示して役所を訪れる「表敬訪問」が一部で注目されている。

政治がスポーツを利用しているとの指摘もあるほか、「なぜ選手が足を運ばねばならないのか」との意見もある。河村市長のメダルをかじる行為が表敬訪問の必要性を考える動きにつながっている。

決勝でアメリカを下して金メダルに輝いたソフトボール日本代表 (Getty Images)

メダルかじりの経緯は? SNSで高まった批判

報道によると、後藤選手は4日、金メダル獲得を報告するために名古屋市役所を訪問した。河村市長は後藤選手から首にかけてもらったメダルを手に取ると「重たいな」とつぶやき、マスクを外してメダルに噛み付いて見せた。メダルをかじることについて、河村市長は後藤選手から事前の了解を得ていなかったという。

この行為について、地元のテレビ局は当初、「(河村市長が)パフォーマンスを見せました」などと報道したものの、SNSなどで情報が拡散されると批判の声が高まった。

Twitterでは、「努力の結晶の金メダルなのに」「無神経で下品」などといった声のほか、新型コロナウイルスの感染が止まらない中、「コロナへの警戒感が欠如している」との投稿もある。

表敬訪問とは? 行政側のパフォーマンスとの見方も

表敬訪問は、スポーツや文化の大会で功績を残した人や、地域おこしのイベントなどを企画した人が、都道府県知事や市町村長を訪れて歓談するのが一般的だ。マスコミ向けに撮影の時間も設けられ、例えばスポーツ選手が県知事を訪ねるケースでは次のような流れが考えられる。

① 報道陣が集まった知事室を選手が訪れて知事と握手。報道陣が握手の場面を撮影する
② ソファーに座って懇談開始。メダルや賞状を知事に見せ大会の感想を話し合う
③ 懇談の最後に記念撮影する
④ 懇談を終えた選手を報道陣がぶら下がり取材

多くの首長は地元ゆかりの選手の活躍に対して祝福を伝えたい思いだが、表敬訪問はマスコミ向けのパフォーマンスとの見方もある。

広報経験者は「(マスコミが)安上がりに首長を宣伝」

「好感度を上げる格好の舞台」ーー。東北地方の自治体で広報を担当した経験がある男性は表敬訪問についてそう表現する。さらに、「スポーツで活躍した人と話している写真や映像がテレビに流れれば、宣伝効果は抜群。隣にいるだけの首長も素晴らしい人物かのように見せられる」と打ち明ける。

五輪などで活躍した人への関心は高いことからマスコミも取材を断ることが少ないとして、同じ男性は「めでたい話なのでマスコミも無批判に取材をしてくれるし、安上がりに首長の宣伝ができてしまう」と話した。

表敬訪問の意義に疑問の声も

今回の騒動を受け、Twitter上では「訪問させるのは政治家の為のヤラせでしかない」「役所を表敬訪問する必要ってどこにあんの」「首長とか官邸とかに報告する必要ってあるのか」などと表敬訪問の意義を疑う声が目立つ。

アテネと北京の2大会で金メダルを獲得した元競泳選手・北島康介氏

スポーツニッポンの記事によると、アテネと北京の2大会で金メダルを獲得した元競泳選手・北島康介氏も5日、Twitterで「そもそもなんで表敬訪問しなきゃいけないのか」と疑問を呈したという。

一方、地元側が選手を支えているケースなどを踏まえ、表敬訪問を認めるツイートも見られる。

市は「(表敬訪問の設定は)税金で運営する市政の責務」

名古屋市スポーツ戦略室の説明では、今回の後藤選手の表敬訪問は、後藤選手が名古屋市熱田区で生まれ育った縁から、市が勤務先のトヨタに表敬訪問を依頼した。さらに、市政記者クラブを通じて報道各社に取材を呼びかけたという。

首にかけられた後藤希友選手(右)の金メダルをかじる河村たかし名古屋市長=4日午前、同市役所(共同通信社)

河村市長は表敬訪問があった4日夜に「(メダルを噛む行為は)最大の愛情表現だった。迷惑をかけているのであれば、ごめんなさい」とのコメントを出したほか、5日にも「軽率にも金メダルを汚し、市長の立場をわきまえない不適切な行為だと猛省すべきと痛感している」と重ねて謝罪した。

一方、後藤選手の所属先のトヨタも5日までに、「不適切かつあるまじき行為」とのコメントを発表したという。

名古屋市スポーツ戦略室の担当者は取材に対し、表敬訪問について「五輪で活躍した選手の姿は広く知らせるべきであり、市政記者クラブを通じてニュースになることはPR効果も非常に大きい。表敬訪問を設定することは税金で運営する市政の責務と考えている」と説明した。

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