コロナ規制への反対デモと偽情報時代の危険性

CNET Japan

 オーストラリアの週末(7月24日)は散々な状態だった。

シドニーで7月24日、ロックダウンとワクチン接種に対する抗議デモが行われた
シドニーで7月24日、ロックダウンとワクチン接種に対する抗議デモが行われた。
提供:Don Arnold/Getty

 人口の半分がロックダウン下にある中、シドニー、メルボルン、ブリスベンは、新型コロナウイルス感染症対策の規制に抗議する何千人もの人々で溢れた。これらの地域では感染が急拡大しており、ロックダウンは解除されそうにない。

 抗議デモに参加した人々の多くは、政府の行き過ぎや厳しいコロナ規制による経済的な不安を訴える市民だった。だが、抗議の波は、主に陰謀論によって高まったようだった。コロナはでっち上げだと主張するTシャツやプラカードの方が、マスクよりも目についた。

 SNS上には、抗議者たちが自己中心的で無責任だと批判する投稿が溢れたが、怒りとともに恥ずかしいという感情も見られた。こうした陰謀論は国の恥だという感情だ。

 私は、オーストラリアが世界の恥であればよかったと思う。そうであれば、オーストラリアは特異だということになるからだ。だが、現実はもっと憂慮すべきものだ。新型コロナウイルスと同様に、陰謀論は今や地球全体に広まっている。新型コロナ否定論者や反ワクチン主義者は少数派ではあるが、もはや無視できない数になっている。

 世界中で起きている抗議、デモ、暴動(の少なくとも一部)は、こうした懐疑論にあおられたものだ。ドイツは2020年8月、ロックダウンに抗議する特に激しい反対運動に苦しんだ。3万8000人がベルリンをデモ行進し、その中の400人がドイツ議会の本拠地である国会議事堂を襲撃した。オランダでは1月、この40年間で最悪の暴動が発生した。英国では年中、ロックダウンとワクチンに抗議するデモが行われている。

3月20日のロンドンで、カメラに向かってポーズを取るデモ参加者
3月20日のロンドンで、カメラに向かってポーズを取るデモ参加者。
提供:Hollie Adams/Getty

 抗議運動は7月に入って特に活発になった。17日にはフランスで、10万人以上が「衛生パス」に抗議する運動に参加した。衛生パスは、ワクチンパスポートのように、ワクチン接種済みであることを証明するもので、これを提示しないとバーやレストランなどに入れない。同様の施策への抗議運動は、24日にイタリア、ギリシャ、そして再びフランスで発生した。

 新型コロナ関連の抗議運動は3つの集団で構成されることが多い。まず、自由と仕事の安全について心配する一般市民。次に、自らの主張を拡散させようとする新型コロナ否定論者や反ワクチン主義者のような陰謀論者たち。そして、抗議者を次の選挙の票田にしようと目論む小さい政党の党員たちだ。

 例えばドイツの場合。抗議運動は、Querdenken(「水平思考者」という意味)と呼ばれるグループ主導だった。このグループは、新型コロナは策略だと信じる人々に支持されている。一方、極右政党AfD(ドイツのための選択肢党)もデモを支持し、抗議者の主張の一部を認めすらした

 オーストラリアでの7月24日の抗議運動も同様の構成だった。政府による支援が不十分だという不満を持つ労働者、新型コロナウイルスは「グレートリセット」のための言い訳だと主張する、FacebookやTelegramの新型コロナ懐疑グループのメンバー達、そして支持を集めたい非主流の政治家達だ。

 オーストラリアでの抗議運動が問題なのは、それが特異ではなく、むしろ標準であることだ。新型コロナウイルス自体と同様に、こうした抗議をあおる不信感は全世界に感染する。

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