DHC不適切文書 売上に影響なし? – 山口利昭

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タイトルのとおりの日経朝刊(8月2日)の見出し記事はたいへん興味深いものでした。エシックスコードに則って小売り大手のイオンがDHCにとった行動、売れ筋商品を供給する事業者であるがゆえに沈黙を通した他の小売り事業者、さらに(記事では紹介されていませんが)不適切文書で標的にされた大手飲料メーカーの対応など、このDHC文書事件は「ビジネスと人権」を考えるうえでとても参考になります。

当事者企業それぞれの立場でコメントしたいことはたくさんありますが、上記記事を読んで最も印象に残ったことは、不適切文書が世間を賑わせるようになった時点以降のDHCの栄養補給食品、女性用基礎化粧品の売上に及ぼす影響です。記事に添付された分析図によれば、いずれの商品も業績になんら影響がなかったばかりか、むしろ他社よりも売り上げが若干伸びている時期もあります。よく「ビジネスと人権」を語る書籍や雑誌では「最近は企業も人権尊重への配慮が求められるようになった。たとえ法令違反がなくても、人権への配慮を欠く行動は(不買運動などによって)企業の社会的信用を失わせることになる。」と書かれています。

しかしDHCの事例では、たしかに不買運動は一部で起きたものの、実際には売れ筋商品の販売不振につながる結果には至っておりません。ではなぜ売上に影響が出なかったのか・・・。このあたりが実は「コンプライアンス経営」とりわけ「ビジネスと人権」を(経営判断として)考えるうえでのポイントになろうかと思っております。

もちろん悪意のある企業不祥事は避けなければなりませんし、ましてや「差別的表現の容認」など絶対に許されるものではありません。ただ、誠実な企業の誠実な役職員でも不祥事は起こします。不祥事が発覚した時でも、日常業務が不祥事の影響を受けずに済むためには(つまりレピュテーションリスクの顕在化によって事業が影響を受けないためには)日ごろから何をしておくべきか。ここを考えることが「不祥事に強い企業」としての「組織復元力」になります。

このあたりは専門家もメディアもほとんど注意を向けていないところです。ブログのような媒体で簡潔に書けるものではありませんので、また、講演等で詳しく解説をしたいと思います。

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