この夏、どこに行く? 米国の業界リーダーたちに訊いた:規制緩和でインスピレーションを得る旅へ

DIGIDAY

我々全員がオフィスに戻る前に、もうひとつ忘れてはいけないことがある。夏休みだ。

米国ではパンデミックが収束しつつあり、旅行の制限が緩和されたことで、今年の夏は同国の国内旅行が再び人気を得ている。業界のリーダーたちは、お気に入りの場所をまた訪れることを熱望し、激動の1年を経て、待ちに待った休息の時間に向けての荷造りをはじめている者もいる。我々が話を聞いたリーダーたちは、すでに休暇を取ったか、レイバー・デー(今年は9月6日)前に休みを取る予定だった。多くの企業はレイバー・デー後に、少なくともハイブリッドなスケジュールで、オフィス勤務での仕事を開始する予定だという。

チェビブ氏は「別世界」へ

エージェンシー、180のニューヨークオフィスで戦略部門を率いるジェイソン・チェビブ氏にとって、世界が閉ざされているあいだにもっとも行きたかった場所は、ルイジアナ州ニューオーリンズ(別名ビッグ・イージー)だった。

チェビブ氏は、「初めてニューオーリンズを訪れたとき、驚きの連続だった。この街は、特に夏の湿気のなかでは、眠たくもあり、生気に溢れてもいる」という。そんな彼のエージェンシーは、アンダー・アーマー(Under Armour)やソニーのプレイステーション(PlayStation)のようなブランドを顧客に持つ。「夜になるとバーボンストリートは観光客でごった返し、そんななかでもバーに入れば、私の大好きなケイジャンミュージックが、そのジャンルでもっともオーセンティックなアーティストによって演奏されている。ニューオーリンズで食べた食事は、私の記憶にもっとも長く残っている」。

さらに、米国史の光と影が、この歴史的な南部の観光地に存在する。「ハリケーン・カトリーナの傷跡も残っているし、フレンチ・クオーターの外には貧困の痕跡がある。一方、思いがけない出会いもある。たとえば、横道にそれたときにどこからともなく、結婚式を祝う人の行列が日傘をクルクルと回しながら出迎えてくれたりする」と、チェビブ氏はいう。

「ニューオーリンズは、ニューヨークとはまったく異なる世界だ。私にとっては、いろんな意味で『別世界』だ。そこに戻れば、何カ月も待ち望んでいたリセットができるはずだ」と、チェビブ氏は話す。

ローエンタール氏は飛び回る

ニューヨークにあるザ・メディア・キッチン(The Media Kitchen)では、オフの時間を大切にしているため、無制限のバケーションポリシーを設けている、と同社最高経営責任者(CEO)のバリー・ローエンタール氏は話す。ローエンタール氏はこのポリシーのおかげで、これまでに48カ国を訪ねてきた。9月にはハイブリッドオフィスがオープンするため、8月はローエンタール氏をはじめ、彼の同僚の旅行も多くなりそうだ。

ボツワナのサファリに行けるのはまだ1~2年先になりそうだが、ローエンタール氏は、数週間のうちにサンタバーバラにいる友人を、そして秋口にはミネアポリスとトロントのオフィスを訪問することを楽しみにしている。「ミネアポリスでは川沿いを走ったり、ダウンタウンのロウズ(Loews)ホテルに泊まったりするのが好きだ。トロントのオフィスは、トロントの『ウィリアムズバーグ』と呼ばれるキング・ストリート・イーストにある」。ローエンタール氏のエージェンシーは、ロウズのほかにも、レイン・ブライアント(Lane Bryant)やバンガード(Vanguard)をクライアントに持つ。「冬のパームビーチにまた行けると思うとワクワクする。昨年、我々全員がまだワクチンを接種する前だったが、私はそこで長い時間を過ごした」。

ローエンタール氏はこう付け加える。「広告業界で働く人間は、元来好奇心が強く、アパートや近所から離れて、国内のほかの地域や世界を見て回りたくて仕方ない者ばかりなはず。この機会を利用して、新たなインスピレーションを得て皆が戻ってくることを願っている」。

エルドリッジ兄弟は人生の原点へ

ニューヨークに本拠を置くエージェンシー、アンカー・ワールドワイド(Anchor Worldwide)の共同創設者、セバスチャン・エルドリッジ氏とサクソン・エルドリッジ氏の兄弟にも、メール取材で一番行きたかった場所を尋ねた。すると、驚くほど見事なサンタフェの風景写真とたくさんの感嘆符がついたメールが返送されてきた。

そこは、エルドリッジ兄弟が両親の離婚後に移り住んだ場所だ。彼らが、やがて故郷と呼ぶことになる地への3日間の片道旅行で疲れ果て、古いスバルの後部座席ぐっすりと眠っていたところを、母親でアーティストのアレキサンドラ・エルドリッジ氏に起こされたときのことを2人は今でも思い出すという(そのとき、サクソン氏は7歳、セバスチャン氏は4歳だった)。兄のサクソンが「日干しレンガ造りの建物が立ち並ぶひなびた街」と呼ぶニューメキシコ州サンタフェの上にそびえるサングレ・デ・クリスト山脈を見た瞬間、兄弟は、猛烈な勢いでここを好きになったという。

弟のセバスチャン氏はアンカー・ワールドワイドのCEOを務める。セバスチャン氏はいう。「アーティストである母は離婚後、いくつかの都市を転々としたあと、私たちを連れてなんの縁もゆかりもない、知り合いもいない場所に引っ越した。しかし母は、アーティストとしての自分の才能で、シングルマザーである自身と2人の息子を養うことができると確信していた。そして、この街が世界第3位のアートマーケットであることを知り、戦略的にここを選んだのだ」。

最初の数年は苦労した。アレキサンドラ氏は、街の金持ちの住民の家の内装に絵を描いて、アーティストとしての評価を高めていった。フィンセント・ファン・ゴッホの『星月夜』を再現した天井画から、延々と続くドラマチックなフォーフィニッシュまで、なんでも手がけ、「母は私たちをなんとか支えながら、自分の芸術に専念する時間を確保していた」と、サクソンはいう。

兄のサクソン氏はアンカー・ワールドワイドの最高製品責任者で、AmazonやBMWをクライアントに抱える。サクソン氏いわく、「あの場所に戻るといつも、魂が癒され、心から息を吐き出して力を抜くことができ、より良き夫、父親、ビジネスリーダー、息子、そして友人になれる」。

サクソン氏は7月初めにサンタフェを訪れた。「帰るたびに、インスピレーションの雨が降ってくるような、広大で豊かな色の空に目を奪われる」と、サクソン氏はいう。「また、この創造的なエネルギーから商業が生まれ、サンタフェの経済を支える基盤となっていることにも気づかされる。サンタフェに戻り、その素晴らしさを満喫することで、私は最初に創作意欲を駆り立てた原点に立ち返ることができる。それはいつでも私のやる気を再活性化し、どのように定義しようとも、成功は自分のルーツと本質的に結びついていることを思い出させてくれる」。

「サンタフェは、私の心の拠り所となる環境を常に提供してくれる。そして、一歩下がって標高2225メートルから世界を眺める時間を与えてくれる。そこでは必ず、自分の仕事に対する情熱の原点を再発見することができる」。

アンスタング氏は情熱を燃やす

ほかのリーダーたちも、パンデミックの影響が薄れ始めるにつれて故郷に少し近づきつつあり、「人生でもっともストレスと負担の多い年」から逃れる方法を見つけだしている。そう語るのは、フューチャリ(Futuri)のCEOで共同設立者のダニエル・アンスタンディグ氏。フューチャリは、クリーブランドにあるオーディエンスエンゲージメントとセールスインテリジェンスソフトウェアの企業で、アイハートラジオ(iHeartRadio)やカムラス・メディア(Cumulus Media)のようなメディア企業と仕事をしている。

アンスタンディグ氏は、旅行だけでなく身近にあるさまざまな楽しみも含めて、自分の情熱に集中するための時間と空間が与えられれば、従業員はより幸せになり、より良い職場になると考えている。たとえば、アンスタンディグ氏にとっては音楽だ。彼はドラマーで、この夏2枚のアルバムをプロデュースした。1枚は、音楽オーディション番組「ザ・ヴォイス(The Voice)」でデビューしたマッケンジー・トーマス、もう1枚は自身のバンド、「リズム・アンド・トゥルース(Rhythm and Truth)」だ。

アンスタンディグ氏は、「生活と仕事のバランスをとることが大切だが、私が知っている人のうち、たくさんのストレスを抱え、満たされていない人のなかには、ライフワークバランスを追求するあまり、シンプルな行動をしない人がいる」と述べる。「人は、自分が関心のあることをしているときに元気になるものだ」。

[原文:‘Use this time to come back inspired’: With travel back, leaders aim to reconnect with favorite places

TONY CASE(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:小玉明依)

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