都の感染者が3865人のからくり – 諌山裕

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東京の新規感染者数が3000人超えで、大騒ぎ……にはなっていないが、大きなニュースにはなっていた。

もはや3000人でも驚かなくなったというか、誰もが「しょうがない」とあきらめているのかもしれない。しかし、この3000人超えにはからくりがある。

東京都 新型コロナ 3人死亡 3865人感染 3日連続過去最多更新 | 新型コロナ 国内感染者数 | NHKニュース

東京都内では29日、新たに3865人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、3日連続で過去最多を更新しました。

(中略)

これで、3日連続で過去最多を更新しました。

また、29日の3865人は、1週間前の木曜日の倍近くに増えています。

29日までの7日間平均は、2000人を超えて2224.1人で、前の週の161.9%となり、これまでにないスピードで感染が拡大しています。

この記事の分析は正しくない。
それについて説明する。

「8月第1週に東京で3千人感染」の見通しに疑問』(2021年7月21日付)で書いたが、検査数が増えれば陽性者数も増える。

問題の7月29日はどうだったかというと、

都内の最新感染動向 / 東京都

新規陽性者 3,865 人 / 検査数 14,632.3 件( 2021年7月28日 参考値 (3日間移動平均))、うち65歳以上の高齢者数 105 人、死亡者数 3 人、都外からの持込検体による陽性数26

と、検査数が14,632.3 件( 2021年7月28日 参考値 (3日間移動平均))ということで、7月21日頃の平均約8000件から約1.8倍に増えている

1週間前の7月22日が、検査数4,890件、陽性者数1,979人。(検査数発表日と陽性者数確定日は、必ずしも一致していない)

1,979人×1.8倍=3562.2人
実際の陽性者数は、3,865人

……ということで、検査数の増加と陽性者数の増加は、計算上はほぼ近い数字になっている。つまり、3000人超えは検査数の増加によるもので、爆発的に増えたというより、見えていなかった姿が少し見えた……というだけのこと。

前にも書いたと思うが、検査数が4000件の場合の感染者数と、検査数が1万5千件の場合の感染者数を比べても意味がない。検査数が増えれば陽性者数も増えるのは当たり前。極端な話、検査をしなければ感染者はゼロというトリックも可能なんだ。日曜日に減るのは、検査数が極端に少なくなるため。

検査数を29日の倍、3万件を実施すれば、陽性者は6000人超えになる。都の検査能力は6万8000件あるとされているが、それをフルに実施すれば、1万7962人の感染者が出ていることになる。

感染者数だけを見ていると惑わされてしまう。母数(検査数)が変わると変動する感染者数ではなく、陽性率から推定感染者数を出す方が指標としてはいいのではないだろうか。

検査数と陽性率(2021年7月28日現在)

7月28日現在で、陽性率は18%。(陽性率の公式発表は、2〜3日遅れになっている)検査能力は6万8000件といいつつ、実際には2万件に届いていない。なので、2万件の検査をしたと仮定して、陽性率18%では、推定感染者数は3600人。7月28日の実際の陽性者数は、3177人。2万件の検査をすれば、もっと多かったということ。

1000人超えとなった7月14日(1149人)の陽性率は7.7%だった。2万件検査推定値に換算すると、1540人の推定感染者がいたことになる。同じ条件にしなければ比較にならないので、こういう計算が必要になる。

7月14日の2万件検査推定値=1540人
7月28日の2万件検査推定値=3600人

と、これならば適切な比較ができる。ま、陽性率を見ればわかることなんだが、人数で表した方がイメージしやすいので。

報道するメディアも、感染者数に躍らされて煽るんじゃなくて、もっと冷静な分析をした方がいいと思う。
検査数が増えているから、陽性者数も増えている。検査数が減れば、陽性者数も減る。そこをちゃんと伝えないと。