犬用ウェットフードからスーパー耐性菌が広まる!? 米CDCが警告

GIZMODO

ドライフードより体によさそうだと思っていたのに…

生肉の犬用ウェットフードには”抗生物質の効かない菌”が危険レベルなほど含まれており、犬だけじゃなく人間にも大腸菌、サルモネラ菌、リステリアなどが広まるおそれがあることが最新調査でわかり、米疾病対策予防センター (CDC)が警戒を呼び掛けています。

調査はCDCなどが共同で行ない、 欧州臨床微生物学会議 (ECCMID)で発表しました。

検分したのは、ポルトガルのスーパーとペット専門店で売られている市販のドッグフードなのですが、結構な数の商品から抗生物質耐性菌が見つかって、なかには欧州の入院患者さんたちと同じスーパー耐性菌が見つかった事例も…。調査に参加したポート大学のAna Freitas研究員は「国際的な公衆衛生上のリスク」が露呈したかたちだと調査の意義をプレスリリースで述べています。

薬が効かないスーパー耐性菌は、ちょっとしたかすり傷や感染も一大事になる恐ろしいもので死にいたるケースもあります。どれくらいの規模で広まっているのかというと、世界保健機構(WHO)の統計では、世界全体ですでに年間およそ70万人がスーパー耐性菌で死亡しているのだそう。問題は深刻化の一途で、多剤耐性菌による死者の数は2050年までに年間1000万人に達する見通しともされ、病原体の出元を突き止めて、感染拡大に歯止めをかけることが急務となっています。

でも「犬の生肉ベースの餌は人気急上昇中だが、生食ドッグフードにこんなに抗菌剤耐性菌が含まれていることは世界的にまだあまり認識されていない」(CDC公開のリサーチレター)のが実態です。この認識ギャップを埋めるため調査は行なわれた次第です。

サンプル購入地はポルトガルですが、検分した対象はポルトガル国内外合わせて25のブランドのドッグフード55種。生肉、乾燥肉、半生肉、トリート、冷凍肉のカテゴリがあり、後者には鴨、サーモン、鶏、羊、ガチョウ、牛、ベジタリアンなどが含まれます。

異常のサンプルのうち、腸球菌の痕跡が検出されたのは、なんと54%でした。腸球菌というのは人体の腸と膣管、あと土や水のなかに存在する菌で、「菌が付着した面や器具、汚れた手などでの人体の接触を介して、人から人に広まることもある」(CDC)ものです。最近ますます抗生物質が効かなくなっていて、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリドなどにも耐性がついてるらしく、米国の医療現場では2017年だけで、バンコマイシンの効かなくなった腸球菌でおよそ54,500人が感染し、5,400人が死亡しています。想像以上ですよね…。

今回調べた犬用ウェットフードのサンプルにはすべて多剤耐性腸球菌が含まれていました。非生食のドッグフードでは多剤耐性腸球菌を含むサンプルは3つだけだったのに…。検出された腸球菌の40%以上は一般的な抗生物質(エリスロマイシン、テトラサイクリンなど)に耐性がついていて、最後の手段として投与される強力な抗生物質(バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリドなど)にも耐性があることが確認されました。これは研究班も「想像以上の種類と検出率だった」と書いています。

念のため遺伝子配列を調べてみたところ、一部の菌は、英・独・オランダの入院患者さんや英国内の家畜・排水から検出された菌と同一のものであることが判明しました。さらに同じチームが会議で発表した別の研究では、多剤耐性菌遺伝子関連の遺伝子がドッグフードから人間に伝播している可能性も示されています。

会議ではポルトガルの別のチームも発表を行ない、mcr-1遺伝子(菌による抗生物質への耐性獲得を促す働きがある)が人間とペットの間で行ったり来たり伝播していることを示す証拠を提示しました。論文はまだ科学誌への提出が必要ですが、「すでにただでさえ薬剤耐性菌なのに、それがmcr-1と結びつくことで真に治療不能な感染が生まれてしまう」という「悪夢のシナリオ」を提示する内容だとプレスリリースにはあります。

Freitas研究員をはじめとするチームメンバーは生食の犬用ウェットフードが「新たな耐性菌感染源になりうる」と警戒を呼び掛けています。この種の食品はいろんな調達先の肉を混ぜて使っているので、集約畜産の肉も含まれていたりするし、危ないんだそうですよ? 「欧州当局は生食の餌をペットに与える場合に起こりうる健康上のリスクについて認知を広めるとともに、ドッグフード生産者についても原材料の選定や衛生管理を含めた検査を実施する必要がある」と対応を訴えています。

とりあえず飼い主が気を付けるべきことは、ペットフードに触った後や、犬のふんの後始末の後はすぐ手を洗うことだとFreitasさんはアドバイスしていますよ。それもいいけど、生食系の犬用ウェットフードはもうやめちゃったほうが早いような気もします。日本は衛生基準が違うんでしょうか…。気になりますね。

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