ナチュ盛りで体型も「加工なし」が人気–最近のインスタ自撮り事情

CNET Japan

 Instagramに「これ、誰?」と言いたくなる大きな目、尖った顎、同じような顔の自撮り写真ばかりがアップされていたのは昔のこと。最近は、自撮り画像に関する意識が変わりつつあるようだ。

 「ナチュ盛りがいいと思う。あまりに盛っているとかキメているのは恥ずかしい」と、ある女子大生は言う。「最近は顔を写さない自撮りが流行ってる。顔を飲み物で隠したり、後ろを向いたり、雰囲気がオシャレならいい」。

 若者のアカウントを見ると、友だちと並んで撮った写真でも、多くは後ろを向いていたり、顔の部分を持ち物やスタンプで隠したりと、顔が写っていないものが多い。顔は写っていない状態でポーズしていたり、雰囲気のある写真が多いのだ。

 これまでは盛った自撮り写真を投稿することで「いいね」がもらえ、承認欲求が満たされるとされてきた。ところが最近は、盛りすぎたり、キメている姿を見せるのは恥ずかしいという風潮があるのだ。そこで今回は、Instagramにおける自撮り文化の今について見ていこう。

Instagramはメンタルヘルスに「悪影響」

 「自分が落ちている時にインスタを見ると落ち込む。みんな楽しそうで、仲間や恋人に恵まれて、いい生活していて。それに比べて自分はと暗い気持ちになるから、落ちているときには見ない」と別の大学生に聞いたことがある。

 実際、2017年に英王立公衆衛生協会(RSPH)は、若者のメンタルヘルスに対してInstagramがもっとも悪い影響を与えるとしている。Instagramはキラキラしたリア充写真を投稿する場だが、それを見て自分と比較して落ち込んだり、劣等感を感じてしまう若者は少なくないのだ。

 Instagramに投稿されていることがすべてではないし、画像は大いに修正されているが、そう思えない若者は深く落ち込むことになってしまう。それに対して、さまざまな対策が始まっている。

修正画像はただの加工であり現実ではない

 ノルウェーでは、マーケティング法の修正条項として、6月に新たな規制が可決された。インフルエンサーや広告主は、修正した画像にラベルを付けなくてはいけなくなったのだ。ウエストを細くしたり、唇を大きくしたり、筋肉を大きくするなど、体型やサイズ、肌の色などを修正した広告には、ノルウェーの児童家族省が作成したラベルを付けて明示しなければいけないというわけだ。

 対象となるのは、Instagram、Facebook、TikTok、Snapchat、Twitterなどのソーシャルメディアへの投稿だ。違反した場合、罰金や禁固刑などが与えられることになる。

 フランスでも、広告のイメージ画像を修正し、被写体を細く見せる加工をした場合、「photographie retouchée(またはretouched photograph)」とつけ、その旨を明記するよう2017年に法律で定められている。また、モデルに対して健康状態とBMI値が正常であることを示すことも義務付けられている。同年にはこのフランスの法律に対応して、Gettyがモデルの体型について修正することを禁止している。

 修正画像はあくまで加工したものであり、現実ではない。自分の体型が修正画像のようでないからと言って自分を否定したり、落ち込んだり、過剰なダイエットをしたりする必要は一切ないのだ。

「本当はありのままを受け入れたい」

 フィンランド人女性サラ・パトーさん(@saggysara)は、Instagramで現実の写真とInstagram写真を並べて投稿している。Instagram写真は、細く見えるポーズや加工でほっそりと見せたものだ。ありのままのどの写真でもサラさんは素晴らしい笑顔で写っており、見る者の気持ちを明るくさせる。

 サラさんも以前は自分の体型にコンプレックスを抱いていて、改善しようとしていたと述べている。「ありのままの自分を受け入れて。あなたはそのままで素晴らしい」とサラさんは言っている。これに対して、多くの賛同メッセージが寄せられており、フォロワーは38万人以上となっている。

 修正してほっそりした体型の画像を載せることが、売上増につながるというわけではない。たとえばアパレルブランドのアメリカンイーグルは、自社ブランド「Aerie」で修正加工なしの広告写真を展開している。

 Instagramを見ると、お腹がぽっこりした写真など、リアルな写真が多数投稿されている。フォロワーは150万人に上る人気アカウントだ。リアルな体型は美しくなく、周囲に受け入れられないと感じる人もいるかもしれない。しかし実際は、1年間の売上が20%増加したという。

 多くの人たちが、加工写真が必ずしもいいわけではないことに気づくようになった。加工しすぎた顔写真は、当人を知っている人たちにとって恥ずかしさがあるものだ。また、加工しすぎた体型の写真は我々のボディイメージを操作し、痩せなければという強迫観念にもつながりかねない。

 「かわいくきれいに見られたい」という気持ちが悪いわけではない。しかし、顔写真も体型も、今はナチュラルが人気となっていることは知っておくべきだろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

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