次のiPhoneと5G、6Gの展望–Appleニュース一気読み

CNET Japan

 Appleは2020年に、「遅ればせながら」と言うべきか『満を持して』と言うべきか、iPhone 12シリーズで5G対応を果たした。Appleは時折「イノベーション」(革新)という言葉を使いながらも、「最新ではなく最適を目指す」テクノロジーとリベラルアーツの交差点にある企業である点を常々強調してきた。

 その点からすれば、真っ先に5Gに対応しなくても、あまり大きな驚きはない。初代iPhone(日本では未発売)は3Gではなく2G対応として登場したし、iPhone 5で対応を果たした4Gだって早い方ではなかった。むしろ一番最後に最適解を出そうとする企業であるという認識をしておくべきだ。

 市場もそのことを理解しているのか、Appleが新しいテクノロジーに対応した製品を登場させて、「○○時代の幕開け」だとする。そのApple製品が爆発的に売れ、新しいテクノロジーの普及に貢献する。そんな歴史が4Gの頃から繰り返されている。実際、2020年第4四半期、Appleは9010万台のiPhoneを販売した。この数字はスマートフォン史上最大の四半期販売台数となった(出展:Statista )。

 少し視野を広げると、これは米国自体の戦略でもある。4Gによって通信チップ(Qualcomm)、アプリ経済圏(Google、Apple)、シェアリングエコノミー(Uber、AirBnB)など、新しいビジネスモデルの全てを米国が作り出し、手中に収めた。3Gによってモバイル経済が発展していた日本も含めて、米国のプラットホームが完全掌握したのは、インフラ整備やデバイス普及、データの取り扱いに対して、政府が余計なことをしなかったから、とも言える。

 では、次なる5G時代の覇権争いはどうなるのか。あるいはそうした動きを読み取って、大きく成長するビジネスに参加するにはどうすればよいのか。

 Appleは自社チップの微細化で、台湾のTSMCと組み、一定の成功を収めている。特にMac向けのM1チップは性能向上と省電力性の両立という、モバイル時代にふさわしい競争優位性を手に入れている。一般的にチップの微細化は、同じサイズのチップであれば高性能化と省電力性を実現する手段であり、近年AppleのiPhone向けチップの性能向上の技術的背景の一つとも言える。

 現在A14 Bionic、M1は5nmプロセスで製造されているが、さらに3nmと微細化の限界に近づくチップの実現にTSMCは意欲的だ。3nmプロセスは5nmと比較した場合、コンピューティング性能を最大15%増加しながらも消費電力を最大30%抑えられるという。早ければ2022年下半期以降にiPadから採用される計画のようだ。

 また5Gについてはまだまだインフラ普及の段階にあるが、どんなアプリケーションや仕組みが主役になるのか定まっておらず、4G機との差別化に課題を抱えているとの指摘もある。だからこそAppleはiPhone 12でデザイン変更とカメラ機能の大幅な向上など、5G対応以外でも買い換えを促せる要素を追加したと考えられる。

 実際、4GのiPhoneが登場した際、まだTikTokのような写真や短いビデオのSNSは存在していなかったし、Spotifyのように音楽をすべてダウンロードで楽しむ世界が到来していたわけではなかった。Uberはすでに存在していたが、社会インフラになるとは考えにくかったし、Teslaのようなフルコネクテッドカーが実現されるとも思っていなかった。

 つまり、いまこの時点で5Gの通信速度を生かしてできることは想像できても、世界を変えるアプリが何かを言い当てることはできないと言うことだ。それだけに、技術をきちんと理解しながら、社会問題やコミュニケーションの変化に敏感になっている必要がある。

 同じことが6Gにもいえる。6Gは、より高い周波数帯を利用することや、デバイス同士がレーダーのようにお互いに通信し合うような環境を想定しているという。例えばAppleのAirTagは、BluetoothとUWBを用いてiPhoneと通信しながら位置を特定する仕組みを作っているが、これを6Gのみで実現できる可能性もあるということだ。

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Windows 11の戦略とApple

 Windows 11は、多くのPCユーザーにとって堅実なアップデートで、デザインの洗練やファイル、ビデオチャットなどのコミュニケーションの統合が行われているが、今回のアップデートで強調されているのは、AppleやGoogle以上に、「Microsoftがオープンだ」と言うこと。

 WindowsでAndroidアプリが動作するようになり、アプリストアで最低0%の手数料でアプリを販売できる戦略を打ち出した点だ。モバイルアプリについてはセキュリティやプライバシーの観点、またビジネスモデルの保護の観点から、AppleもGoogleも、自社ストアでのアプリ配信に制限をかけており、特にAppleはその締め付けが厳しいとしてEpic Gamesと裁判で係争中であり、またしばしばSpotifyやFacebookなどから批判が上がる。

 20年前をふりかえれば、Microsoftは強固なプラットホームへの囲い込みによって、ソフトウェア帝国を築き上げてきた。しかしWindows 11はオープンなプラットホームを叫んでおり、AppleやGoogleと立場が逆転しているように映る。

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中国政府による監視の強化

 配車アプリを手がけるDiDi Globalが、中国政府によるデータセキュリティの調査対象になったことが明らかになり、衝撃が走った。米国市場で上場した企業についても、データ保護の責任を課したり、国境を越えるデータの監視を行ったり、中国国外での上場への規約の改定などに言及しており、中国政府による企業の監視が強まる動きが加速している。

 すでに6月にデータセキュリティ法を可決し、特定の情報の国内での保管と処理を義務づけている。AppleやTeslaといった中国市場を重視する米国企業は、中国ユーザーのデータを中国国内のデータセンターに移すなど、その対応を進めており、米国などの人権団体からは批判の声が上がっている。

 また、中国本土の市場に上陸してこなかったFacebookやGoogleといった企業は、香港での法改正と、中国本土と同様の情報管理が敷かれることを想定し、香港からの撤退を示唆し始めた。

 今回問題になっているのは『ドクシング』と呼ばれる行為への規制だ。これは、住所や電話番号などの個人情報をインターネットで曝露することを指しており、香港政府の新たなプライバシー法によって制限されることになった。

 これに対して、Facebook、Google、Twitter、Appleといった米国のハイテク企業を代表する連盟が抗議しており、香港政府との間で軋轢を生んでいる。この法律により、ハイテク企業はユーザーの投稿に対して、法的な責任を負う必要が出てきてしまう。その責任を避けるためには、サービス側がより強力な検閲を行うか、香港市場からの撤退をするかに限られてしまうのが実情だ。

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