21世紀は「走るゾンビ」の時代 – ふかぼりメメント

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7月13日はオカルト記念日。少女に憑依した悪魔とそれを祓おうとする神父の戦いを描いたホラー映画の名作『エクソシスト』(ウィリアム・フリードキン監督、米)が1974年のこの日に日本で公開されたことに因みます。

そんな”悪魔系”ホラー映画が「本当にダメ」なのに、日々、「ゾンビ」の研究に励んでいる学者が日本にはいます。

国際ファッション専門職大学助教の福田安佐子先生は、芸術学を学んでいた京都大学大学院修士課程時代、留学先のフランスでゾンビに関する学術書に出会ったことがきっかけでゾンビの世界に。

今では日本ゾンビ研究の第一人者として学術発表を行うほか、イベントやメディアなどでゾンビの魅力を発信しています。

オンラインで取材に応じてくれた福田安佐子先生

そんなゾンビ愛あふれる福田先生に、ゾンビ人気の秘密や、予想を裏切られて思わず「すごい」と唸ってしまったゾンビ映画などを教えてもらいました。

人間に一番近いモンスター「ゾンビ」の魅力

ーーまずお聞きしたいのはゾンビとは一体何なのかということです。「生ける屍」といったイメージがあるのですが定義はあるのでしょうか。

ゾンビの定義は本当に難しく、決めることができないと私は思っています。

一般的には「ノロノロ歩いて、人の血肉を求めて彷徨っているもの」というイメージがありますが、これまでたくさんの作品で様々なゾンビが描かれています。

死んでいないゾンビもいるし、どう定義したらいいんだと(笑)

私の中の定義では「人間に一番近いモンスター」です。

Getty Images

ーーゾンビが「人間に近い」ですか?

元は人間であるからこそ人に似ている。でも、モンスターだから全然違いますよね。

映画の中では人と区別するために血まみれだったり、皮膚が青く描かれていたりして、異なる外見で描かれています。でも、元人間だからこそ、人間側は無闇に殺せなかったり戸惑いが生じたりする。人間が試されている部分を描くことができるモンスターであり映画ジャンルだと思っています。

ーーそれが今なお多くの人を惹きつけるゾンビの魅力なのでしょうか?

ゾンビには定義がないからこそ、クリエイターが想像豊かに自由に描くことができます。

また、生と死が相反した場所に存在する存在であり、人間の姿形を固持しているゾンビは人間を写す鏡として、社会や時代の問題を浮き彫りにしてくれます。

ホラーのみならず、コメディや恋愛ものなど幅広いジャンルで扱われることもゾンビの魅力のひとつ=Getty Images

定義できないことが生み出す面白さや深みが、ゾンビの魅力ですね。

ゾンビ映画は3時代に分けられる

ーーこれまでどんなゾンビが生み出されてきたのですか。

映画におけるゾンビの歴史は3つの時代に分けられます。

1932年にアメリカで公開されたヴィクター・ハルペリン監督の映画『ホワイト・ゾンビ』がゾンビ映画の始まりです。当時、アメリカの占領下にあったハイチのブードゥー教に伝わる秘術で、蘇らせられた奴隷をゾンビとして描いています。この「主人の命令を聞く奴隷」という描かれ方だった時代のゾンビを「クラシック・ゾンビ」と呼びます。

1968年、ジョージ・A・ロメロ監督の映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』がゾンビの定義を大きく変えました。それまで奴隷として蘇らせた人間の命令を聞くだけの存在だったゾンビたちが、この映画以降、自分から人を襲うようになったのです。ノロノロ歩き、人の血肉を求めるモンスターである「モダン・ゾンビ」の時代はロメロ監督から始まりました。

<参照記事>ゾンビ研究家・福田安佐子さんと、ゾンビ映画3時代に関する詳細記事はこちら

2002年、素早く動くゾンビが登場する『バイオハザード』(ポール・W・S・アンダーソン監督、米・独・英)と『28日後…』(ダニー・ボイル監督、英)がヒットを記録。これを機に、多種多様なゾンビが映画の中で描かれる「走るゾンビ(ダッシュ・ゾンビ)」時代に突入しました。

Getty Images

研究者の予想を裏切った大当たりゾンビ映画

ーー走るゾンビ時代! すごいネーミングですね(笑)

今も走るゾンビ時代が続いています(笑)いろんなジャンルでゾンビが描かれるようになった時代で作品数も多い。タイトルやパッケージで「駄作だ!」と思って見てみるとすごくいい作品に出会えるなど、当たり外れの振れ幅が大きいのもゾンビ映画の魅力ですね。

ーー最近見た映画の中で、福田先生の予想を裏切って「良い!」となったゾンビ映画はありましたか。

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