「AirPodsのバッテリー交換は不可能」問題の焦点は「修理する権利」という主張

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AppleのワイヤレスBluetoothイヤホン「AirPods」に内蔵されているバッテリーは、経年劣化でバッテリー寿命が短くなっても交換することができません。AirPodsのバッテリー交換を可能にするためには、ユーザーが自由に製品を修理するための「修理する権利」が認められる必要があると、経済メディアのCNBCが主張しています。

Apple AirPod battery life problem shows need for right-to-repair laws
https://www.cnbc.com/2021/07/10/apple-airpod-battery-life-problem-shows-need-for-right-to-repair-laws.html

Appleが展開している「ハードウェアの販売を中心としたビジネスモデル」は、ユーザーが数年ごとに最新モデルに買い替えることを前提としています。その例の1つがAirPodsのバッテリー問題です。

by Arthur Shi

AirPodsには小型のバッテリーが組み込まれており、一度充電すれば最大5時間の連続再生が可能。しかし、バッテリーは何度も充電を繰り返すと劣化していくため、AirPodsの最大連続再生時間もどんどん短くなっていく運命にあります。

バッテリーが劣化しても交換すれば問題はありませんが、Appleが「修理の必要性を最小限に抑えるために、耐久性を考慮して製品を設計しています」と(PDFファイル)環境進捗レポートに書いている通り、AirPodsは設計時点で基本的にユーザーがバッテリーを交換することを前提としておらず、バッテリーを含む部品も一般向けには販売されていません。

さまざまなデジタルガジェットの分解・修理を行うiFixitは、第2世代AirPodsのリペアビリティ(修理しやすさ)を10点中0点と評価しており、「AirPodsはAppleのサービス対象としてデザインされていません。ハードウェアパーツにアクセスする為には、デバイスにダメージを与えてしまいます」「密封型バッテリーはAirPodsのライフスパンを制限しています。それゆえに、このイヤホンは消耗品/使い捨て商品となります」とコメントしています。

AirPods 2の分解 – iFixit
https://jp.ifixit.com/Guide/AirPods+2%E3%81%AE%E5%88%86%E8%A7%A3/121471

製品の買い替えをユーザーに強制するAppleのビジネスモデルは消費者に不利益なものであり、AirPodsのバッテリー交換は「修理する権利」の適用が求められるべき事例の1つであると、CNBCは述べています。修理する権利は世界各国で保障が叫ばれており、2021年7月にはアメリカのバイデン政権も修理する権利を保障する動きに出ていると報じられています。

「修理する権利」をメーカーが制限することを禁じる規制案の作成をバイデン大統領が指示か – GIGAZINE


そんなユーザーの修理する権利を保障するため、AirPodsのバッテリー交換を行うスタートアップ「PodSwap」がアメリカで立ち上がりました。

Podswap | Keep AirPods Alive and out of the Landfill
https://www.thepodswap.com/


PodSwapは、AirPodsを使い捨てることに異を唱え、特別な機器を開発してAirPodsのバッテリーを簡単に交換できるようにしたとのこと。PodSwapは公式サイトで「私たちは、自分で自分のものを直すことができるべきだと考えています。修理できない製品に投資するのは悔しいものです。自分でリサイクルできないとなると、なおさら悔しいものです」と述べており、修理する権利を高らかに主張しています。

PodSwapのバッテリー交換サービスの価格は59.99ドル(約6600円、送料別)で、古いAirPodsをバッテリー交換とクリーニングが済んだAirPodsの再生品と交換するという仕組み。新品を買い直すよりもずっと安価でありながら、バッテリー交換を申し込んでからわずか数日で、新しいバッテリーを内蔵したAirPodsを受け取ることができるようになっています。

PodSwapの共同設立者であるエミリー・アルパート氏は「このプロセスは試行錯誤の果てに開発され、たくさんのAirPodsが犠牲となり、最終的にリサイクルされています。私たちが直面した大きな課題は、AirPodsの個体差を克服することでした。AirPodsは1台1台に細かな違いがあり、それが分解時の複雑さを生み出しているのです」と語りました。

by Arthur Shi

なお、記事作成時点ではPodSwapが対応しているのはAirPodsのみですが、将来的にはAirPods Proにも対応する予定だとのこと。PodSwapによれば、AirPods Proの内部構造はAirPods以上に複雑でバッテリー交換の難度が高いそうです。

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